この連載では、ストレージの基礎的な解説をはじめ、実際のIT現場で役立つ、押さえておくべき実践のポイントを近年のストレージ動向なども交えながら解説します。IT領域の編集部1年生の私がさまざまな専門家のもとで勉強します。みなさんも一緒に学んでいきましょう。

連載の第1回目となる今回は、TISインテックグループのインテックでクラウドサービス部に所属する三浦智洋氏に、ストレージの基礎を教わりました。

  • インテック ネットワーク&アウトソーシング事業本部 クラウドサービス事業部 クラウドサービス部 サービス企画開発課 主任 三浦智洋氏

ストレージの基礎知識

--そもそもストレージとは何ですか

三浦氏:一言で言うと、「ITシステムにおいてデジタルデータを保存し、アプリケーションの要求によって取り出すことができる専用の装置」のことです。

5年くらい前から、データをクラウド上で利用する場面が増えるとともに、データ自体をクラウド上に保存するのが当たり前になってきました。現在もクラウド環境は主流ですが、データがクラウド上にあっても実際には「ストレージ」という機器の中に格納されています。

--ストレージとサーバの違いを教えてください

三浦氏:ストレージはデータの読み書きや保存に特化した機器であり、サーバはアプリケーションがデータを処理することが主な役割です。サーバは主にCPUとメモリから構成され、ストレージから取り出したデータやサーバ内で一時的に生成されたデータを、ストレージよりも読み書きが高速なメモリに置き、CPUがそれを処理します。メモリは揮発性であり、電源が遮断されるとデータは消えてしまいます。

サーバにアクセスが集中してダウンする場面があるかと思うのですが、仮にサーバに障害が発生してもいずれ復旧するのは、大切なデータそのものはサーバではなくストレージに保存されているからなのです。

--ストレージはどれくらい重要な機器なのでしょうか

三浦氏:現代におけるIT領域のインフラストラクチャーを支える要素は「ストレージ」「ネットワーク」「サーバ」の3種類に分けられます。一概には言えませんが、障害発生時に最も影響が大きいのがストレージだと私は考えています。

近年では仮想化が主流となり、物理サーバの上に仮想的なサーバを構築する場面が多いです。物理サーバが故障したとしても、仮想サーバは別の物理サーバ上で再起動する仕組みがあるため比較的短時間で復旧できます。

ネットワークに障害が発生した場合も、通信できない間はサービスが利用できないので影響が大きいですが、いずれ復旧すれば利用できるようになります。

一方で、ストレージの障害はデータの読み書きができないだけでなく、場合によってはデータを失ってしまう可能性があります。このように、万が一の場面を考えた場合、企業のデータを守ることが最も大事だとすると、ストレージの重要性もご理解いただけるのではないでしょうか。

ストレージを比較する3つの要素

--ストレージに求められるものは何ですか

三浦氏:一般的には「容量」「性能」「機能」の3点です。

「容量」はどれだけのデータ量を保存できるのかを示す指標です。近年はデータの利活用が当たり前になっていますので、まずは何よりもデータの蓄積が必要なサービスがたくさんあります。必要なデータ量が日々増えている中で、どれだけのデータ量を蓄積できるストレージを購入するべきかを見積もることが難しくなってきています。ですので、ストレージを稼働させたまま後から容量を追加できる「拡張性」も考慮に入れておきたい要素です。

「性能」はどれだけ速くデータを処理できるのかを示す指標です。Webシステムを例にすると、画面上でボタンをクリックした後の反応性などにも関わる要素です。多くの場合、ストレージは複数のサーバから同時にアクセスがありますので、1つの要求に対応できるだけではなく、並行して処理を行っても速度が落ちないことが求められます。

ストレージ全体の性能を考える際には、ストレージに搭載されているCPUも重要な要素です。一般的には上位モデルになるほど高性能なCPUが搭載されていて、効率よくデータの読み書きができます。また、CPUや記憶デバイス、ソフトウェアの違いによってストレージ全体の性能が変わるので、各メーカーやモデルごとに特徴が分かれます。

最後が「機能」です。これには、データの読み書き量に応じて全体のバランスを整えてくれるQoS(Quality of Service:性能コントロール)や、データ量を圧縮したり重複を排除したりして容量を制御してくれる機能、バックアップのようにある時点までのデータを保存してくれるスナップショットと呼ばれる機能などが含まれます。これらの3つの指標のうち、何を重視するかに応じて製品を選びます。