この連載では、ストレージの基礎的な解説をはじめ、実際のIT現場で役立つ、押さえておくべき実践のポイントを近年のストレージ動向なども交えながら解説します。IT領域の編集部1年生の私がさまざまな専門家のもとで勉強します。みなさんも一緒に学んでいきましょう。
連載の第5回目となる今回は、前回に引き続きピュア・ストレージ・ジャパンの岩本知博氏に、ストレージエンジニアになり立ての方がどのように1歩目を踏み出したら良いのかを教わりました。
--ストレージエンジニア1年目の方にアドバイスをください
岩本氏:もしも私が過去に戻って社会人1年目の自分に声をかけるのならば、「自分が楽できるストレージを選べ」とアドバイスします。
ストレージ専任のエンジニアは今後減っていくことが予想されます。反対に、ストレージの周辺の知識を持っているエンジニアは市場価値が高まっていくでしょう。最近であればストレージエンジニアはコンテナの知識も必要ですし、API(Application Programming Interface)のようにコードを書いて運用するための知識も必要です。
ストレージのボリュームをどのようなデザインで構成するのかといった知識も必要だとは思うのですが、そういった知識が必要な場面は今後減っていくと思います。なので、エンジニア1年目や2年目のみなさんには、ストレージに関連する周辺領域の知識を身に付けてほしいと思います。そのためにも自分が楽できるストレージを選んで欲しいですね。
エンジニアが楽できるということは高い技術が使われいてるということです。最近だと、ストレージに障害が発生する前にAIが検知して教えてくれるような製品も出ています。人間が楽をするための技術はきっと面白いはずなので、ぜひそこから興味を持っていただきたいです。
--カタログを読むだけでは不十分でしょうか
岩本氏:カタログを読む機会はもちろん大事なのですが、各メーカーが売り出したい項目を強調しているので各社のカタログを読み比べるのは大変だと思います。ストレージの性能を比較する指標はIOPS(Input/Output Per Second)などいくつかあるのですが、最初から理解するのは難しいですよね。
そこで、まずはいくつかのメーカーのデモを見比べることをおすすめします。最初は「扱いが簡単そうだな」「面白そうだな」と思うところがスタートで十分です。その中から「どうしてこんなにサクサク動くのだろうか」と気になる製品を2つか3つピックアップして、最終的には自分で触りながら比べてみるのが良いでしょう。
具体的には、ボリュームを切り出す際や容量を拡張する際に必要な作業がどれだけの時間でできたのかを比べてみると良いのではないでしょうか。日々の運用を想定した場合の手軽さを体験してみるイメージです。同じ作業でも短時間で遂行できるのならばその方が楽できますよね。
経営者視点から考えても使いやすさは重要だと思います。使いやすいということは、それだけオペレーションのコストが不要になるからです。経営者にとってこの視点は欠かせないので、もしも現場のエンジニアがこれを提案できたら「そのストレージいいね」となりやすいはずです。
もう一つのおすすめとして「ユーザー会」に参加してみてください。実際に使用しているユーザーの生の声が聞けるはずです。データベースやクラウド、コンテナなど、さまざまなユーザー会が存在します。それらの会では「IOPS」のような具体的な数値よりも、「使いやすい/使いにくい」「壊れやすい/壊れにくい」といった意見が多く交わされますので、実際の現場の様子が想像しやすいと思います。