
日産・株主総会での取締役選任議案で候補者だった永井素夫氏が否決された。候補者の適否を株主にアドバイスする専門コンサル会社が『メイン銀行のみずほグループ出身者であり非適格だ』と否決を推奨していた通りの結果になった。
ひと昔前の「言いなりシャンシャン総会」から訣別し、いよいよガバナンス強化の新時代に入った象徴的事件かも知れない。
しかし、ガバナンス強化もまだ道半ばだ、と感じる。日産とメイン行・日本興業銀行(現在はみずほ銀行)とは永らく経営の苦楽を共にして来た戦友である。日産事情に詳しい助っ人をみずほから送ることが日産経営にとって悪なのか。銀行から親密企業に取締役を派遣するケースは現在でもゴマンとある。
会社実態に疎い人材と詳しい人材と、どちらが会社に貢献出来るのか。出身先との癒着がなければ、むしろ会社に貢献出来る人材ではないのか。
「生命保険会社から銀行等への出向者が派遣先の秘密情報を生保本社に流していた」多くの事件が先般、報道された。従前の慣習では、出向先ではなく出身先本社のために仕事をすることが前提だったのだろう。以前、このような風景がわが国のそこかしこで散見出来た。
銀行人事で他社に取締役として派遣された役員クラスにすら、そういう慣習が一部あったのも事実である。しかし今や、係員クラスの若手ですら会社情報の外部漏洩はガバナンス&コンプライアンス上、ルール違反だ。
いわんや、他社に派遣された取締役が古巣の職場のために働く、など許容される訳がない。ガバナンス&コンプラ上、そもそも、これらの慣習はルール違反行為だったのだ。
永井氏はみずほを去って、既に7年間にわたり日産の取締役だった。昨今のガバナンスルールの進化を熟知し、メイン銀行との距離には十分配慮していたはずだ。
永井氏がみずほ出身だからと言って、みずほの方を向いてみずほと癒着して日産取締役の仕事をしていたのか否か、この辺りも株主やアドバイス会社はよくよく見極めた上で議案賛否の判断をすべきだろう。
その候補者の能力、適材度、派遣先での貢献可能性、等々を見極めずに、メイン出身だからと一律自動的に否決判断しているようでは、「社外役員比率は何パーセントか、女性役員がいるのか否か」とかだけの単純判断と全く同列で、仏作って魂入れずの「恰好だけガバナンス」に堕してしまうだろう。
ガバナンス強化の更なる進化が必要だ。
日産に12年もいたとか、みずほから候補者が2人もいたとか、日産新経営陣とルノーとの交信が薄いとかの背景要素もあったのだろうが、永井氏、私には被害者に見える。