この半導体ニュースのまとめ
・メモリ大手5社がAI需要と販売価格上昇を背景に大幅な増収増益を達成 ・DRAMはHBM4とサーバ向けDDR5、NANDはデータセンターSSDが成長をけん引 ・長期契約と大型投資が進む一方、PC・スマートフォン向けの価格上昇がリスクに
キオクシア、SK hynix、Samsung Electronics(サムスン)、Micron Technology、Sandiskの直近決算が出そろった。
各社で決算期や会計基準、通貨が異なるため単純な金額比較はできないものの、共通するのはAIデータセンター向けメモリの需要拡大と販売価格の上昇が、売り上げと利益を大きく押し上げたことだ。
キオクシアの2026年度第2四半期は、売上収益が前四半期比40.3%増の2兆4800億円、営業利益が1兆9947億円となり、営業利益率は80.4%に達した。旺盛なデータセンター需要と販売価格の上昇が業績を押し上げた。
SK hynixの2026年第3四半期は、売上高が104兆6155億ウォン、営業利益が83兆3338億ウォンとなり、営業利益率は80%を記録した。HBM4の出荷が本格化したほか、321層TLC NANDを搭載したエンタープライズSSDの販売も拡大した。
Samsung Electronicsも、半導体事業を担当するデバイスソリューション(DS)部門の売上高が147兆1000億ウォン、営業利益が106兆5000億ウォンとなった。HBM4やサーバ向けDRAM、SSDの拡販によって、メモリ事業は売上高と営業利益で過去最高を更新した。
Micron Technologyの2026会計年度第4四半期(2026年6~8月)は、売上高が前四半期の414億5600万ドルから542億2900万ドルへ増加し、GAAPベースの営業利益率は80.7%となった。
Sandiskの2027会計年度第1四半期(2026年7~9月)は、売上高が前四半期比23%増の110億ドル、GAAP純利益は81億ドルとなった。第2四半期の売上高も122億~126億ドルを見込み、データセンター事業を中心とする成長が続くとの見方を示している。
AIが引き起こすメモリ市場の構造転換
5社の決算から見えてくるのは、メモリ市場がPCやスマートフォン(スマホ)の出荷台数に左右されていた従来の産業構造から、AIインフラ投資に強く連動する構造へ移行していることだといえる。
DRAMでは、GPUやAIアクセラレータに接続するHBMだけでなく、AIサーバのCPU側で使用する大容量DDR5、低消費電力を特徴とするSOCAMMなどの需要も拡大している。
SK hynixは第4四半期にHBM4の出荷量と売上高がHBM3Eを上回ると予測する。SamsungもHBM4の販売を拡大し、新たなCPU/GPUプラットフォーム向けのHBM、サーバDRAM、高速DDR5を重点製品に位置付けている。
MicronもHBMに加え、大容量DDR5 RDIMMやSOCAMMなどを展開している。AIサーバ1台当たりのメモリ搭載額は、HBMだけでなくシステムメモリを含めて増加する方向にある。
NAND専業2社もAI需要で利益率が急上昇
今回の決算で注目されるのは、AI需要の恩恵がDRAMだけでなく、NANDフラッシュメモリ市場にも明確に波及している点だろう。
生成AIの学習や推論では、AIモデル、学習データ、チェックポイント、ベクトルデータ、KVキャッシュなどを保存する必要がある。モデルや処理対象の大規模化に伴い、高性能・大容量のエンタープライズSSD需要が拡大している。
キオクシアの営業利益率が80%を超え、Sandiskの売上高も前四半期比23%増となったことは、データセンター向けSSDの成長とNAND価格の上昇が、NAND専業企業の収益の改善につながっていることを示している。
Sandiskは前年度から、収益性の高いデータセンター向け製品へ構成を移してきた。2026会計年度第4四半期の決算の際、同社は売上高が前四半期比51%増の89億6500万ドルとなったが、増収分の約3分の2を価格上昇、約3分の1を販売数量の増加が占めたとしている。
2026会計年度通期のデータセンター向け売上高は前年比437%増加したが、2027年度第1四半期もデータセンター事業が全社を上回る成長を続け、第2四半期にはさらに増収を見込む。
NAND市場の収益改善はキオクシアだけに限らず、Sandiskにも広がっている。両社は四日市工場を共同運営しているが、製品構成や顧客戦略、販売契約の違いが、それぞれの収益力を左右することになる。
NANDが単なるデータの保存媒体からAI処理を支える部品に進化
AIデータセンターで使われるNANDの役割も変化している。従来、SSDは主にデータを保存する装置として位置付けられてきたが、AIシステムにおいては、演算装置へ必要なデータを遅延なく供給し、限られたDRAM容量を補完する役割も求められるようになってきた。
大量のデータを低コストで保存できるQLC SSDや、高速な読み出し・書き込みに対応するPCIe 5.0/6.0 SSDの需要が拡大。推論処理ではKVキャッシュをSSDへ階層化して保存する用途も検討されている。
SK hynixは321層TLC NANDを採用したエンタープライズSSDを拡販し、第4四半期には321層品を韓国におけるNAND生産能力の半分以上へ高める方針を示した。
