日本の屋根と呼ばれる名峰に囲まれ、全国で4番目となる面積を持つ長野県では、県庁所在地である長野市をはじめ、10の広域事務所に分かれて県政運営を行っています。同県では以前より先端技術の活用を推進しており、2021年4月の組織改編でDX推進課とデジタルインフラ整備室を創設。県組織のDXを支えるインフラ基盤の刷新に着手します。新型コロナウイルス感染症拡大の影響や働き方改革の推進により、柔軟なワークスタイルが求められる状況のなか、同県が選択したのはVMware Horizonを活用した独自の四層分離モデルの導入でした。

ソリューション

庁内システム・ネットワークの更改タイミングに合わせて、セキュアで快適なテレワーク環境の構築と、県組織職員の業務効率向上を目的としたIT基盤の刷新プロジェクトを始動。総合行政ネットワーク(LGWAN)上にVMware HorizonによるVDI環境を構築し、VMware Horizonの機能やVMware NSXと組み合わせることで利便性の高い業務環境を実現した。

導入前の課題

  • 従来のαモデルでは、テレワーク環境の実現が困難
  • 自治体独自の三層対策によるインターネット分離などもあり、システムの利便性に問題
  • 県組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)が急務で、その基盤となるシステム構築が必要

導入効果

  • VMware Horizonを採用し、LGWAN上に構築した約8,200台の仮想デスクトップの安定稼働に成功
  • VMware Horizonの機能とVMware NSXを組み合わせることで、情報漏えいのリスクを最小化するなどセキュリティを強化
  • VMware Horizon最適化パックでWeb会議の品質が向上し、円滑なコミュニケーションとペーパーレス化の推進を実現

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テレワーク需要の増加により、自治体DXの基盤となるITインフラ刷新プロジェクトが始動

2021年にDX推進課及びデジタルインフラ整備室を創設し、庁内DXの取り組みを積極的に推進している長野県。全国で2番目に多い77の市町村があり、人口は約202万人。同県のDXにおいて中心的な役割を担っている長野県 企画振興部 DX推進課長の永野 喜代彦氏は、県政運営におけるITの役割についてこう語ります。

  • 長野県 企画振興部 DX推進課長 永野 喜代彦 氏

    長野県
    企画振興部 DX推進課長
    永野 喜代彦 氏

「もはや、ITは仕事をする上で不可欠なものとなってきており、今後も発展していくものと捉えています。県職員の生産性向上はもちろん、県民の生活を豊かにするサービスの提供のためにもITを効果的に活用していかなければならないと考えています」(永野氏)

“より良い長野”、“魅力的な長野”を実現して将来に紡いでいくことが最優先のミッションと永野氏。その実現に必要不可欠な技術・手段としてITが重要な役割を担うと説明します。その一環として、同県のDX推進課及びデジタルインフラ整備室は、庁内DX推進を支えるITインフラ基盤の刷新プロジェクトを始動。デジタルインフラ整備室の室長を務める丸山 幸一氏は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるテレワーク需要の増大がフックになったと、プロジェクト発足の経緯を語ります。

  • 長野県 企画振興部 DX推進課 デジタルインフラ整備室長 丸山 幸一 氏

    長野県
    企画振興部 DX推進課
    デジタルインフラ整備室長
    丸山 幸一 氏

「新型コロナウイルス感染症の拡大という世界的な問題が発生し、テレワークの導入が求められる状況となりました。迅速に対応しないと行政サービス全体の品質低下につながるという危機感もあり、システムの刷新プロジェクトを始動。既存システムの課題解決と劇的な社会変化に対応するための要件整理を行いました」(丸山氏)

自治体独自のシステム要件に合わせた構成を検討。VMware Horizonによる四層分離モデルで、セキュアなテレワーク環境+快適なWeb会議を実現

2020年4月にスタートした本プロジェクトは、同年8月にRFI(情報提供依頼書)を実施し、翌年4月に業者の選定が行われました。今回のシステム刷新の責任者としてプロジェクトに参画したDX推進課 デジタルインフラ整備室 主任の滝澤 啓一氏は、新しいインフラ基盤の構築にあたって重視したポイントについて解説します。

  • 長野県 企画振興部 DX推進課 デジタルインフラ整備室 主任 滝澤 啓一 氏

    長野県
    企画振興部 DX推進課
    デジタルインフラ整備室 主任
    滝澤 啓一 氏

「既存のITインフラは従来のαモデルで構成しており、自治体の三層対策によるインターネット分離などもあり、利便性に問題を抱えている状況でした。このため職員のシステムに対する満足度は低く、今回のプロジェクトでは働き方改革やコロナ禍対策としてのテレワーク推進に加えて、自治体独自のシステム要件に伴う利便性の課題を解決できるネットワーク構成、システム基盤の構築を目指していました」(滝澤氏)

長野県では、以前から通信キャリアの閉域SIMを利用したテレワーク環境を用意していたものの、業務データをパソコンに保存した状態で外部に持ち出すことの心理的な障壁により利用者が限られていました。さらにWeb会議における通信品質の低下が課題となっていたこともあり、安心・安全かつWeb会議を快適に行えるテレワーク環境の実現は本プロジェクトにおける必須要件となりました。

