蘭NXP Semiconductorは8月18日、MCX A5 MCUを発表した。これに関する説明会が9月8日、NXPジャパンより行われたのでその内容をご紹介したいと思う。
産業・IoTエッジ向けメインストリームMCU
MCXシリーズMCUは、旧Freescale SemiconductorのKinetis系と旧NXPのLPCシリーズを統合、というよりも事実上置き換える形でラインナップを増やしている製品群である(Photo01)。今回紹介されたMCX A5はその中でも民生や産業向けのメインストリーム向けという位置づけになる。
そのMCX A5の構成がこちら(Photo02)。
最大2MBのフラッシュと640KBのSRAMを搭載
240MHz駆動のCortex-M33にMPU/FPU/SIMD/DSP/TrustZoneのフルサポート構成で、最大2MB Flash/640KB SRAMに加え、外部メモリ用のFlexSPIまで搭載する重厚な構成である。
またPQC(Post-Quantum Cryptography:耐量子計算機暗号)のサポートもあるEdgeLock Secure Enclaveをハードウェアで搭載しているあたり、MCX Nシリーズと比較してもそれほど遜色がない。
10BASE-T1Sで産業用センサーの接続を低コスト化
そうしたMCX A5の中でも特徴的なのが「10BASE-T1S」のDigital PHYの搭載である。MCX A5はインダストリアル向けのプロトコルコンバータ的な用途を想定しているようで(Photo03)、ここに向けて10BASE-T1Sを搭載している(Photo04)。
10BASE-T1S、本来は自動車向けの規格として制定されたもので、LINを利用した接続(つまり低コストが優先の用途。性能はそこそこ)の置き換えを狙った規格だが、性能はそこそこで構わないから低コストで接続したいというインダストリアル向け(各種センサー類など)に、少しずつ採用が始まっている(Photo05)。
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Photo05:10BASE-T1S、セグメントの最大長は25m以上(なぜか最小セグメント長のみ規定)、ノードは最低8つ以上(これも最大ノード数の規定なし)という事で、例えば50mのセグメントにノードを16とかぶら下げる事も仕様上は可能である
MCX A5はまさにこれを狙った構成な訳だが、MCX A5が他の製品と異なるのはDigital PHYを内蔵している事だ(Photo06)。
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Photo06:中央がMCX A5の構成。PMDとのI/Fは、Open AllianceのTC14で定められたI/Fを利用する
従来の10BASE-T1Sの場合、RMII(Reduced Media-Independent Interface)とかMII(Media Independent Interface)経由で外付けのPHYを接続する(この場合MACはホスト側に搭載される)か、もうSPIなどの汎用I/Fの先にMACとPHYが丸ごと入ったトランシーバを接続するかという話になっていた。
PHYをすべて内蔵せずPMDを外付けとした理由
ところがMCX A5ではDigital PHYまでは全部内蔵し、PMD(Physical Medium Dependent)だけを外付けにする事でコストを抑える構成を取っている。どうせならSiP式にPMDまでパッケージに搭載すれば? と思わなくもないのだが、Digital PHYまでであればモノリシックなチップで構成できるので、無理にSiPにして価格を引き上げるより、PMDだけ外付けにする方がトータルコストでは有利と判断したようだ。
また現時点では10BASE-T1S対応PMDは品種が少ないが、今後は他社からも出てくることが考えられるので、他社製品を利用できる自由度を提供するという事も別にした理由だそうだ。NXPからはTJF1410BTKが10BASE-T1S PMDとして提供されており、セグメント長最大100m、最大ノード数32となっている。
PLCAとTopology Discoveryに対応
ところでPhoto04で言及されていたトポロジー検出機能だが、これは要するに10BASE-T1SのTopology Discovery機能の事である。10BASE-T1Sは10BASE5などと同じMulti-Drop方式となるが、10BASE5と異なりCDMA/CD以外にPLCA(Physical Layer Collision Avoidance)という方式が実装されている。これはCANなどに似ており、各ノードに順番に送信順が割り当てられる仕組みだが、この際に全ノードが自分のID(MACアドレスとはまた別の、1つの10BASE-T1Sセグメント内での番号)を持つ必要がある。初期の10BASE-T1Sはこれを静的に割り振る(つまり各ノードが自分のIDを固定値として持つ)仕組みだったが、これを動的に割り振る仕組みがTopology Discoveryである。MCX A5ではこのTopology Discoveryの機能を搭載している。
産業機器に求められるセキュリティと長期供給
話をMCX A5に戻すと、MCX A5では開発から保守までの長期サイクルが提供されているのが特徴とされる(Photo07)。Photo08が改めてまとめたMCX A5の特徴であり、様々な産業用途向けなどに最適と説明されている(Photo09)。
なお、MCX A5はすでにサンプル出荷を開始しているが、量産開始時期や価格などは現時点では未公開である。






