VAIOは3月22日にAndroidスマートフォン「VAIO Phone A」を発表した。Windows 10 Mobile端末として知られる前モデル「VAIO Phone Biz」とまったく同じハードウェアでありながら、OSをAndroidに変更したものだ。

この連載でも取り上げてきたように、昨年は日本で多数のWindows 10 Mobileスマートフォンが登場し、盛り上がりを見せた。だが、同じくWin10スマホを発売していたトリニティもAndroid端末を発表するなど、Windows離れが加速している。果たしてWindowsスマートフォンの将来性はどう考えるべきなのだろうか。

WindowsからAndroidへの切り替えが進む

トリニティは、デザイン性の高いカバーが注目を浴びた「NuAns NEO」の第2世代モデルでAndroidを採用。VAIOも初代「VAIO Phone」に続き、再びAndroidの採用に至った。

「NuAns NEO」の第2世代モデルはAndroidを採用

VAIOもAndroid版「VAIO Phone A」を発表した

Windows 10 Mobile特有のContinuum for Phonesといった機能や、マイクロソフトのクラウドサービスとの親和性の高さは、Androidを採用することで失われた。一方で「一般的なスマートフォン」として利用できる魅力は、それらの欠点を補って余りあるほど向上している。

NuAns NEOの後継機はFeliCaによるおサイフケータイに対応し、指紋認証も利用できるようになった。VAIOの新モデルは「VAIO Phone BizにAndroid OSを入れただけ」という言葉そのものだが、豊富なAndroidアプリを利用できる魅力は大きい。

NuAns NEOの新モデルはFeliCaによるおサイフケータイにも対応

VAIO Phone Aのハードは同じだが豊富なアプリを活用できる

Windows 10 Mobileの後継モデルではなく、Androidに舵を切るメーカーが続く理由の一つは、コンシューマー需要の低さだろう。前述のトリニティが調査したデータでは、95%のユーザーがAndroidを求めており、個人事業主といったビジネスユーザーが多いVAIOでさえ、今後は8:2の比率でAndroidのほうが売れると予想している。

法人ユーザーからの関心は高いとはいえ、VAIOが導入事例として打ち出している三井住友銀行に続く大きい事例が出てきていないことも、厳しい現状を物語っている(関連記事 : Windows 10 Mobileはこれから? VAIOが「VAIO Phone Biz」で狙う法人市場)。

Windows 10 Mobileの将来性に疑問符も

問題点はもう一つある。端末メーカー各社によると、今後のWindows 10 Mobile端末ではSoCのSnapdragon 600番台が利用できず、新規端末の開発が困難になっているという。マイクロソフトが公開するハードウェア要件では、確かに「MSM8953(Snapdragon 625)」が外されている。

そもそも、台数が出ないWindows 10 Mobile端末を安価に作るには、Androidとのハードウェア共通化が避けて通れない道だった。だがハードウェア要件が変わってしまえば、VAIOのように同じハードウェアを利用しつつ、OSを更新することが不可能となってしまう。また、法人ユーザーがスマートフォンを導入する場合は数年スパンのサポートを求めるが、登場からわずか1年で後継モデルの開発が困難になる状況には、さすがに疑問を抱かざるを得ない。

なおトリニティとVAIOは、Windows 10 Mobile端末を値下げして継続販売する。マイクロソフトには、今後のロードマップやSoCサポートの考え方について説明し、Windowsプラットフォームに期待するユーザーが安心して導入できる環境構築を期待したい。