学校経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。その理由は、少子化に伴う学校間競争の激化、グローバル化やICT化の進展といった、教育に求められる要件の変化にあるといえるでしょう。今日の教育機関は、5年、10年先の変遷を見定めた指針を示す必要に迫られているのです。こうした中、世界規模で活躍できる能力を有し、広く地域社会で活躍することのできる「グローカル人材の輩出」を指針に掲げるのが、梅光学院大学です。

同大学は現在、社会に向けてよりいっそう多くのグローカル人材を輩出すべく、ICTの活用を推進しています。その大きな一歩となったのが、2017年度の新入生を対象に開始したノートPCの必携化です。この必携デバイスには、大学生協と在校生によってマイクロソフトのSurface Pro 4が選出されています。

梅光学院大学(2019 年に竣工予定の新校舎完成予想図)
※完成予想図は2017年9月段階のデザイン案であり、実施の校舎とは異なる場合があります

プロファイル

梅光学院大学は、日本で6番目に創設された伝統のあるミッションスクールです。1872年、アメリカのヘンリー・スタウト博士によって開設された同学院は、1964年の短大開設以後、大学、大学院を設置。2001年には男女共学を実現し、現在の「梅光学院大学」となりました。聖書と英語の私塾に端を発する同大学は、キリスト教の精神とグローバルな視点により、地域社会や他者のために生きることのできる人材を今も輩出し続けています。

導入の背景とねらい
授業のアクティブラーニング化を進めるべく、ノートPCの必携化を検討

梅光学院大学 学長 樋口 紀子氏

"グローカル"とはグローバルとローカルの混成語で、地球規模の視野を持ち、地域視点で行動しようという考え方です。グローカルな人材は、国際社会に求められる英語力や実行力だけでなく、他者、地域(ローカル) のために働きかける協働性も有していなければなりません。これらの能力を有した人材を輩出すべく、梅光学院大学では「学生主体」をテーマとした「No.1グローカル大学」づくりを推進。2015年に掲げた中長期計画書「BAIKO VISION for 2020」のもと、この取り組みを加速させています。

同大学が掲げる「学生主体」というテーマについて、梅光学院大学 学長 樋口 紀子氏は、次のように説明します。

「本学では、全学生が1年次に『梅光BASIS』と呼ばれる教養科目を受講します。『梅光BASIS』は複数の担当教員によるアクティブラーニング型の授業であり、学生にはここでまず主体性、積極性といった能力を身に付けてもらいます。学生はその後の授業や本学が整備している地域でのフィールド・ワーク制度、海外留学、在学生が新入生をグループで協力し合いながら支援するピアサポート(Buchiサポ)などに主体的に取り組むことで、グローカル人材に欠かせない語学力、実行力、そして協働性を培うのです」(樋口氏)。

学生主体の学びを推進するには、普段の授業も学生参加型のものへとシフトさせる必要があると樋口氏は述べます。梅光学院大学は「BAIKO VISION for 2020」の中で、2020年度までに全授業の50%をアクティブラーニング化することを目標に掲げています。こうした学生主体の学び、そしてアクティブラーニングを強化していくうえで不可欠な存在が、ICTでした。

学生が主体的に情報を取捨選択する、そしてプレゼンテーションなどを通じて自己表現を行うといった教育が、梅光学院大学の特色です。こうした環境において、今やICTは欠かせない存在といえるでしょう。また社会のICT化が進む今日、ICTの基本操作に習熟することも学生には強く求められます。

このような社会や環境の変化を見定め、梅光学院大学では2014年よりICTの基盤整備を推進。学内ネットワークの無線化や、Office 365によるコミュニケーション基盤の構築などを進めてきました。さらに2017年度からは、ノートPCの必携化にも着手します。

梅光学院大学 子ども学部 子ども未来学科 教授 赤堀 方哉氏

同取り組みの狙いについて、梅光学院大学 子ども学部 子ども未来学科 教授 赤堀 方哉氏は次のように説明します。

「授業のアクティブ ラーニング化を推進するうえで、ICTの活用は必要不可欠でした。しかし、2016年度まではPCを所持している学生とそうでない学生がおり、PC利用を前提とした授業を行うことができていませんでした。ならば、学内の無線環境を整備し、ノートPCを必携化すれば、あらゆる授業でICTを活用したアクティブラーニングが実践できるだろうと考えたのです」(赤堀氏)。

授業内でのICT活用を進めるためには、ノートPCの必携化もさることながら、授業を行う教員のICTリテラシーも高めなければなりません。そこで同大学では、教員が積極的にICTを利用する環境を構築すべく、学内のペーパーレス化を推進。同時にデスクトップ型の校務用PCを廃止して校務と教務を兼ねたノートPCへリプレースすることで、教員があらゆる場面でICTを活用する環境づくりを進めました。

