前回は、生成AIを業務で活用するには、ChatGPTを個人で使うだけでなく、業務フローに組み込む「仕組み化」が必要だと説明した。

では、実際の業務ではどのように使えるのか。今回は、kintoneのAIプラグイン「Smart at AI」を使い、問い合わせ対応や社内業務に多い「読む・まとめる・書く」作業を効率化する具体例を紹介する。

問い合わせ対応はなぜ大変?

総務、情報システム、カスタマーサポートといったバックオフィスや社内向け業務には、ある共通点があります。
それは、「文章を読む・まとめる・書く」作業が非常に多いという点です。

  • お問い合わせ内容を読んで状況を把握する
  • 要点を整理して、社内共有用にまとめる
  • 過去の対応を探し、似たケースを参考にする
  • 返信文や回答文を考える

これらは一つ一つは小さな作業ですが、件数が積み重なると大きな負担になります。特に、「内容を理解して、文章にまとめ直す」作業は、人の集中力をじわじわ削っていきます。

kintoneで問い合わせ管理や社内申請管理をしている組織でも、以下のような悩みを抱えているケースは少なくありません。

  • データはkintoneにあるが、読む・書く作業は結局人力
  • 属人化しやすく、対応品質がバラつく

こうした業務は、実は生成AIと非常に相性がよい領域です。

kintoneのAIは何ができる?Smart at AIを「前処理」に使う

ここで、Smart at AIの考え方を改めて整理しておきましょう。Smart at AIは、問い合わせ対応を自動化するツールではなく、「人が判断する前の文章処理(要約・下書き)」を担うAIプラグインです。

ポイントは「人が判断する前の下ごしらえをAIに任せる」という位置づけです。

例えば、kintoneで次のような問い合わせ管理アプリを使っているとします。主な内容は、件名、問い合わせ内容、問い合わせ内容の種別、対応状況、担当者などです。

  • kintoneに作成した「問い合わせ管理」アプリのレコード一覧表

    kintoneに作成した「問い合わせ管理」アプリのレコード一覧表

  • 「問い合わせ管理」アプリのフォーム画面

    「問い合わせ管理」アプリのフォーム画面

このお問い合わせの「詳細」欄を、Smart at AIで自動生成する、という使い方が考えられます。

ユーザーの操作イメージ

  1. 担当者が問い合わせレコードを開く
  2. AIで要約する「生成する」ボタンをクリック
  3. 問い合わせ内容を基に、要点を3行程度で要約
  4. 要約結果がkintoneのフィールドに保存される

kintoneのAIプラグイン Smart at AIの動き

  1. 「問い合わせ管理」アプリの「詳細」フィールドの内容を読み出す
  2. 「詳細」フィールドをプロンプト化して生成AIに送信する
  3. 生成AIが要約した文章を受信する
  4. 受信した要約文を「問い合わせ管理」アプリの要約文フィールドに保存する

「問い合わせ管理」アプリを使用するユーザーは、ボタンをクリックするだけで、いちいちプロンプトを入力したりする必要はありません。生成AIを操作する知識は不要です。

この時点で、担当者は「長文を一から読む前に全体像を把握」できます。例えば、1件あたり数分かかっていた要約作業が、数秒で終わるケースもある。また、要約文の品質が一定になるため、情報共有しやすくなる効果もあります。

以下は、「問い合わせ管理」アプリの「設定」画面で「プラグイン」をクリックし、Smart at AIを追加したときの、Smart at AIの設定画面の例です。

  • 生成AIとしては、Smart at AIの既定の生成AI「Smart at」だけでなく、API(通信規格)が適合するOpenAI、Anthropic、Geminiも利用可能。ただし、それぞれのサービスごとに必要なライセンスがある。ここでは、「Smart at」を利用するので、「Smart at」をクリックして選択し、Smart at AIのAPIキーを入力

    生成AIとしては、Smart at AIの既定の生成AI「Smart at」だけでなく、API(通信規格)が適合するOpenAI、Anthropic、Geminiも利用可能。ただし、それぞれのサービスごとに必要なライセンスがある。ここでは、「Smart at」を利用するので、「Smart at」をクリックして選択し、Smart at AIのAPIキーを入力

