Cloudflare Japanは8月27日、AIエージェント時代を見据えたインターネットの将来像と最新製品群を説明した。AIが主役となる「Agentic Internet」の到来を見据え、インフラ、コンテンツ、セキュリティの各分野で新たな取り組みを進めているという。

Cloudflare Japan、国内事業が急成長 - パートナー経由案件も拡大

はじめに登壇した、Cloudflare Japan 日本地域統括バイスプレジデント兼日本代表の松本紗代子氏は「直近でお客さまと話す内容はAIを使うことを前提に、どのようにガバナンスを効かせていくのか、ということに軸が移行している」と述べた。

  • Cloudflare Japan 日本地域統括バイスプレジデント兼日本代表の松本紗代子氏

    Cloudflare Japan 日本地域統括バイスプレジデント兼日本代表の松本紗代子氏

そのうえで、同氏は「単体ソリューションではなく、プラットフォーム全体価値の提供に注力し、企業が安心して使えるエンタープライズビジネスにフォーカスしている。日本市場の特性をふまえ、SI/パートナー主導の体制を重視し、パートナービジネスを推進している」と話す。

日本法人における直近のビジネス概況について説明。2026年第2四半期(4月~6月)における日本のビジネス実績は、年間契約高が対前年比120%成長し、契約案件数は倍増。そのうち新規顧客の契約高が95%、新規案件数は150%、パートナー経由の契約高は257%、パートナー経由案件数は151%にそれぞれ成長し、急速な成長を遂げているという。

AIエージェントの普及でインターネット構造が変化

続いて、Cloudflare Japan フィールドCTO(最高技術責任者)の乙部幸一郎氏が「Agentic Internetの幕開け」と題し、AIエージェント時代のインフラ像を説明した。

まず、同氏は「生成AIの利用ユーザー数が10億人に達するまでの期間は約2年半と、インターネットやSNS、スマートフォンなど過去の主要なデジタルプラットフォームと比較して極めて速いペースで普及している。これに伴い、インターネットの主役は人間からAIエージェントへと移行しつつある。エージェントは24時間365日休むことなく、与えられた目標に対して膨大なデータを処理しながら、自律的にタスクを実行する特徴を持つ」との見解を示す。

  • Cloudflare Japan フィールドCTO(最高技術責任者)の乙部幸一郎氏

    Cloudflare Japan フィールドCTO(最高技術責任者)の乙部幸一郎氏

Cloudflareが提供する分析レポート「Cloudflare Radar」の公開データによると、人間向けに作成された通常のHTMLコンテンツへのアクセスのうち、すでに約6割がボットによるものとなっている。特に2025年6月~2026年5月末までの1年間において、同社ネットワークにおけるAIエージェントの通信量は1700%以上急増しているという。

また、AIによるコーディングの浸透を背景に、新規Webサイトの公開数は前年比約34%増、iOSアプリは68%増、GitHubのプルリクエストは153%増と、従来では考えられないペースでデジタルコンテンツが急増しているとのことだ。

セキュリティ面でも、脆弱性が発見されてから攻撃に悪用されるまでの期間が、過去の数ヶ月から1年以上だったものから、直近1年間では24~48時間以内にまで短縮されており、サイバー攻撃の自動化・高速化が顕著になっている。

同氏は「この変化は一般ユーザーの行動やトラフィック構造にも影響を与えており、過去2年間で主要メディアサイトにおける人間由来のトラフィックは平均4割~6割、最大で8割以上減少している。小売、ITサービス、金融などの他分野でも人間からのトラフィックは3割~4割減少しており、AIエージェントが情報の探索や要約を代替することで、従来の検索結果上位へのランク付けやバナー広告、広告収入に依存したWebビジネスモデルは変革を迫られている」と指摘。

  • 業界を問わず、サイトへの人間からのトラフィック量は減少している

    業界を問わず、サイトへの人間からのトラフィック量は減少している

Cloudflare Workersが支えるAIエージェント実行基盤

人間用に設計された既存のWebサイト機能やツールはAIエージェントにとって非効率であり、今後はエージェントが稼働するためのインフラとエージェントがアクセスするコンテンツ、そして安全に利用するためのセキュリティ基盤が求められているという。そのため、同社ではこれらの要素に対応する基盤技術を提供している。

  • Agentic Internetのためのクラウド基盤の要素

    Agentic Internetのためのクラウド基盤の要素

乙部氏は「約10億人のナレッジワーカーが各自1台のAIエージェントを稼働させる場合、稼働用の物理CPUが新たに約10億個必要になると予測されるが、世界のサーバ用CPUの年間生産台数は3000万~4000万台にとどまるため、既存のPCやコンテナ環境をそのままエージェントに提供することは物理的に困難。また、AIエージェントはタスクごとに動的にアプリケーションを生成・検証・実行するため、立ち上げに時間を要する従来の固定的なOSやコンテナ環境は作業に適さない」との見立てだ。

こうした課題に対して、Cloudflareのエッジネットワーク上でコードを実行できるサーバレスコンピューティングサービス「Cloudflare Workers」の基盤技術である「Isolate(アイソレート)」技術が有効に作用するという。

