HBAは10月9日、今年で13回目となる「HBAソリューションフォーラム」を札幌市内のホテルで開催した。今回は、北海道新聞社を主催、HBAを特別協賛として、「道新BIZ HBAソリューションフォーラム2026」として実施した。

「道新BIZ HBAソリューションフォーラム2026」は、北海道の企業や自治体が直面する課題に対し、AIやDX、ITを活用した解決策を紹介するビジネスイベント。「北海道に、いま求められるITを。」をテーマに、セミナーや展示を通じて、北海道におけるDX・AI・セキュリティを中心とした最新のITトレンドや具体的なソリューションを紹介し、明日から役立つヒントと出会いの場を提供した。

会場には、AIやロボティクス、再生可能エネルギーなど、同社が取り組むさまざまな技術やソリューションが展示された。中でも注目を集めたのが、クマなどの害獣を監視するドローンや、設備の巡視点検を自動化するロボット、生成AIを活用した業務支援サービスなどだ。本稿では、展示担当者への取材を基に、各ソリューションの特徴や活用方法、実用化に向けた取り組みを紹介する。

  • 「道新BIZ HBAソリューションフォーラム2026」の展示会会場

    「道新BIZ HBAソリューションフォーラム2026」の展示会会場

AIでクマを発見し、ハンターに位置情報を共有する害獣監視ドローン

近年、北海道ではクマの出没が相次ぎ、住民の安全確保や農業被害への対応が課題となっている。こうした問題への対策としてHBAが展示したのが、AIを活用した害獣監視ドローンだ。

このシステムは、ドローンに搭載したカメラで撮影した映像をAIが解析し、クマなどの動物を検知するもの。クマを発見すると、その位置情報を地図上に表示し、ドローンの操縦者や現場のハンターに知らせる仕組みだ。

展示では、小型ドローンがブース内をジグザグに飛行し、カメラ映像内のクマを検知すると停止して、その存在を知らせるデモンストレーションが行われた。実際の運用では、GPSによる位置情報を利用し、クマの検出位置を地図上に表示することを想定している。

  • 「害獣監視ドローン」会場では、害獣監視ドローンの飛行デモが行われていた

    「害獣監視ドローン」会場では、害獣監視ドローンの飛行デモが行われていた

特徴的なのは、ドローンの操縦者とハンターが、それぞれの端末でクマの位置を確認できる点だ。ハンターはスマートフォンのアプリを通じて、自分の現在位置とクマの位置関係を把握できる。

  • 左がドローン映像、右が害獣の位置情報

    左がドローン映像、右が害獣の位置情報

展示担当者は「現在もドローンで空撮しながら、オペレーターがハンターにクマの位置を伝えることは行われています。ただ、口頭で『前にいる』と伝えても、お互いの向きによって認識が異なることがあります」と説明する。

こうした課題に対し、位置情報を地図上で共有することで、ハンターがクマの方向を正確に把握できるようにする。

  • 位置情報は、ハンターのスマホとも共有

    位置情報は、ハンターのスマホとも共有

現在は実証段階にあり、三笠市のハンターと連携して検証を進めている。2026年秋には合同訓練で実際に利用し、2027年春からの運用開始を目指しているという。

自律走行とAIで設備点検を自動化する「νHSR」

工場やプラント、データセンターなどの設備保全では、人手不足や点検業務の効率化が課題となっている。HBAが展示した新たな巡視点検ロボット「νHSR」は、これまでのHSRから小型化を果たした新型機で、こうした課題に対応するため、自律走行技術とAIを組み合わせたソリューションだ。

νHSRは、あらかじめ作成した施設内のマップを基に、自ら位置を認識しながら目的地まで移動する。床面に誘導用のラインなどを設置する必要がなく、障害物があった場合には自動的に回避しながら走行できる。

  • 巡視点検ロボット「νHSR」

    巡視点検ロボット「νHSR」

点検地点に到着すると、搭載したカメラやマイクなどで設備の画像や音声を取得し、そのデータを解析して異常の有無を判断する。例えば、データセンターではサーバーラックのランプが正常に点灯・点滅しているかを確認できる。

  • データセンターのサーバーランプを読み取るデモ

    データセンターのサーバーランプを読み取るデモ

また、ロボットアームの先端にはカメラ以外の機器も搭載でき、サーモカメラによる温度異常の検知や、アナログメーターの数値読み取りなどにも対応する。

すでに北海道電力の火力発電所では、HSRの従来機が導入されている。そこでは、機械学習によるアナログメーターの針の認識や、サーモカメラを利用した温度異常の検知などに取り組んでいる。