システムの概要
ワークショップに対する在学生の反響から、Surface Pro 4が"学生が進んで活用したいPC"であると確信

2016年9月、梅光学院大学は2017年度に入学する学年からノートPCを必携化することを決定。これと同時に、大学生協で販売する推奨ノートPCの選定を開始します。

これまで大学生協の推奨ノートPCには、ラップトップ型のモデルが選定されてきました。しかし、2017年度の新入生向けに販売するモデルについては、2in1タブレットを前提に選定を進めたといいます。この理由について、赤堀氏は次のように述べました。

「これまでは『PCを授業で活用したい』という学生が購入対象でした。そこにラップトップ型を採用してきたのは、自らPCを購入しようと考える学生はコンピューターリテラシーも相応に備えていると考えたからです。ですが今回は、リテラシーにばらつきのあるすべての新入生が購入対象となります。たとえノートPCを必携化したとしても、学生がそれを『活用できないもの』だと思ってしまっては有効に機能しません。学生はタッチ パネルでの入力に慣れ親しんでいますから、入力の主体がキーボードになるラップトップ型ではうまく活用できない者が出てくるでしょう。そこで、キーボード入力とタッチ操作の両方で利用できる2in1タブレットを推奨モデルに採用しようと考えたのです」(赤堀氏)。

梅光学院大学がノートPCの必携化に求めたことは、ICTスキルの向上もさることながら、第一には学生主体の学びを支援するツールとして機能させることです。ノートPC自体が学生に受け入れられ、自ら積極的に「活用したい」と思われなければ、その効果が最大化されることはないでしょう。

この点を考慮し、同大学は在学生の意見を取り入れて推奨モデルの選定を進行。学生に受け入れられるデバイスとは何かを学生自身にも主体的に考えてもらうべく、上級生による新入生サポート組織「新入生サポートセンターアドバイザー(以下、新入生アドバイザー)」を選定プロジェクトに引き入れたのです。大学生協と在校生による選定が進められた結果、最終的に採用されたのが、マイクロソフトが提供するSurface Pro 4でした。

梅光学院大学生活協同組合 専務理事 花尾 満氏

Surface Pro 4は、キーボードとタッチパネルの双方で高水準な操作性を持つこと、そして携行性に優れていることが評価されました。梅光学院大学生活協同組合 専務理事 花尾 満氏は、こうした仕様面に加えて、マイクロソフト協力のもとで行ったワークショップに対する反響が、採用を決定した大きな要因だったと語ります。

「2016年10月に、『新入生アドバイザー』のメンバーに向けてSurface Pro 4のワーク ショップを開催しました。マイクロソフトに協力いただき、参加者にSurface Pro 4を配付して『Windows 10の機能によってできること』をハンズオン形式で講義したのですが、驚いたことに、ワークショップ後のアンケートではほとんどの学生が『推奨モデルはSurface Pro 4がよい』と回答しました。特に衝撃を受けたのは、現在MacBook Airを利用している学生が「自身のPCもSurface Pro 4に変えたい」と回答したことです。Surface Pro 4は、スペックやデザイン、ブランドイメージまで含め、総合的に見て"学生が進んで活用したいPC"なのだと感じました」(花尾氏)。

2016年10月に開催されたワークショップのようす。日本マイクロソフトの村井が紹介する機能や活用方法の数々に、「新入生アドバイザー」のメンバーは強く興味を引かれていた

推奨モデルに採用されたSurface Pro 4は、新入生が利用するよりも前に、思わぬ効果を生みます。例年、推奨モデルの新入生への販売は「新入生アドバイザー」が担当します。このメンバーがワークショップでSurface Pro 4の魅力を体感したことで、新入生に向けて能動的に製品を推奨する姿が生まれたのです。結果、推奨モデルの購入台数は従来と比較して飛躍的に向上。梅光学院大学生活協同組合 副店長 平岡 伸元氏は、この影響について笑顔で語ります。

梅光学院大学生活協同組合 副店長 平岡 伸元氏

大学生協中国・四国事業連合 高祖 健太氏

「2017年度の新入生のおよそ70%が、推奨モデルであるSurface Pro 4を購入しました。例年の購入率が10%~15%だったことを鑑みると、これは劇的な変化といえるでしょう。もちろん、ノートPCを必携化したことも一因ですが、何よりも大きいのは、在学生が自らの目線から率先して『Surface Pro 4は大学生活において有用』であることを新入生へ説明してくれたことにあるでしょう」(平岡氏)。

続けて、大学生協中国・四国事業連合 高祖 健太氏は、梅光学院大学が新入生に対して入学前に3回実施している「入学前教育」に言及します。

「2018年度の新入生向けには、『入学前教育』で、マイクロソフトの協力によるワーク ショップを実施する予定です。『新入生アドバイザー』での製品紹介に加え、こうしたメーカーからの支援も得ることで、購入率や活用率はより高まっていくでしょう」(高祖氏)。

