この連載では、ストレージの基礎的な解説をはじめ、実際のIT現場で役立つ、押さえておくべき実践のポイントを近年のストレージ動向なども交えながら解説します。IT領域の編集部1年生の私がさまざまな専門家のもとで勉強します。みなさんも一緒に学んでいきましょう。

連載の第2回目となる今回は、前回に引き続きTISインテックグループのインテックでクラウドサービス部に所属する三浦智洋氏に、エンジニアがストレージ製品を比較する際の着眼点を教わりました。

  • インテック ネットワーク&アウトソーシング事業本部 クラウドサービス事業部 クラウドサービス部 サービス企画開発課 主任 三浦智洋氏

実践で役立つ目の付け所

--ストレージ製品を選ぶ際には、どこに注目したら良いでしょうか

三浦氏:前回は、ストレージの性能を知るための重要な指標として、「容量」「性能」「機能」の3つを紹介しました。これらは多くの企業が製品カタログに掲載しているので比較しやすいでしょう。これに加えて、エンジニアの現場で私たちがさらに大事にしているのは、「ストレージの信頼性」です。ミッションクリティカルなデータを扱う場合や、IaaS(Infrastructure as a Service)のようにマルチテナントを運用する場合には、いかに安全に設計されているのか、という観点は外せません。

ここで注目する1つ目の例は「ストレージの稼働率」です。ストレージがどれだけの時間動いていたかを示しており、ストレージに期待する時間のうち1回も止まらなければ稼働率は100%で、半分の時間止まってしまったら稼働率は50%です。

以前は、ファイブナイン(99.999%以上)の稼働率が発揮できれば合格と言われていた時代がありました。ですが、ファイブナインの稼働率でも1年のうち5分間程度の停止は許容しなければなりません。近年はITシステムの重要性が増す一方でストレージの技術も大きく進歩しており、シックスナイン(99.9999%)の稼働率が採用される場面が多くなってきました。この値が設計値なのか、あるいは実績値なのかも確認しておきたいですね。

2つ目の例は「記録デバイスの故障耐性」です。一般的にストレージは多くのデータを記録するため、内部に搭載されているハードディスクやSSD(Solid State Drive)といった記録デバイスの数も多いです。このうち一部が故障してもデータを失わないために、RAID(Redundant Array of Independent Disk)と呼ばれる技術が使われており、いくつかのデバイスが故障してもストレージが通常通り稼働し続けられる工夫が施されています。

機械はいつ故障するか分かりませんので、記録デバイスが同時に何個まで故障してもストレージが動作し続けられるかという指標は重要です。その指標以上のデバイスが故障するとデータをロストしてしまいます。一昔前までは2本同時の故障まで耐えられれば十分でしたが、最近では3本以上の同時故障にも耐えられる製品が出てきています。

また、最近ではAIがストレージの稼働状況を自動で判断してくれる製品も出始めました。ストレージの稼働情報を分析システムを備えたクラウドに集めて、あらかじめ異常を通知してくれるような製品です。事前に壊れそうな物理ストレージを把握できれば、メンテナンス時に交換するなど先に対応できます。

こうした情報は製品カタログに書いていない場合が多いのですが、実務の中では非常に重要な観点です。ビジネスにおいてデータの重要性が増している昨今ですので、ぜひとも頭に入れておいてほしいです。

インテックでのストレージ活用事例

--インテックではどのようにストレージを活用していますか

三浦氏:当社では、お客様の用途に応じて2つのIaaSサービスを用意しています。

サービス利用者が専門の知識や経験を持たなくても、当社のエンジニア専門スタッフが環境構築から運用までオーダーメイドでサポートする「マネージド型クラウドサービス」と、サービス利用者がコントロールパネルと呼ばれる専用Webポータルを使用して自らサーバやストレージをセットアップできる「セルフサービス型クラウドサービス」です。これらのサービスを構築する際には、上記の観点から10社以上の製品を比較しました。

カタログに載っていない指標は、実際にメーカーの担当者さんとコミュニケーションを取って教えて頂きました。ストレージはITシステムで最も大事なデータを扱うものですので、ストレージの運用は技術力や経験が求められます。用途に応じて複数のストレージを運用する場合には、負荷が大きいので専任のエンジニアを配置する必要もあるくらいです。当社は長年SIやIaaSの運用で培ったノウハウをサービスとして提供していますので、お客様はこういった負担や不安から解放され、より重要な業務に集中していただける環境づくりを目指しています。