2026年10月20日(火)早朝、火星衛星探査機MMXが、鹿児島県の種子島から打ち上げられました。当日朝の証券投資番組でも、キャスターが興奮気味に「グッドニュース」と言っていたくらい意外にも話題になっていますね。今回はMMX関係者と知り合いのくせにスルーしてきた東明が、おっとり刀で「とりあえず知ると良い」かなあと思うことを紹介します。知ったかぶりしてくださいませ(笑)。

火星衛星探査機MMXの基本事項あれこれ

まずは、シロウトも気になるMMXのあれこれをまとめておきます。

  • MMXの概要

世界初

  • フォボスからの試料採取と地球帰還
  • 火星圏からのサンプルリターン
  • 火星衛星への着陸探査

いずれも成功すれば世界初の快挙となります。

スケジュール

2026年に地球を出発、2027年に火星圏に到着して3年間活動、2030年に火星を離脱して、2031年に地球帰還の予定という、行って、物質採って帰ってくるだけでなく、いろんなことをする5年間のプロジェクトです。

  • 2026年10月20日:H3ロケット10号機で打ち上げ
  • 2026年10月~:地球から火星圏へ航行(約10か月)
  • 2027年8月:火星圏到着、フォボス近傍軌道へ投入
  • 2027~2028年:フォボス・ダイモスの広域観測、着陸候補地選定
  • フォボス近傍(QSO軌道)から詳細観測
  • 2029年ごろ:小型ローバー「IDEFIX」投下・表面探査
  • 2029年ごろ:MMX本体がフォボスへ着陸、サンプル採取(10g以上)
  • 2030年:フォボス離脱、火星圏出発。ダイモス接近観測を実施
  • 2030~2031年:地球帰還航行
  • 2031年7月ごろ:地球帰還、サンプル回収カプセル投下

火星の衛星フォボス、数千万年後に破壊される運命の小さな衛星

火星にはフォボスとダイモス2つの衛星があります。写真はこんな感じで。

19世紀の1877年にアメリカ海軍天文台のアサフ・ホールが発見しました。

ちなみに天文台はワシントンD.C.にあります。なお、ホールの妻のスティックニーも数学者であり、ホールの研究を手伝っていました。弱気になるアサフの尻をたたいて発見にたどり着かせたという逸話が有名です。フォボスの最大のクレーターは写真の右に見えているスティックニー・クレーター(直径9km)です。一方、ホールというクレーターもフォボスにありますが、直径5kmです…

  • フォボスとダイモス

    左:フォボス 右:ダイモス (C)NASA/JPL-caltech/University of Arizona

フォボスは長い部分が27km程度、ダイモスは15kmです。地球の月は3500km弱ですので100~200分の1の小ささですな。ちなみにスターウォーズのデス・スターは直径約160km(初代)、銀河英雄伝説のイゼルローン要塞は直径約60kmという設定になっています。架空の宇宙ステーションより小さい衛星なのでございます。

小さいおかげで、引力も小さく、着陸したあと離脱するためのエネルギーも小さくて済みます。これが火星や月だとそうはいきません。日本はもっと小さな小惑星イトカワやリュウグウのサンプル採取にも成功していてノウハウを持っていますので、それを活かしてのMMX計画なのでございます。

また、公転半径はフォボスが内側で火星中心から9,400km、ダイモスが23,500kmです。火星の半径は3,400kmですから、フォボスは火星表面から6,000km上空を周回していることになりますな。

地球の人工衛星は低いものだと300kmですが、気象衛星ひまわりは36,000kmですから、だいぶ近い感じです。ちなみに月は380,000kmですので10~40分の1で、非常に近いということになります。この近さのため、火星に衝突した隕石による火星の表面の物質がフォボスに積もっていると考えられており、MMXはその火星由来の物質採取も期待されています。

なお、フォボスは現在、火星に少しずつ接近しており、2000~5000万年後に潮汐力により破壊され、火星の環になるか火星に落下する運命とされています。太陽系46億年の歴史から見れば数千万年はほんの一瞬です。なぜ私たちは、ちょうどフォボスが壊れつつある時代に立ち会っているのでしょうか。フォボスは太古からそこにあったのか、それとも比較的最近になって火星に捕獲された天体なのでしょうか。MMXは、その謎にも迫ります。この謎を解くのもMMXの使命です。

フランス・ドイツのローバー「イデフィックス」

MMXには、フランスとドイツが共同で開発した探査車(ローバー)が搭載されており、MMXの着陸に先立ってフォボスにおろされ、動きながら地質の調査を行う予定です。ちなみにIDEFIX(イデフィックス)という名前は、フランスの国民的人気を誇る歴史ギャグ漫画『アステリックス』に登場する犬の名前に由来します。日本でいえば、ガンダムのハロのような知名度のあるキャラクターですな。

IDEFIXの大きさは約55cm×40cm×25cm、質量は約25kg。フォボスの重力は地球の約2000分の1しかないため、車輪で走るのではなく、跳ねるように移動しながら探査を行います。まあハロの4~5倍くらいのイメージですが、跳ねるようにというのは似ている気がします。日本が開発したらハロという名前になったかもしれませんねー。

過去の日本の火星挑戦、ソ連・ロシアのフォボスへの挑戦のリベンジ

なお、日本は1998年打ち上げの火星探査機「のぞみ」を送り込んだことがあるのですが、途中で故障を起こし、火星の周回軌道に投入できませんでした。

また、フォボスの探査については、旧ソ連が1988年にフォボス1号と2号を打ち上げ、1号は火星への航行中に失敗。2号は火星周回軌道にはいり、フォボスに接近、観測するも、着陸機をおろす直前に通信途絶。コントロールを失って失敗しました。ロシアになってからも2011年にフォボスの試料を持ち帰る探査機「フォボス・グルント」を打ち上げました。しかし地球周回軌道から脱出できず、ミッションは失敗に終わっています。

今回は国は違えど、人類にとってこれらのリベンジ! 40年近く続くフォボス探査の悲願への挑戦なのでございますなー。

MMXをテーマにしたプラネタリウム番組は必見

MMXをテーマにしたプラネタリウム番組「MMX 火星衛星探査計画が、全国で公開されています。公開が終了した施設も多いのですが、また来年にかけて公開されるかもしれません。近くで公開されたらぜひチェックを

ということで、これくらい知っておくと、MMXは結構楽しめると思います。MMXの火星圏到達は来年とすぐですので、ぜひ楽しみにしていてください。