この連載では、ストレージの基礎的な解説をはじめ、実際のIT現場で役立つ、押さえておくべき実践のポイントを近年のストレージ動向なども交えながら解説します。IT領域の編集部1年生の私がさまざまな専門家のもとで勉強します。みなさんも一緒に学んでいきましょう。

連載の第3回目となる今回は、ピュア・ストレージ・ジャパンでプリンシパル・システムズ・エンジニアを務める岩本知博氏にHDD(ハード・ディスク・ドライブ)とSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の違いについて教わりました。

  • ピュア・ストレージ・ジャパン プリンシパル・システムズ・エンジニア 岩本知博氏

--HDDとSSDの違いについて教えてください

岩本氏:HDDもSSDも、データを保存するためのデバイスという意味ではどちらも一緒です。両者を比較すると、一般的にHDDの方が故障率が高いですが圧倒的に安価です。HDDは性能重視のSASと、容量重視のSATA(NL-SAS:ニアライン-SAS)に分けられ、SASよりもSATAの方が更に安価です。

HDDの中にはデータを記録する円盤が入っていて、この円盤が1分間に何回転できるか(rpm)が性能の指標なのですが、この値は2000年頃から変わっていません。一方でCPUの性能は飛躍的に向上してきたため、HDDとの間に大きなギャップが生じデータベースなどの多くのシステムでHDD性能がボトルネックになっていました。このギャップを解消するために、2010年頃から圧倒的な性能を持つSSDの導入が検討されてきました。

SSDが世に出始めた当時は、HDDと比較して圧倒的な性能を持つ一方で非常に高価でした。1デバイスあたりの容量も100ギガバイト程度と非常に小さく、導入できる企業やシステムは限られていました。しかし、進化の限界に達していたHDDに対してSSDは価格が安くなっていく見込みがあったので「いつかは一般的な企業やシステムでもSSDはHDDの変わりになる」「SSDの時代が来る」と言われていました。

このころに出現したのが、HDDとSSDを組み合わせたハイブリッド・ストレージです。HDDに実際のデータを置きながら、よく使うデータのみSSDにキャッシュを置いておくようなイメージです。いわば、ハイブリッド・ストレージはSSDの価格が安くなるまでの代替案ですね。

その後、特にすべての記憶装置をフラッシュメモリのみで構築したオールフラッシュストレージと呼ばれる種類のSSDの価格が低下してきたことにより、ハイブリッド・ストレージとSSDの競争が激しくなってきます。

現場の担当者の方が製品を導入する際は購買部や上司の決裁が必要ですよね。この時に価格と性能は重要な判断材料だと思います。SSDがハイブリッド・ストレージと同程度の価格帯になってきたことで「同じ価格なのであれば高性能な方が良いよね」となり、徐々にSSDが標準的になってきました。

--どのようにSSDの価格が下がってきたのですか

岩本氏:SSDを提供する企業は価格を抑えるためにさまざまな努力をしてきました。ハイブリッド・ストレージもSSDを少しでも安く提供しようという努力の一つだったのです。

そのほかの例は「データ削減」です。ここでは、100テラバイトのデータベースを移行して、ストレージに100テラバイト分のデータを置くようなケースを想定して説明します。

SSDにデータを移す際にデータが最初に入るストレージの構成パーツはコントローラと呼ばれるのですが、コントローラにはCPUやメモリが含まれます。この段階で重複排除および圧縮と呼ばれる技術を使ってデータ量を削減した状態でストレージに格納するので、もともと100テラバイトだったデータは格納時にはおよそ25テラバイト程度になります。なので必要なストレージ容量はもとのデータ量よりも少なくて済みます。これを「インライン」での重複排除と圧縮といいます。

これらのデータ削減機能はHDDストレージでも使われてきた技術ですが、その処理はストレージのHDD内にデータを格納した後に実行する「バックグラウンド」での重複排除と圧縮でした。そのため、データ量とほぼ同程度かそれ以上のストレージ容量が必要です。

ハイブリッド・ストレージの中にもHDDが入っていますので、オールフラッシュストレージの方が少ない容量で済むために同価格で提案できるようになってきました。先ほども申し上げましたが、価格が同程度であれば性能が良く故障率が低いSSDが選ばれるのは想像できると思います。

当社ではハイブリッド・ストレージが全盛期の時代からオールフラッシュストレージを提供してきましたが、両者を比べると徐々にオールフラッシュストレージが主流になってきているのを感じます。

HDDとSSDを比較する歴史を振り返るために、まずはハイブリッド・ストレージとSSDを比較しました。次回はHDDとSSDの比較をもう少し詳しく解説します。