若者は利己的か

永田町界隈で若者らが「戦争に行きたくない」と笛や太鼓を鳴らして叫んでいます。野党が煽る「徴兵制」が念頭にあるのでしょう。これに自民党の若手議員が「利己的だ」とツイートして騒動に。

ただ、議員に批判する資格はありません。政府と自民党に逆風が吹く状況下、求められる「利他的」なふるまいとは、沈黙を守ることだからです。つまり、議員のツイートは、己の感情を優先する利己主義者の告白であり、若者への批判はつまるところ「近親憎悪」です。

そもそも、我が国では「戦争に行きたくない」と叫ぶ人を戦場に送り出すのは、バラエティ番組の罰ゲームぐらいしかあり得ません。苦役を禁じた憲法論などではなく、ハイテク兵器を習熟するには学ぶ意志が不可欠で、「徴兵制」で集められたやる気のない若者など役立たずどころか「獅子身中の虫」になるリスクがあるからです。

何より、これからの戦争に「若者」は不用です。徴兵制を煽る人は最先端の「戦争」を知りません。

今年は戦後70年。戦争とは……ではなく、「デモに参加した若者は、就職が不利になる!?論争」に決着を付けます。

若者に媚びるという老害

ネットを中心に「デモに参加すると就職できない」という風説が飛び交っています。昭和時代の日米安保を巡る学生運動の体験談がネタ元のようで、公安警察にマークされ就職を妨害されるという都市伝説です。デモに参加したぐらいで就職が不利になることはありません。公安警察の人員は最大でも数千人とされており、デモの参加者全てを監視の上、嫌がらせをすることは不可能だからです。ただし、就活で不利になる可能性は否定できません。

デモを応援する言説の目立つとある新聞が、この風説を否定する記事を発表しました。登場した憲法学者は思想信条の自由から、デモを正当とし就職制限の不当性を訴えます。しかし、これは学者特有の机上の空論。採用する側の「内規」もまた、おなじ憲法に保護されるからです。就職コンサルタントは同様の指摘をしつつも、「肯定的に受け取る可能性がある」と希望を提示します。

この新聞が期待する回答を手土産に、文化人の仲間入りを目論んでいるのかもしれませんが、若者の皆さん、信じてはいけません。履歴書のPR欄に「学生時代にデモに参加しました」と、わざわざ記入してあったとき、採用担当者こう考えます。極度に政治的傾斜しているか、他にアピールする経験や経歴がないか、TPOを理解できないか。いぜれによせ、会社が欲しいのは人材ではありません。

信念を持っているなら

続けて大手メーカー採用担当者の「時代錯誤だし、調べている暇が無い」というコメントを紹介します。しかし、この手のネタに執拗に絡みつく新聞を相手に「差別します」と答えるバカはいません。担当者は自身の経験からも否定してみせますが、自分がしてきたことでも、若者の行動には「時代が違う」と認めないのは、職場どころか、どこの家庭でもみかける光景です。大人の世界には「本音と建て前」があるのです。そして以下のコメントをご覧ください。

「ゲロウザイ。伸びたラーメンみたいな◯○◯だよ、コイツ」

「まぢでヤメロ。ふざけんな。オメーの体の穴という穴にクギ打つぞ」

例の議員へのツイートで、とある新聞と歩調を合わせるニュース番組で、「デモに参加する普通の若者」と紹介された、うら若き乙女らです。実名に顔写真も添えられています(※マイルドに加工しております)。

デモに参加しただけで、就職が不利になることは確かにないでしょう。そして、品位を欠いたツイートは、いわゆる若者特有の「ノリ」なのかもしれません。

しかし、人事部が応募者の名前で検索することはもはや常識。男女を問わず、ネットという公の空間で「◯◯◯」と叫ぶ者を採用する企業は、当然それほど多くありません。

若者に考えて欲しいこと

朱に染まれば赤くなるように、デモに馴染めば、その界隈特有の言語習慣を身につけます。

順応性の高い若者ほど、その傾向は強く、SNSで「ヘイト」な言説をまき散らしているのはいわゆる「ネトウヨ」だけではありません。そして就活でハンデを背負うことになるかもしれない「デモ0.2」です。

彼女らの発言は、対立陣営が画像を保存し拡散しているので、アカウントを削除しても無駄。半永久に保存されることでしょう。デモとは政治活動のひとつ。政敵の攻撃に学割はありません。

就職活動で不利になっても構わない覚悟があるならデモ参加を止めません。リスクの受容も、人生の醍醐味であり、これを「自己責任」と呼びます。

もちろん、若者デモを好意的に取りあげ、背中を押していた新聞社や政党が、責任を取ってくれることもありません。

繰り返しになりますが徴兵制などありえません。これからの戦争は「ドローン」と「AI(人工知能)」の時代になるからです。人が人を殺すのではなく、機械が人を殺す「戦争」の時代です。

2045年にはAIは人の頭脳を追い越すと推定されています。その殺人ドローンに「憲法9条」を理解するチップを搭載する開発者などいません。

ところで「戦争法案」と名づけたのは、これまたデモに理解のある政党の党首とされています。戦争をするには「相手」が必要です。彼女は誰との戦争を想定して発言しているのでしょうか。「戦争」も含めて、リスクを回避するためには、リスクを正しく把握しなければなりません。デモに参加する若者は、その党首に「戦争の相手」を問いかけるべきではないでしょうか。誰?本当にいるの?と。

エンタープライズ1.0への箴言


IT時代に若気の至りは回復不能

宮脇 睦(みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」

筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」