「AIで日々の仕事を効率化できると聞くけど、本当に自分の業務で役立つのだろうか」と思っている方は多いのではないだろうか。連日、ニュースでAIの話題が流れ、社内でも活用せよという声は聞こえてくる。でも、いざ自分の仕事に置き換えてみると、何をどう使えばいいのか、いまひとつ想像がつかない。

本連載では、そんなビジネスパーソンを対象に、Windows 11でAIアシスタント「Claude(クロード)」を仕事に組み込む具体的な方法を紹介していく。

AIツールは、使いどころさえ押さえれば、毎日の業務を確実に楽にしてくれる道具になる。メールの下書き、会議メモの整理、資料の要約、Excelの数式作成まで、プログラミングの知識がなくても実践できるテクニックに絞って解説する。同時に、AIが苦手なことや、使い方を誤ると困る落とし穴も取り上げたい。

初回となる今回は、Claudeを使い始める前に押さえておくべき基本的な知識を整理する。「とりあえず使ってみる」前のガイドラインとして参考にしてほしい。

ClaudeはAnthropicが作ったAIアシスタント

ClaudeはAnthropicが開発する生成AIで、ChatGPTと並ぶ代表的なAIアシスタントだ。テキストで質問をすると、AIがテキストで回答を返してくれる、チャット形式での利用を基本としたツールになっている。

Claudeでは、テキストだけでなく、さまざまな形式のファイルを読み込ませたり、結果をファイルとして出力させたりすることもできる。

読み込めるものとしては、テキストファイル、PNGやJPEGなどの画像ファイル、PDFやWord、Excel、CSVといったオフィス文書などが挙げられる。たとえば手書きのメモを写真に撮ってテキスト化してもらったり、Excelのシートを渡して分析してもらったりといったことが可能となっている。

生成できるファイル形式としては、テキスト形式のほかに、PDF、Excel、Word、PowerPoint、HTMLをサポートしている。たとえば「この内容をPDFにまとめて」と頼めば、そのまま印刷やメールへの添付が可能な資料を手に入れることができる。テキスト形式の一種として、プログラムのソースコードや、Markdown形式のファイルの生成にも対応している。

「資料を読ませる」「分析させる」「成果物として出力する」などの作業を1つのツールで完結できる点が、さまざまな業務を支援するアシスタントツールとしてClaudeが人気を博している理由だ。

筆者がClaudeを仕事で使う理由は、長文処理の強さと自然な文章作成能力、そしてPDFやOffice文書などファイルを扱う業務との相性の良さにある。調査メモの整理や文書作成など、日常業務を支援するアシスタントとして活用しやすいからだ。

2つの利用方法:Web版とデスクトップアプリ

Claudeへの主なアクセス方法としては、ブラウザから使うWeb版と、パソコンにインストールして使うデスクトップアプリ版の2つがある。どちらも同じアカウントで使えるので併用することも可能だ。

Web版(claude.ai)

Web版は「https://claude.ai/」で公開されている。インストールは不要で、ChromeでもEdgeなどさまざまなブラウザで使えるので、普段から使い慣れたものを利用すればよい。会話の履歴はアカウントに保存されるため、別の端末で続きを読むこともできる。まず試してみたいという場合はこちらから始めるのがよい。

  • Web版のClaudeインタフェース

    Web版のClaudeインタフェース

デスクトップアプリ版

デスクトップアプリ版はダウンロードサイトから入手できる。Windows版、Windows(arm64)版、macOS版が用意されており、普段使っているPCにインストールして利用する。ほかにAndroid版とiOS版もある。

  • Claudeデスクトップアプリのダウンロードページ

    Claudeデスクトップアプリのダウンロードページ

デスクトップ版には、「Chat」「Cowork」「Code」の3つ機能が備わっている。このうち、Web版と同じ会話形式で入力・出力を行うのが「Chat」だ。テキストでやりとりしながらメールを下書きしたり、資料を要約したりできるもので、本連載でメインに扱うのはこの機能になる。

「Cowork」は、単なる会話ではなく、作業を依頼して自動で実行してもらう形式のアシスタントだ。「このフォルダーを整理して」や「このファイルから経費データを抜き出して」といった指示を出すと、Claudeが自分で手順を考えて自律的に実行してくれる。Chatとの大きな違いはPC内のフォルダーやファイルを直接操作できる点で、Chatよりも複雑な作業を依頼するのに適している。Coworkを使うには有料プラン(Pro以上)に加入する必要がある。

「Code」はプログラマー向けの開発支援ツールで、プログラムの生成をはじめとするアプリケーション開発のさまざまなタスクを実施できる。エンジニアがターミナルで使うことを想定して設計されており、非エンジニアが日常業務で使うようなものではないため、今は存在だけ認識しておけばよい。Codeの利用にも有料プランへの加入が必要。

どちらを使うべきか

これからClaudeを使い始めるならば、まずはWeb版で十分だ。チャットについては機能面での差はほとんどなく、インストールなしで今すぐ始められる点が大きな強みだ。

Web版に対してデスクトップアプリを使うメリットは、キーボードショートカット1つでClaudeの入力欄を瞬時に開いて会話を開始できる点である。最初はWeb版で始めて、毎日の業務でClaudeを使うようになったタイミングで、デスクトップアプリへの移行を検討するのがよいだろう。