アイソレートは、Googleが開発したV8(JavaScriptエンジン)をベースとした軽量環境。コンテナ環境のような重いランタイムを必要とせず、起動時間が短いうえに、ブラウザのタブを立ち上げる感覚で環境を高速・水平展開し、高いスケーラビリティという特徴を持つ。

  • 「Isolate(アイソレート)」技術の概要

    「Isolate(アイソレート)」技術の概要

Cloudflareは、2026年8月の「Agent Week」において、エージェントが稼働するためのインフラとして、必要な機能やツールを発表している。「KiteSurf」は、AIエージェントが求めるテキストデータの取得に特化し、処理のオーバーヘッドや不要な情報を排除した超軽量・専用ブラウザとなる。

また「@cloudflare/computer」は、OSに依存するツールを動かすコンテナ環境において、AIエージェントが相互にアクセス可能な仮想ファイルシステムを提供する技術だ。これらの基盤は、AnthropicやLovable、FigmaといったAI企業やプロジェクトの稼働環境としてすでに広く採用されているという。

  • エージェントが稼働するためのインフラとして、必要な機能やツール

    エージェントが稼働するためのインフラとして、必要な機能やツール

AIエージェント向けコンテンツに求められる4つの要件

一方、エージェントがアクセスするコンテンツでは「Readable(読み取り可能)」「Discoverable(見つけやすい)」「Callable(呼び出しやすい)」「Payable(決済可能)」の4つの要件が求められる。

  • 人間とエージェントではWebサイトの要件も変化している

    人間とエージェントではWebサイトの要件も変化している

ReadableはHTMLやCSSといった人間向けの記述から、不要なデザインやノイズを排してエージェントが読みやすいMarkdownなどの構造化データで提供する要件となり、同社ではHTMLをMarkdownに自動変換する「Markdown for Agent」を提供している。

Discoverableでは「AI Search」「AEO」など、AI検索エンジンから自社サイトがどう見えているかをスコア化して可視化する機能などを提供。Callableは、画面操作を伴うことなくAPIやMCP(Model Context Protocol)を介して直接機能を呼び出し、ブラウザ内でMCPを直接呼び出して実行できる「WebMCP」の提供を開始した。

Payableは、エージェント自身がコンテンツの使用料を支払える「Wallets」を導入したほか、コンテンツ制作者がエージェント経由のアクセスから収益を得るための「Monetization Gateway」も提供している。

  • 4つの要件の概要

    4つの要件の概要

標準化とセキュリティ強化でエージェント活用を支援

これらの機能を安全かつ標準的に展開するため、Cloudflareは複数の国際的な技術標準や決済プロトコルを推進している。他サイトで認証された人間の真正性データをプライバシーを保護しつつクロスサイトで再利用する「Private Access Token」をGoogleなどと連携して推進することに加え、CoinbaseやStripeとともにHTTPステータスコードを利用して即時マイクロペイメントを実行可能にするプロトコル「x402」の普及に取り組んでいる。

さらに、Visaと共同開発した「Trusted Agent Protocol」は、HTTPメッセージシグネチャーをベースに、正規ボットの認証・決済の意図を確認するトランザクション処理を実現するという。

また、ボット管理においても技術のアップデートが行われている。AIクローラーのアクセス制御では、学習用途、エージェントによる代理アクセス、検索目的など、クローラーの意図や用途に応じて個別にアクセス権限の設定を可能としている。

加えて、新たに発表された高度な行動検証エンジン「Precursor」は、コンテンツ表示時に埋め込む軽量なJavaScriptにより、セッション全体にわたってマウスの軌跡やキーボードの入力といったユーザーの振る舞いを継続的に監視・分析し、人間を模倣するボットを高い精度で自動識別するとのこと。

  • 「Precursor」の概要

    「Precursor」の概要

また、AIクローラーのアクセス状況やリファラーの可視化分析を行うことができるダッシュボードの「Attribution Overview」や「Agent Resilience」機能により、サイトのエージェント向け最適化スコアを確認することも可能だ。

OpenAIやAnthropicとの連携でエージェント基盤を拡大

エージェンティックインターネットのインフラ標準化に向けて、CloudflareはグローバルAI企業との強力なパートナーシップを展開している。OpenAIとは、従来のページランクによる静的な検索モデルから脱却し、AIエージェントが必要とするリアルタイムな情報を検索・取得するための新構想「Open Index」の共同研究を開始した。

Open Indexは、対象情報に更新があった際、プッシュ型でAIエージェントにリアルタイムで通知を配信する検索インデックスの仕組みを構築することを目指している。

また、OpenAIが発表したサイバー防御側を支援するために設計されたAIセキュリティイニシアチブ・専用プログラム「Daybreak」でも協力する。フロンティアモデル「GPT-5.6 Cyber」など高度なサイバーセキュリティ向け対話モデルを活用し、外部システムに対するリアルタイムな脆弱性スキャンやレッドチーミングなどの防衛・検証サービスを共同で構築する取り組みも進めている。

他方、Anthropicとの提携においては、同社が提唱するMCP(Model Context Protocol)のサーバサポートを推進しているほか、AI自律開発ツール「Claude Code」や「Managed Agent」の初期検証メンバーとして、インターネット上で他社に先駆けた技術検証やブログによる知見の公開を進めており、今後も新しい共同検証を計画している。