この半導体ニュースのまとめ

・MediaTekが2nmプロセス採用のスマホ向けSoC「Dimensity 9600 Pro」を発表
・CPUのマルチコア消費電力を前世代比61%削減し、シングルコア性能を最大17%向上
・デュアルNPU構成で最大300億パラメータのAIモデルやエージェント型AIに対応

MediaTekは9月15日、2nmプロセスを採用したフラッグシップスマートフォン(スマホ)向けSoC「Dimensity 9600 Pro」を発表した。

8個の高性能CPUコアで構成する「All Big Core」設計に加え、デュアルNPU、新GPU、画像信号プロセッサを統合。AI、ゲーム、画像・動画処理の性能を高めながら、消費電力を削減した。

最初のDimensity 9600 Pro搭載スマホは、2026年第3四半期中に登場する見通し。MediaTekは、フラッグシップ機能をより幅広いスマホへ展開する「Dimensity 9600M」も併せて発表した。

2nmプロセスとAll Big Core設計を採用

Dimensity 9600 ProのCPUは、2個の「C2-Ultra」と6個の「C2-Pro」で構成する2+3+3の8コア構成となる。

C2-Ultraの最大動作周波数は4.55GHz。C2-Proは3個が最大4.35GHz、残る3個が最大3.1GHzで動作する。省電力コアを組み合わせず、すべてを高性能CPUコアとすることで、高負荷なアプリケーションや複数アプリケーションの並行動作に対応する。

MediaTekによると、CPU性能は前世代比でシングルコアが最大17%、マルチコアが最大15%向上した。一方、マルチコア動作時の消費電力は61%削減したという。

2nmプロセスの採用によるトランジスタ性能と電力効率の向上に加え、処理負荷に応じてCPU、NPU、メモリなどのリソースを割り当てる「Dimensity Scheduling Engine」を改良。性能を必要とする処理へ演算資源を集中させながら、バックグラウンドで動作する複数のアプリケーションによる電力消費を抑える。

最大300億パラメータのAIモデルに対応

AI処理には、常時稼働する比較的軽量なAIと、大規模言語モデルなどの高負荷なAIを分担するデュアルNPU構成を採用した。

第2世代の「Super Efficient NPU」は、常時稼働型AIの消費電力を40%削減した。音声やセンサなどを継続的に処理し、必要な場面で上位のAI処理を起動する用途などを想定する。

高性能側の「NPU 1090」は、大規模言語モデルに入力したデータを事前処理するプリフィル性能を前世代比で51%高めた。1W当たりのトークン生成性能も55%向上させ、最大300億パラメータのAIモデルをスマホ上で実行できるとしている。

Dimensity 9600 Proは、スマホがユーザーからの指示へ応答するだけでなく、端末内のデータを分析して状況を把握し、必要な処理を自律的に実行するエージェント型AIを想定する。

例えば、端末内のスケジュール、メッセージ、位置情報、利用履歴などを組み合わせ、利用者の好みに応じた提案や先回りした支援を行う用途が考えられる。クラウドへすべての情報を送信せず、端末側でAI処理を行うことで、応答時間や通信量を抑えるとともに、プライバシーの確保にもつなげる。

CPUとNPUを連携させるAI演算基盤を強化

Dimensity 9600 Proには、CPUとNPUを連携させる「AI Computing Fusion Architecture」を採用した。

生成AIやエージェント型AIでは、ニューラルネットワークの推論だけでなく、データの前処理や後処理、アプリケーション制御、メモリ管理なども必要になる。NPUだけで処理を完結させるのではなく、CPUとNPUが役割を分担することで、AIアプリケーション全体の処理性能と電力効率を高める。

キャッシュ容量は34.5MBへ拡大した。モバイル向けメモリとしてLPDDR6、ストレージインタフェースとしてUFS 5.0にも初めて対応し、大規模なAIモデルや高解像度データを高速に読み書きできる基盤を整えた。

Dimensity Scheduling Engineは、CPU、NPU、メモリ、電力、ソフトウェアの動作を調整し、アプリケーションごとに必要なリソースを配分する。複数のアプリケーションをバックグラウンドで動かす場合も、処理性能とバッテリー駆動時間の両立を図る。

GPU性能を27%向上、最大185fpsに対応

グラフィックス処理には「G2-Ultra NX GPU」を搭載した。

GPUのピーク性能は前世代比で最大27%向上した一方、ピーク性能時の消費電力を24%削減した。レイトレーシング性能も18%高め、対応ゲームでは最大185fpsの描画を可能にするとしている。

GPUとAI演算を組み合わせる「MediaTek Dimensity Neural Graphics Architecture」も採用した。AIを利用した描画支援や画質向上によって、GPU単体の演算負荷を抑えながら、高解像度で滑らかなゲーム映像を実現する。

ゲーム向け最適化技術「MediaTek HyperEngine」は、処理負荷や通信、電力、発熱などを考慮してシステムを制御する。長時間のゲームプレイでもフレームレートの低下を抑え、性能と消費電力のバランスを維持する。

4K・240fpsの超スローモーション撮影に対応

画像・動画処理には、画像信号プロセッサ「Imagiq 1290 ISP」と「Dimensity AI Imaging Fusion Architecture」を搭載した。

ISPとNPUを連携させ、CMOSイメージセンサから取得したデータへAI処理を適用することで、動く被写体の認識、色調補正、ノイズ除去、動画撮影などの性能を高める。

動画機能では、NPUを活用した毎秒60フレームのモーションキャプチャに対応するほか、4K・240fpsのネイティブ直接出力による超スローモーション撮影をDimensityシリーズとして初めて実現した。

このほか、4K・60fpsの「AI True Color Tone」、4K・120fpsのシネマティックLog撮影、17EVのダイナミックレンジに対応する。明暗差の大きな場面や動きの速い被写体でも、写真や動画の画質を高められるとしている。

Dimensity 9600Mで採用範囲を拡大

MediaTekはDimensity 9600 Proに加え、フラッグシップクラスの機能をより幅広いスマホに提供する「Dimensity 9600M」も発表した。

Dimensity 9600Mは、MediaTekの高性能CPUと低消費電力技術を基盤に、Agentic AI EngineとDimensity Scheduling Engineを搭載する。

NPUによる常時認識やリアルタイムのAI画像処理に対応するほか、ISPを用いた高品質な撮影とリアルタイムトラッキング、MediaTek HyperEngineによる最大185fpsのゲーム描画、高速なモバイル接続機能を提供する。

MediaTekは、最上位のDimensity 9600 Proと、採用範囲を広げるDimensity 9600Mを組み合わせ、スマホ向けSoC市場における2nm製品の展開を進める。

スマホで動作するAIが、文章や画像の生成から、ユーザーの状況と端末内データを理解して処理を実行するエージェント型へ進化する中、SoCにはCPUやGPUの性能だけでなく、NPU、メモリ帯域、ストレージ、電力管理を含むシステム全体の最適化が求められる。

MediaTekはDimensity 9600 Proで、2nmプロセス、デュアルNPU、All Big Core CPU、AI対応GPUとISP、LPDDR6、UFS 5.0を統合し、スマホ上で高度なAIを低消費電力で実行する基盤を提供していくとしている。