  • 生成AIと連携するための設定画面の例。多くの設定項目があるが、特に重要な設定ポイント

    生成AIと連携するための設定画面の例。多くの設定項目があるが、特に重要な設定ポイント

設定の手順は以下の通りです。

①全画面の設定ページを下にスクロールして「新しい設定を追加する」ボタンをクリックして、生成AIとの連携内容を設定する
②生成AIで生成したデータの保存先フィールド
③生成AIに送信するプロンプト。管理者(アプリの設計者)がここにプロンプトを入力しておくことで、一般ユーザーはプロンプトを入力する必要がない。ここは3行に要約するプロンプトを作成
④生成AIに受け渡すデータをどのフィールドから読み出すかを選択

  • プラグインSmart at AI設定後にアプリを更新してフォームを開くと、プラグインで登録した「三行要約:生成する」が表示されている。クリックするとプラグインを実行する

    プラグインSmart at AI設定後にアプリを更新してフォームを開くと、プラグインで登録した「三行要約:生成する」が表示されている。クリックするとプラグインを実行する

  • Smart at AIが起動し、確認を求める。「実行する」ボタンをクリックすると生成AIを実行する。実行するごとにライセンスのトークンが消費される

    Smart at AIが起動し、確認を求める。「実行する」ボタンをクリックすると生成AIを実行する。実行するごとにライセンスのトークンが消費される

  • 実行後、「詳細」フィールドの内容を3行に要約した「お問い合わせ要約」フィールドが表示された

    実行後、「詳細」フィールドの内容を3行に要約した「お問い合わせ要約」フィールドが表示された

回答文はAIに任せるな

問い合わせ対応で、もう一つ負担が大きいのが「回答文の作成」です。

ここで注意したいのは、AIに「そのまま返信に使える完成文」を作らせようとしないことです。

Smart at AIの現実的な使いどころは、以下となります。

  • 回答文のたたき台(下書き)を作らせる
  • 表現の方向性をそろえる

具体例

  • 問い合わせ内容
  • 過去の対応ルールや注意点(あらかじめプロンプトに含める)

これらを基に、「社内向けの回答文案を作成してください」といった形でAIに生成させます。

実際の設定では、先に紹介したように、プラグインSmart at AIの設定画面で、回答文を作成するプロンプトを登録します。

得られる効果

  • ゼロから文章を書く負担が減る
  • 書き出しに悩まなくてよくなる
  • 担当者ごとの表現のばらつきが小さくなる

最終的な確認・調整は必ず人が行いますが、「8割できた状態」から始められるだけでも、心理的な負担は大きく変わります。

社内業務でも使える

Smart at AIは、対外的な問い合わせ対応だけでなく、「社内向け業務」でも効果を発揮します。

社内FAQアプリでの活用

社内FAQでは、次のような課題がよくあります。

  • 同じ質問が何度も登録される
  • 質問文と回答文の書き方がバラバラ
  • 「結局どれを見ればいいのか分からない」

そうした場合、Smart at AIを使い、「質問内容を標準的な表現に言い換える」「回答文を分かりやすく整理する」といった用途に活用できます。

申請内容の要約・分類

経費申請や各種申請業務でも、「自由記述欄が長く、確認に時間がかかる」「内容の分類を人が行っている」といったケースがあります。

Smart at AIで、「申請理由を要点だけ要約」「内容に応じてカテゴリを自動分類」することで、確認作業のスピードと精度を底上げできます。

使ってわかった「よい点」と「ハマりどころ」

Smart at AIを使ってみてわかった「よい点」と「ハマりどころ」を整理します。

よい点

  • kintoneの操作感を崩さずにAIを使える
  • 非エンジニアでも運用できる
  • 「文章を一から考える」負担が確実に減る

特に、「AIを使っている」という意識をもたせずに現場で使える点は、Smart at AIの大きな強みです。

ハマりどころ

一方で、注意点もあります。

  • 管理者が登録したプロンプトが曖昧だと、使えない文章が出てくる
  • 入力データの質が低いと、出力も当然それなり
  • 業務ルールが固まっていないと、AIの設定も固まらない

Smart at AIは、「業務がある程度整理されている組織ほど効果が出やすい」ツールだと言えます。

この使い方が向いている組織/向かない組織

続いて、この使い方が向いている組織、向かない組織を整理します。

向いている組織

  • 問い合わせ件数が一定数ある
  • kintoneにデータが蓄積されている
  • 「文章作成・要約」に人の時間を取られている

向かないケース

  • ケースごとに判断基準が大きく違う
  • 業務フローやルールがまだ固まっていない
  • AIの出力をそのまま使おうとしている

まとめ

バックオフィスやサポート業務は、派手さはありませんが、組織を支える重要な仕事です。
Smart at AIは、そうした業務から「文章処理の負担」を静かに取り除くためのツールだと言えるでしょう。