導入効果
Surface Pro 4による授業のアクティブラーニング化で、学生主体の本質たるコミュニケーションが活性化された

推奨ノートPCへのSurface Pro 4の採用を決定した後、梅光学院大学では教員が校務と教務で利用するPCについても選定を進行。その結果、こちらにもSurface Pro 4が採用されています。樋口氏は「授業のインタラクティブ性を向上するうえでは、学生と教員の環境を揃えることが望ましいと考えました。また、Surface Pro 4はノートPCとして十分に高い性能を持っています。これを採用すれば、校務の効率を下げずに教務と校務のデバイスを一本化できると期待しました」と、この決定について説明しました。

こうして梅光学院大学では、2017年4月よりICTを活用した授業を本格化します。赤堀氏は自らの授業を例に挙げながら、そこでの効果について説明します。

「ICTを授業に取り入れることで、学生の反応を可視化し、それを随時授業へ反映できるようになりました。たとえば先日は、期末テストの振り返り学習に『OneNote』を活用しました。これは、学生を複数のグループに分けて期末テストの問題を振り返らせ、どのような解答が正解だったのかを議論させるというものです。『OneNote Class Notebook』に構築したプラットフォーム上で、各グループが導き出した解答をリアルタイムで共有する。そしてクラス全員で議論内容を掘り下げることで学びを深める、という試みを行ったところ、まず、講義型と比べて学生が能動的に授業へ参加する姿がみてとれました。また教員視点では、学生1人1人の習熟状況をみながらパーソナライズ化した教育が提供できるという利点もありました」(赤堀氏)。

Surface Pro 4とOneNote Class Notebookを活用した赤堀氏の授業のようす。学生は、議論した内容をグループ内、そしてクラス内で随時共有し、協働しながら学びを深めていた

学生は、議論した内容をグループ内、そしてクラス内で随時共有し、協働しながら学びを深めていた アクティブラーニング化した授業の増加は、学習効果の向上、そして学生の主体性と協調性を育むことにつながるでしょう。その成果の現れか、学内では学生がSurface Pro 4を活用して自主学習をしたり、複数人で学びを深め合ったりする姿が見てとれました。

こうした学生間のコミュニケーションを生み出すことができた点も、ノートPCを必携化した大きな成果だと樋口氏は評価します。

「学生主体の本質はコミュニケーションです。従来、こうしたコミュニケーションの場は『Buchiサポ』や教育実習、フィールド・ワーク、海外留学などに"点"として存在していました。ノートPCを必携化し、そして普段の授業をインタラクティブ化したことで、"点" から"線"への連続性が生み出されるようになりました。これは、授業以外の場面でICTを活用しながら学生どうしが対話する姿に現れています。今後、アクティブラーニング化した授業の比率が高まるにつれて、本学の特徴である学生主体の学びもまたいっそう深まっていくことでしょう」(樋口氏)。

今後の展望
ICTだけでなく施設、設備面の整備も進めることで、主体的、協働的に学びを深め合う環境づくりを進める

Surface Pro 4を導入し、授業のアクティブラーニング化を進めたことで、学生主体の学びをいっそう深めることに成功した梅光学院大学。樋口氏が触れたように、主体性と協働性を育むうえでは、コミュニケーションの活性化がきわめて大きなファクターとなります。同大学ではICTに加え、施設や設備の整備も進めることで、コミュニケーションのさらなる活性化を図るとしています。

「2019年度の完成を目指し、現在、新校舎の建築を進めています。新たな校舎は、従来のような教室を主とするのではなく、オープンスペースを増やして学生間の対話を促せるよう設計しています。授業や風土、ICT、施設など、あらゆる側面から環境を整備していくことで、学内のコミュニケーションをいっそう活性化していきたいと考えています」(樋口氏)。

このプロジェクトには大学関係者や建築関係者だけでなく、現役の学生も参加しています。学生の自主参加を促し、そこからの提案を積極的に受け入れることで、学生の主体性を高める場としてもプロジェクトを活用しているのです。

新校舎の建て替えに関するプロジェクトのようす

梅光学院大学に新たな校舎が完成するのは、ノートPCの必携化を開始した2017年から数えるとおよそ 3 年後となります。そのころには多くの学生がSurface Pro 4を活用し、「BAIKO VISION for 2020」で目指すアクティブラーニング化も大きく進んでいることでしょう。新設した校舎のもとでは、これまで以上に、主体的、協働的に学びを深め合う学生の姿がみられるようになるに違いありません。ひいてはそれが、同学からより多くの"グローカル人材"が輩出されることにつながるのです。

「学生主体の本質はコミュニケーションです。従来、こうしたコミュニケーションの場は『Buchiサポ』や教育実習、フィールドワーク、海外留学などに"点"として存在していました。ノートPCを必携化し、そして普段の授業をインタラクティブ化したことで"点"から"線"への連続性が生み出されるようになりました。これは、授業以外の場面でICTを活用しながら学生どうしが対話する姿に現れています。今後、アクティブラーニング化した授業の比率が高まるにつれて、本学の特徴である学生主体の学びもまたいっそう深まっていくことでしょう」

梅光学院大学
学長
樋口 紀子氏

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