こうした現状を踏まえ、DX推進課 デジタルインフラ整備室では、総務省が提示するβモデルも含め、幅広い視点から最適なシステムを模索。77の市町村と総合行政ネットワーク(LGWAN)セグメントでやり取りしているという業務特性を鑑みると、基幹業務システムをLGWANセグメントに配置したまま業務セグメントのみをインターネット接続環境に移動させるアプローチでは利便性向上につながらないと考えました。さらに次期強靭化モデルとして例示されたβモデルでは、情報資産の扱い方などを職員一人ひとりのリテラシーに依存することになることや、高度化するインターネット上の脅威によりセキュリティリスクが大きく高まると判断。スピードが重視された本プロジェクトにおいてはLGWANネットワークの高いセキュリティを活用しつつ、ユーザビリティの向上を実現する独自の四層分離モデルが検討されました。そこで採用されたのが、行政系のネットワークとなるLGWAN上にVDI(仮想デスクトップ基盤)を構築して、仮想マシン上で業務を行うというアプローチで、VDIソリューションとして選択されたのは、VMware Horizonでした。滝澤氏は、VMware Horizon採用の経緯をこう説明します。

「ヴイエムウェアとは、三層分離のインターネット接続系におけるVDI構築時から付き合いがあります。これまでの安定稼働実績とサポート体制が評価のポイントとなり、VMware Horizonの採用が決定しました。またセキュリティ面に関しても、マルウェア/グレーウェアの検知に伴い自動でネットワーク遮断が行えるVMware NSXを以前から利用しており、本プロジェクトが求める高度なセキュリティレベルを確保できると考えました」(滝澤氏)

こうしてVMware HorizonによるVDI環境を活用した四層分離シンクライアントモデルでのシステム構築を選択した長野県は、2021年4月にDX推進課及びデジタルインフラ整備室を立ち上げ、翌月からシステム構築をスタート。約1年をかけて構築を行い、翌年4月から旧システム更改時期までの3か月間で、庁内すべての端末をシンクライアントに切り替える作業を行いました。

「今回のシステム更改プロジェクトでは、セキュリティクラウドの更改プロジェクトや、庁内のLAN回線、WAN回線更新などをマルチベンダーで併行して推進していたため、プロジェクトを跨いだ打ち合わせやスケジュール調整が必要になりました。そのなかで多数のメーカー・ベンダーとやり取りを行いましたが、特にヴイエムウェアには細かい部分まで手厚くサポートしていただき、本当に感謝しております」(滝澤氏)

8,200台に及ぶ仮想マシンの安定稼働に成功。今後もシステム改善と職員の意識改革を推進し、DXの目標実現に向けた取り組みを続ける

システム更改に合わせてLGWAN上のVDIを軸とした四層分離のシンクライアントモデルが導入され、約8,200台の仮想マシンが稼働。細かい問題や問い合わせはあったものの大きなトラブルもなく運用されています。Web閲覧については、構築したVDI上に仮想のブラウザ画面を転送するという仕組みで、ユーザーの利便性を損なうことなくセキュアなブラウジングを実現。セキュリティ面でも、シンクライアント端末との間ではクリップボード経由のやり取りもコントロールしており、端末本体にはデータが一切保存されず、情報漏えいのリスクを最小化することに成功しています。さらに端末の証明書とID・パスワード、生体認証(顔認証)の多要素認証を採用してセキュリティを強化。システム検討時のポイントとなったWeb会議に関しては、VMware Horizonの最適化パックにより、音声や映像の通信を、VDIを経由させることなくダイレクトに流す仕組みを構築し、スムーズなWeb会議やコミュニケーションを可能としています。

「DX推進課とデジタルインフラ整備室ではこの環境を先行導入してから、はやくもペーパーレス化の効果が出ています。旧環境から比較してコピー機使用料が9割以上削減できた月もあり、印刷枚数の大幅な削減を実現。また、利便性についても飛躍的に向上しており、職員に対するシステム満足度調査の結果からも、高い評価と多くの好意的な意見を得ることができました。(滝澤氏)

DX推進課のリーダーである永野氏は、今回のシステム刷新により、DXの環境は整備できたと考えていると語ります。

「今後は新しい働き方やコミュニケーション手段を効果的に活用するための意識改革を含め、継続的に庁内DXを推進していくことが重要になると思います」(永野氏)

インフラ整備を担う滝澤氏は、システムの安定稼働を目指していくとともに、最先端のデジタル技術もキャッチアップし、先進的なシステムにブラッシュアップしていきたいと展望を語り、注目しているヴイエムウェア製品として、エンドポイントセキュリティやネットワーク仮想化(SD-WAN)ソリューションを挙げます。

長野県が実践する自治体DXの取り組みと、そのなかで活用されるヴイエムウェアのソリューションには、今後も注視していく必要がありそうです。

  • 集合写真

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●業界
GOVERNMENT

●カスタマープロフィール
長野県は、全国で4番目に広い面積を有する広域自治体。南信州、北アルプス、長野など県内を10の広域に分けて県民の生活の向上させるための政策を展開しており、ICTの活用も積極的に推進している。

●ユーザーコメント
「VMware HorizonやVMware NSXを採用することで、セキュアで快適なテレワーク環境を構築することができました。複数のプロジェクトが併行して動いている状況のなか、ヴイエムウェアの密接で手厚いサポートは本当にありがたいものでした」
――長野県 企画振興部 DX推進課 デジタルインフラ整備室 主任 滝澤 啓一 氏

●導入製品・サービス
・VMware Horizon
・VMware NSX

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