アップルの「iPad Pro」に10.5インチの新モデルが登場した。ビジネス利用という観点では、ハードウェア性能の大幅な向上もさることながら、今秋リリースの「iOS 11」によるソフトウェアの進化にも注目すべきだ。

10.5インチiPad Pro。「iOS 11」は2017年秋リリース予定

これまでもiPadはビジネス用タブレットとしても高い人気を誇ってきたが、さらにアップルはPCの置き換えを本格的に狙う構えだ。だが果たして、本当にiPadが真のビジネス活用に向く製品となるのだろうか。

画面を中心に性能が向上、日本語配列キーボードも

10.5インチのiPad Proは、ハードウェア性能が大きく向上した。これまで9.7インチだった画面が大きくなっただけでなく、狭額縁になったことで画面占有率が向上。動きのある場面ではリフレッシュレートを120Hzに高め、画面がヌルヌルと滑らかに動くようになった。

iPadのビジネス利用として、資料を入れて客先まで持っていき、画面を見せながら商談を進める場面は多い。10.5インチモデルであれば同じ資料でも、より魅力的に見えるだろう。見た目にも新しいiPadと分かりやすいので会話も弾みそうだ。

Apple Pencilを用いたペン入力も、反応速度が向上したことで書き心地が良くなっている。手書きでメモを取る用途だけでなく、10.5インチの大きな画面を活かしてマインドマップを書くような場面でも活用できるだろう。

ただ、これまでのiPadは「文書作成」といったインプットを必要とする作業には使いづらかった。理由のひとつは、カバーを兼ねたアクセサリー「Smart Keyboard」が英語配列だったためだ。だが今回、10.5インチ用と12.9インチ用に日本語配列モデルが追加された。

Smart Keyboardに日本語配列モデルが登場した

多くの企業では、社内PCのキーボードを日本語配列に統一しているはずだ。英語配列では記号の配置が異なる上に、日本語入力を効率化できる「英数」と「かな」が利用できない。iPad Proでも日頃から慣れ親しんでいる日本語配列を使えるのは嬉しい点だ。

ビジネス利用はiOS 11で本格化するか

一方で、単にハードウェア性能が向上しただけでは、ビジネスにおけるiPadの位置付けは大きく変わらないと考える人も多いだろう。

筆者の場合、すでにグーグルの「G Suite」にiPadを登録して管理しており、VPNでリモートのWindows PCにログインする機能も活用している。だが、肝心の日本語変換やアプリ間連携、ファイルの扱いは不便なままで、「これならPCを開いた方が早い」と感じる場面は多い。

そこで注目したいのが、今秋リリース予定の「iOS 11」だ。6月のWWDCで紹介された機能だけを取り上げても、「Dock」によるアプリ切り替えや、ドラッグ&ドロップによるアプリ間連携、「ファイル」操作用アプリの追加など、ビジネスに活用できそうな新機能が多数、含まれている。

iOS 11ではマルチタスクがさらに便利になりそうだ(画面はiOS 10のもの)

iOS 11はすでにパブリックベータ版の配信が始まっており、ビジネスで利用していない予備機があれば誰でも試すことができる。iPadのビジネス利用の可能性を探るならば、一度は試しておきたい。

こうした新機能は、一見するとiPadのポリシーに反するものに見える。iPadがもともと目指していた世界観は、「ファイルやフォルダの存在を意識することなく、写真や音楽、あるいは文書といったコンテンツそのものを扱える」ことにあったからだ。

だが実際は、すべての人がiPadを使っているわけではない。社内だけでなく取引先まで含めれば、PCを使っていることを前提にファイルをやりとりしながら、仕事を進める場合がほとんどのはずだ。iOS 11の登場で、iPadはその現実に真正面から向き合うことになるだろう。