H3ロケットの打ち上げが、いよいよ10回目の大台を迎える。1機目と7機目(8号機)が失敗し、出だしではつまづいてしまったが、すでに“新型”とはいえない10機目以降では、今まで以上に安定した運用が求められる。また、今回の10号機はH3としては初めて地球を脱出する打ち上げになるということもあり、注目だ。
10月20日の打ち上げを前に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は10月18日、打ち上げ前ブリーフィングを開催。最新の準備状況について説明した。以下、その内容も踏まえ、今回の打ち上げの見どころを紹介しよう。
H3-24Lの登場でラインナップが出そろう
H3ロケット10号機に搭載されるのは、JAXAの火星衛星探査機(MMX)。MMXは日本にとって、「はやぶさ2」に続くサンプルリターンミッションである。今回、サンプル回収に挑むのは、火星の衛星「フォボス」だ。地球への帰還は2031年7月となる予定で、成功すれば、世界初の火星衛星サンプルリターンとなる。
【動画】火星衛星「フォボス」の立体視動画を作ってみました。大きなクレーターがあったり、とても面白い形をしているので、赤青メガネを持っている人は試してみてください(3Dモデル:NASA/JPL-Caltech)
MMXの開発は、2020年にスタート。打ち上げを控え、JAXAの川勝康弘MMXプロジェクトマネージャは、「技術的なチャレンジで難しいところもあったし、世界の環境として苦しいところもあったが、ようやくここまで来ることができた。天気も良さそうなので、打ち上げを楽しみにしている」と、期待を述べた。
MMXのミッションや探査機の構成などについて、詳しくは、先日の機体公開レポート記事を参照して欲しい。
深宇宙への打ち上げとなるため、今回はH3ロケットの最強形態である24形態が使用される。固体ロケットブースタ(SRB-3)を4本搭載する24形態の打ち上げは、7号機以来の2機目。ただ、7号機はワイドフェアリングのH3-24Wだったのに対し、今回はロングフェアリングのH3-24Lであるため、24Lとしては今回が初だ。
海外メーカー製のワイドフェアリングはH3の中でもやや特殊な位置づけであるが、このロングフェアリングはショートフェアリングのロングバージョンとなる。同じ技術で作られており、全長はショートよりも6m長い16.4mだ。なおワイドウェアリングの全長は16.5mなので、ロケットとしては24Wの方がわずかに高い。
今回のH3-24Lの登場により、H3ロケットはラインナップが全て出そろう。現在、より多くの小型衛星を搭載するコンステレーションのニーズが高まっており、H3-24Lはそれに適している。JAXAの有田誠H3プロジェクトマネージャは「H3の武器が1つ増えた」、MHIの北山治H3プロジェクトマネージャは「受注活動に勢いが付く」と、期待を寄せた。
H3ロケットとして“過去最速”の打ち上げ、その理由は?
打ち上げ予定の日時は、10月20日の4時41分3秒。ウィンドウはなく、この時刻にピンポイントで打ち上げる必要がある。予備期間は11月9日までの3週間ほど確保されており、打ち上げ時刻は日によって変動する。
今回はH3ロケットとしては初の火星遷移軌道への打ち上げということで、フライトシーケンスは従来と少し異なる。たとえば静止遷移軌道(GTO)打ち上げだった前号機(9号機)と比べると、衛星フェアリングの分離が30秒ほど早いことが分かる。これは、加速がより大きく、早く宇宙空間に到達するためだ。
MMXの重量は4,480kg。日本の探査機としては大型の部類になるが、じつは、24形態に搭載するにしては軽い。前号機の「みちびき7号機」よりも少し軽いほどだ。ではなぜ24形態が必要なのかというと、今回求められるのは地球周回の第1宇宙速度(約7.9km/s)ではなく、地球脱出の第2宇宙速度(約11.2km/s)だからだ。
そのために、従来は第1段エンジン「LE-9」の推力を途中から絞っていたが(スロットリング)、今回はそれを行わず、H3の打ち上げ能力をフルに使うという。しかしその結果として、探査機の機体にかかる静荷重は大きくなってしまうが、MMXは十分それに耐えられるということで、こういった飛び方になったそうだ。
また、第2段エンジンの2回目の燃焼もかなり異なる。前号機は赤道上空付近で2回目燃焼を終了し、衛星を分離していたのに対し、今回は大西洋上空まで飛行してから2回目燃焼を開始し、アフリカ上空で探査機の分離を行う計画だ。分離の時間は、打ち上げの4,270秒後(1時間11分10秒後)となる。
ロケットは基本的に、エンジン燃焼中には常に通信できる状態にしておく必要があり、通常のGTO打ち上げでは、地上局としてクリスマス局が使われる。しかし今回のフライトだと地上局から見える位置ではないため、NASAの「TDRS」衛星によるデータ中継サービスを初めて運用で利用する(7号機で技術実証は実施済み)。
H3初の「延期なし」打ち上げに期待! 日本全国から飛ぶ姿が見えるかも?
JAXAはなぜか、「打ち上げ予定日がピンポイントで悪天候」というパターンが多い印象なのだが、今回は今のところ、珍しく天気の心配はしなくて良さそう。H3ロケットでは初となる「延期なし」打ち上げも期待できるかもしれない。
なお、今回は日の出前の打ち上げなのだが、好条件が整っており、飛行中の機体が日本全国の広い範囲で見える可能性があるという。どのあたりに見えるのか、JAXAの特設サイトに情報が掲載されているので、早起きできるようならぜひ挑戦してみてほしい。
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