展示担当者によると、ロボットによる点検結果の妥当性を検証するため、現在は人間とロボットが並行して点検を実施し、データを蓄積しているという。

  • 約2.2mの高さまでアームが伸びるので、高所のメーター読み取りも可能

    約2.2mの高さまでアームが伸びるので、高所のメーター読み取りも可能

今後、点検精度の検証を進めることで、さらなる自動化を目指す。また、カメラの代わりにロボットハンドを装着し、ボタン操作などの作業に対応させることも検討している。

三笠市や鹿追町と取り組むGX、地域の資源を新たなエネルギーに

HBAは、ITやAIだけでなく、地域資源を活用したGX(グリーントランスフォーメーション)にも取り組んでいる。その一例として展示されたのが、北海道鹿追町と連携して進める、ジャイアントミスカンサス(GM)のエネルギー利用だ。

GMは、イネ科の多年生植物で、成長が早く、バイオマス資源としての活用が期待されている。HBAは、以前からワーケーションや地域DXなどを通じて鹿追町と連携してきた。そうした関係の中で、町内で栽培されていたGMに着目し、エネルギー資源として利用できないか検討を始めたという。

現在は、収穫したGMを粉砕・圧縮してペレット状に加工し、ストーブの燃料として利用する取り組みを進めている。

  • 右側の植物がジャイアントミスカンサス。左下が、ジャイアントミスカンサスを原料とした、ペレット

    右側の植物がジャイアントミスカンサス。左下が、ジャイアントミスカンサスを原料とした、ペレット

展示担当者によると、現段階では、GMの栽培から燃料への加工、利用までの仕組みを構築し、事業として成立するかどうかを検証している段階だ。地域で生産した植物をエネルギー資源として活用できれば、化石燃料への依存度を低減するとともに、地域内で資源を循環させる新たな産業モデルにつながる可能性がある。

  • ペレットストーブ

    ペレットストーブ

また、今後、ジャイアントミスカンサス収穫および燃料化実証の中で、AIやロボットソリューションを段階的に導入する予定で、ドローンを活用した圃場(ほじょう)周辺の害獣監視や、収穫してハウス内に運ばれたGMを検出し、自動で特定箇所に集積することで、GMペレット化作業を無人で実施、自動化・効率化の技術導入の検証を進める。

さらにHBAは、2026年9月、三笠市と「ゼロカーボンを目指した地域エネルギー活用と観光DX、デジタル基盤・スマート農業の推進に関する包括連携協定」を締結した。

この協定により、三笠市が目指す「ゼロカーボンシティ」の実現と地域産業の活性化に向け、両者が有する資源や知見を生かし、GXとDXを一体的に推進していく計画だ。協定では、三笠市が進める石炭・木質バイオマスの燃焼による水素製造の取り組みに、ジャイアントミスカンサス製ペレットも活用し、得られた水素や熱、電力を公共施設や農業用ハウスなどで有効活用することを検討するという。

  • HBAは、三笠市が目指す「ゼロカーボンシティ」の実現と地域産業の活性化に向け、両者が有する資源や知見を生かし、GXとDXを一体的に推進している

    HBAは、三笠市が目指す「ゼロカーボンシティ」の実現と地域産業の活性化に向け、両者が有する資源や知見を生かし、GXとDXを一体的に推進している

  • 三笠市は古くから“炭鉱の町”としても知られる。地域にはまだ未採掘の石炭が豊富に埋蔵されているといい、石炭やバイオマスといった未利用資源の活用法が模索されている

    三笠市は古くから“炭鉱の町”としても知られる。地域にはまだ未採掘の石炭が豊富に埋蔵されているといい、石炭やバイオマスといった未利用資源の活用法が模索されている

社員の作業状況、スキル、ノウハウを可視化する「みんな de COLLABO」

企業の組織運営を支援するソリューションとして展示されたのが、「みんな de COLLABO」だ。

このサービスは、社員の作業状況、保有スキル、業務上の知識やノウハウという3つの情報を可視化し、部署を超えたコミュニケーションや情報共有を促進するものだ。

1つ目の機能は、社員の作業状況の可視化だ。社員が自分の業務状況を登録すると、ヒートマップ形式で表示され、誰が順調に作業を進めているのか、誰が困っているのかを一目で把握できる。

例えば、業務上の問題が発生し、「Javaに詳しい人に相談したい」と登録すると、AIがその内容を解析し、社内から適切なスキルを持つ社員を推薦する。推薦された社員には通知が送られ、部署を超えた問題解決につなげられる。

  • 社員の作業状況をリアルタイムで共有。社員の作業状況を色分けして表示する

    社員の作業状況をリアルタイムで共有。社員の作業状況を色分けして表示する

2つ目は、社員のスキルの可視化だ。本人による自己評価、他者による評価、過去の業務経歴、アプリ上での支援実績という4つの情報をAIが分析し、社員のスキルを評価する。これにより、必要なスキルを持つ人材を社内から検索できるほか、プロジェクトへの人材配置や組織変更などにも活用できる。