SamsungもサーバSSDに加え、パーソナルAIエージェントの普及によるQLC SSD需要の増加を見込む。MicronもPCIe 5.0/6.0対応SSDなどを通じ、AIデータセンター向けの製品展開を強化している。
長期契約がもたらすメモリ市場の変化
従来のメモリ市場は、需要拡大を受けて各社が設備投資を増やし、数年後に供給過剰と価格下落を招くサイクルを繰り返してきた。
AI需要の増大が続く今回は、メモリメーカーとクラウドサービス事業者などが長期供給契約(LTA)を結び、将来需要を確認してから設備投資する動きが各社に広がっており、例えばSK hynixは大手クラウドサービスプロバイダーを含む14社とLTAを締結し、2027年と2028年の総生産能力の50%超に相当する数量を確保したと説明している。
また、Samsungも複数年契約によって販売基盤を安定させる方針を示しているほか、Micronも戦略的顧客契約が将来の業績に対する確度を高めるとしている。
Sandiskは、複数年の顧客関係と財務的コミットメントを組み合わせた「New Business Model」と呼ぶ契約を拡大している。2026会計年度第4四半期までに10件の契約を締結し、高付加価値市場への供給と収益の安定化を進めている。
こうした契約が広がれば、需要を確認せずに設備投資を膨らませるリスクは低下する。一方、AIインフラ投資が減速した場合、特定顧客や特定用途への依存が複数社の業績へ同時に影響する可能性もある。
供給能力の拡大に求められる時間
各社ともに増産投資を進めているが、先端メモリの供給能力を短期間で増やすことは難しい。
HBMはDRAMのウェハだけでなく、積層、接合、検査、先端パッケージングまで含む複雑な工程を必要とする。HBM向けに先端DRAMの生産能力を振り向ければ、サーバ、PC、スマホといった従来型DRAMにも影響が及ぶこととなり、それが現在のメモリ不足の要因の1つと考えられている。
SK hynixは、先端プロセスの技術的難易度と新工場建設のリードタイムを理由に、需要が供給を上回る状態が2030年まで続くと予測する。Samsungも2027年のAI需要が業界全体の供給量を大きく上回るとの見方を示している。
NANDでも、積層数を増やした新世代製品の導入には、製造工程の変更、歩留まり改善、SSDコントローラやファームウェアの開発、顧客認証が必要となることから、単にウェハの生産量を増やすだけでは、データセンター向けSSDの供給能力を高めることにつながらない。
メモリ価格の上昇が逆風となるPCとスマホ
AI需要がメモリ市場の押し上げ要因となる一方、PCやスマホ市場がその影響を受ける形となっている。メモリメーカー各社がHBM、サーバ向けDDR5、エンタープライズSSDなどの高付加価値製品を優先するほど、一般消費者向けに回されるDRAMやNANDの供給量が相対的に絞られることとなり、必要量が手に入らなければ、必然的に奪い合いになり価格が高騰するのが現在の状況といえる。
そうした価格上昇分をPCやスマホメーカーがすべて製品価格へ転嫁できれば良いが、製品価格の高騰は消費者が買い替えを先送りする要因となる。メーカー側が吸収すれば、最終製品の利益率を圧迫する要因となり、歯がゆい状況が続くと言える。
AI向け需要によってメモリメーカーの利益が拡大する一方、その価格上昇が一般向け機器の需要を弱める動きは、ひっ迫が続くとされる2027年も主要なリスクとなると言える。
競争軸は生産量から製品・顧客構成へ
5社の決算を踏まえると、現在のメモリ市場は、DRAMとNANDの双方でAI需要が供給を上回り、販売価格と利益率が上昇している局面といえる。
ただし、各社は一律に生産量を増やしているわけではない。HBM4、サーバDDR5、SOCAMM、エンタープライズSSD、QLC SSDなど高付加価値品へ投資を集中し、長期契約によって顧客と数量を確保したうえで生産能力を拡大している。
ただし、今後の競争力を左右するのは、単なるウェハの生産能力の大小だけではなく、HBMの積層・接合技術、サーバプラットフォームの認証、SSDコントローラとファームウェア、顧客との共同開発、長期供給能力などを含めた総合力を生かしたソリューションとしての提供能力をどれだけ有しているかが関わってくると言える。
DRAMとNANDの双方を手掛けるSamsung、SK hynix、Micronと、NANDへ経営資源を集中するキオクシア、Sandiskでは投資戦略も異なってくることが考えられる。特に、NAND専業2社は、DRAMを外部から調達する必要があり、その調達パートナーの生産能力やアウトプットのタイミングなども考える必要がある。一部、DRAM代替が狙える技術開発などを進めている向きも見受けられるが、実際にそれが製品に盛り込まれるかどうか、もし搭載されるとしてもどのタイミングかは不透明であり、こうした動きが顕在化すると、さらなる市場の変化を引き起こす可能性も考えられる。
半導体メモリはAI需要を背景に、作るだけ作れば儲かるという状況だが、さらなるAIの高機能化に向けてメモリが活用される領域も拡大が進んでおり、どういった製品を、どういった顧客へ、どういった形式や契約で供給するかを含めて競う時代へ移りつつあるといえるだろう。