無料と有料で何が違うのか

Claudeには複数のプランがある。仕事での利用を検討するうえで、無料プランと有料プランの違いを理解しておこう。

  • 無料(Free): 月額料金不要で誰でも使えるプラン。テキストの入出力、画像のアップロード、文書生成、Web検索など、基本的な機能はすべて利用できる。ただし1日のトークン使用量に上限があり、会話が長くなったり、複雑な処理を実行し続けたりすると、使用制限がかかって一定時間が経過するまで使えなくなってしまう。使えるモデルにも制限がある

  • Pro: 月額17ドル(約2,700円)で利用できる有料プラン。無料プランと比べて使える量が多く、業務でコンスタントに使っても上限に引っかかりにくくなる。前述のCoworkやCodeはこのプランから利用できる

  • Max 5x / 20x: 月額100ドル(約16,000円)または月額200ドル(約32,000円)で利用できる有料プラン。Proプランの5倍または20倍の使用量に加えて、混雑時の優先アクセスや、高度な機能に早期にアクセスできるといった利点がある

料金プランは変動することがあるので、利用を開始する前にはかならず自身で最新の情報を確認して頂きたい。各プランの金額や利用できる機能の詳細は、公式サイトの次のページで確認できる。

  • Claudeの料金プラン

    Claudeの料金プラン

Claudeは検索エンジンではなくアシスタント

Claudeを使う上で最初に意識しておきたいのは、Claudeは検索エンジンではないということだ。

Google検索では、キーワードを入力して目的の情報が掲載されているWebページを探す。一方のClaudeは、対話を通じて作業を進めるアシスタントである。質問に答えてもらうだけでなく、文章を書いてもらったり、資料を整理してもらったり、指示を追加しながら成果物を改善していったりする使い方が基本になる。

そのため、「一度の入力で完璧な答えを得る」のではなく、「会話を重ねながら結果を調整する」という感覚で使うのがコツだ。

会話の基本的な流れ

LINEや他のチャットツールとほぼ同じ感覚で使えるのがClaudeの特徴だ。基本的な流れは次のようになる。

  • claude.ai にアクセスしてログイン
  • テキストボックスに依頼したい作業を入力して送信
  • Claudeが回答を返すので、内容を確認する
  • 追加で質問したり、修正を求めたりする

会話の形で作業を進めてもらうのがポイントだ。一度で満足できる答えが返ってこなくても、「もう少し短くまとめて」「箇条書きにして」「PDF形式で出力して」など、追加の指示を出してやり直しをしてもらえばよい。何度も指示を繰り返して、求めていた結果に近づけていくのがコツだ。

Claudeを使う前に知っておきたい3つのこと

便利な道具には、使う際に気をつけておかなければならない特性もある。今回は、最初に把握しておくべきことを3点だけ挙げておく。

リアルタイム情報は注意

まず、Claudeは最新情報をリアルタイムで把握しているわけではないということ。Web検索機能を使ってその都度最新の情報を探しに行くことはできるものの、新聞やテレビのように最新ニュースを常に把握しているわけではないし、Claudeが参照したサイトがかならずしも最新の情報を反映させているとも限らない。今日の株価や速報といった情報は自分で確認する習慣を持とう。

自信満々に間違えることがある

Claudeに限らず、AIは不確実な情報でも「わからない」と言わずに、もっともらしい答えを作り上げてしまうことがある。これを「ハルシネーション」と呼ぶ。AIモデル全体としてこの問題は年々改善されており、Claudeも精度が大幅に向上しているが、それでも依然として可能性はゼロではない。

特に数字、日付、固有名詞、出典情報などはハルシネーションを起こしやすいため、かならず一次情報で確認する習慣を持つのがよい。

記憶機能はあるが、万能ではない

現在のClaudeには会話をまたいだ記憶機能が備わっており、名前や仕事の役割、よく使うスタイルの好みなどを覚えておいて、別の会話でもその情報をいかしてくれる。ただし、記憶される内容はClaudeが自動で選んだ要点に限られ、これまでの会話の内容をすべて正確に把握しているというわけではない。

例えば、「先週話した件の続き」といっても、Claudeはその細部を覚えているわけではない。重要な背景情報がある場合は、毎回の会話であらためて伝えたほうが確実だ。

まず1つ、試してみよう

次回から仕事でClaudeを活用する具体的な方法を紹介していくが、百聞は一見にしかずだ。まずは5分だけClaudeを使ってみよう。以下の文をコピーして、claude.aiのテキストボックスに貼り付けて送信してみてほしい。

私はメーカーの営業担当です。取引先への訪問お礼メールを書くのを手伝ってください。訪問日は昨日、先方の担当者は田中様、話した内容は新製品の提案と次回打ち合わせの日程調整です

筆者の環境では、Claudeは次のような内容を返してきた。

  • Claudeにメールの文章を作成してもらった

    Claudeにメールの文章を作成してもらった

件名から本文まで、ひとかたまりで出してくれた。その上、トーンを変えたB案も提案してくれている。これだけでも、ゼロからメールを書くよりずいぶん楽になるはずだ。

ここで重要なのは、最初の出力を完成品と思わないことだ。Claudeが返した文章は、あくまでたたき台と考え、読んでみて違和感があったらそのことを遠慮なく指摘すればよい。例えば、次のような具合だ。

  • 件名をもっとキャッチーにしてほしい
  • 打合せの候補日は具体的にせずに「追って連絡する」としてほしい
  • 内容で◯◯の話に触れてほしい

Claudeはこうした追加の指示にその場で応じて、文章を書き直してくれる。一発で完璧な答えを引き出そうとする必要はない。人間と違って何度修正の指示を出しても嫌がることはないので、まずはたたき台を素早く作り、対話しながら完成度を高めていくのがClaudeをうまく活用するコツだ。