3つ目は、業務上のノウハウや知識の共有だ。社員が自身の知見を投稿し、他の社員がキーワードで検索できるほか、質問を投稿して有識者から回答を得ることも可能だ。

  • 業務上のノウハウや知識を共有する「コラボナレッジハブ」

    業務上のノウハウや知識を共有する「コラボナレッジハブ」

さらに、タスク管理機能も備えており、チーム内での作業依頼や進捗管理にも対応する。

HBAは、こうした機能を通じて、部門間の情報共有不足や業務ノウハウの属人化といった課題の解消を目指している。

会話を止めずに翻訳、透明ディスプレイを活用したリアルタイム翻訳サービス

外国人とのコミュニケーションを支援する技術として紹介されたのが、AIを活用したリアルタイム翻訳サービスだ。

一般的な翻訳システムでは、話者が発言を終えた後に翻訳処理が行われるため、会話にタイムラグが生じることがある。これに対し、HBAのサービスは、話者が発言している途中から翻訳を開始することで、会話の流れをできるだけ止めないことを重視している。

展示では、対面する2人の間に透明ディスプレイを設置し、双方の発言内容を相手の言語に翻訳して表示するデモンストレーションが行われた。

  • リアルタイム翻訳サービスのデモ。手前が英語、反対側には日本語を表示

    リアルタイム翻訳サービスのデモ。手前が英語、反対側には日本語を表示

日本人と外国人が向かい合って会話する場合、それぞれが自分の言語で話すだけで、相手側のディスプレイには翻訳された文章が表示される仕組みだ。

展示システムでは5カ国語に対応していたが、担当者によると、顧客の要望に応じて60カ国語、100カ国語といった多言語への対応も技術的には可能だという。

また、翻訳エンジンについては、特定のサービスに限定せず、用途や顧客の要望に応じて最適なものを選択する。

展示担当者は「翻訳のリアルタイム性と精度にはトレードオフの関係があります。精度を高めようとすると処理時間が長くなり、速度を優先すると精度が下がる場合があります。そのバランスを考えながら提供しています」と説明する。

主な用途としては、ホテルや自治体の窓口、企業の受付、対面商談、会議などを想定している。

現在は社内での実証や利用を進めており、海外企業との協業や採用活動など、外国人とのコミュニケーションが必要な場面で活用しているという。

生成AIによる資料作成や学習を支援する「CHATGEAR SECOND」

生成AIを活用した業務支援サービスとして展示されたのが、「CHATGEAR SECOND」だ。

同サービスは、一般的な生成AIチャットの機能に加え、キャラクター生成やプレゼンテーション資料の作成、学習支援、ニュース配信など、複数の機能を統合したものだ。

通常の生成AIチャットでは、ユーザーがプロンプトを入力し、その回答を得る形式が一般的だが、CHATGEAR SECONDでは、目的に応じた専用のユーザーインタフェースを用意することで、複雑な指示を入力しなくてもAIを活用できるようにしている。

例えば、キャラクター生成機能では、「50代の渋い男性」といった簡単な指示を入力するだけで、AIがキャラクター画像を生成する。さらに、服装や外見などを追加指示によって変更でき、作成したキャラクターに性格や話し方などを設定することも可能だ。

資料作成機能では、作成したい資料の概要や対象者、イメージなどを入力することで、AIが画像や説明文を含む資料を自動生成する。生成後も内容を修正でき、短時間でプレゼンテーション資料を作成する用途などを想定している。

また、特定のテーマについて情報を収集し、その内容を段階的に学習できる機能も備える。学習内容の理解度を数値化したり、文章だけでは理解しにくい内容を画像として生成したりすることもできる。

このほか、指定したテーマに関するニュースを定期的に収集・配信する機能も用意する。

展示担当者は「単純なLLMのチャットではなく、さまざまなユーザーインタフェースを用意することで、細かなプロンプトを入力しなくても使えるようにしています」と説明する。

企業の会議資料作成や自治体の業務支援など、幅広い用途を想定しており、既存システムとの連携や機能単位での提供も検討しているという。

AIとロボティクスを活用し、地域と企業の課題解決へ

今回の展示では、クマ対策や設備保全、地域資源のエネルギー利用といった現場の課題から、社内の人材活用、外国人とのコミュニケーション、生成AIによる業務効率化まで、幅広い分野のソリューションが紹介された。

これらに共通するのは、AIやロボティクスなどの先端技術を、具体的な業務課題の解決につなげようとしている点だ。

すでに実際の現場で活用されている技術がある一方、実証実験や開発段階にあるものも少なくない。今後は、現場での検証を通じて実用性や効果を高め、導入を拡大していくことが重要になる。

北海道を拠点とするHBAが、地域特有の課題に向き合いながら、AIやデジタル技術をどのように社会実装していくのか。今後の展開が注目される。