
参入者が急増する時代に戦い方そのものを変える
当社はスマートフォンなどに向けたオンラインゲームの開発を主力事業とする企業です。特に敵が画面いっぱいに弾を発射する難易度の高い「弾幕シューティングゲーム」では先駆者として評価を得ています。
弾幕シューティングは長年蓄積してきた独自の開発ノウハウがあって初めて成立するもので、そこが当社の強みになっています。日本でも人気がありますが、シューティングゲームは「昔流行ったもの」というイメージを持たれている方も多いのに対し、海外では先入観なく楽しんでもらえたり、昔のものがかっこいいという「ニューレトロ」の感覚で受け入れられています。
私は2025年に社長に就任しましたが、今後の当社を考えるにあたって立ち止まって考えた結果、新しい道を切り開いていかなければいけないということに思い至りました。
その背景にあるのは、業界の構造そのものが変わってきたことです。大手だけでなく、小規模なチームや個人までが世界に向けて作品を出せるようになり、一方で桁の違う資本を投じられるプレイヤーも現れました。開発の環境も、働き方も、国や規模によって大きく異なる時代です。同じ土俵で同じ戦い方を続けていては、難しくなっていくと感じています。
だからこそ、戦う場所の方を変える必要があると考えました。資本の量で決着がつく勝負ではなく、資本では買えないものを軸にする。当社にとってそれは、長年積み上げてきた弾幕シューティングの開発ノウハウであり、そこから生まれたキャラクターや世界観です。作り方は模倣できても、積み重ねた時間そのものは模倣できません。
今までのケイブは、ゲームを作り、販売する会社でした。それを今、3つの方針を立てて変えていこうとしています。
第1にケイブが手掛けてきたトラディショナルなゲームを磨き直すリファインプロジェクトを推進し、新しいIP(知的財産)として展開すること、第2にこれまで手掛けてこなかったような仕事に、外部との連携も活用しながら果敢に挑戦していくこと、第3に、新しい技術も取り入れて、試す回数そのものを増やしていくことです。AI(人工知能)は作品を代わりにつくるものではなく、これまで時間の制約で試せなかったアイデアを、実際に形にして検証するためのものだと考えています。
社員の意識も変わりつつあります。今までは国内を意識してゲームをつくってきましたが、今は海外に向けてつくることを意識しています。当社が主力とするシューティングゲームは直感的なものですから、海外でも遊び方は変わりません。
今はユーザー同士がオンラインでつながり、自分のゲーム技術を競う形になっていますから、そこにIPとグローバルが掛け合わさることで、当社の現場の方向性も変わってきています。
元々はゲームをつくるためにキャラクターや世界観をつくっていましたが、今はそのキャラクターや世界観を、ゲーム、漫画、アニメ、動画、小説など、何で発信していくかを考えるという形で思考を変えています。
日本政府は2033年までに、日本発コンテンツの海外市場規模を20兆円とする目標を掲げています。当社の将来に向けた方針も同じ方向を向いていると考えており、IPをつくり、国内外で発信していくことに軸を置きたいと思います。
ゲームやアニメは、その国の文化を反映したものだと思います。日本が持つ精神性や人との信頼関係といった日本らしさは、海外との大きな差別化につながるでしょうし、海外の方々からの評価につながると思います。当社も日本の文化についてIPを通じて伝えていける会社になれればと考えています。
社内に対して伝えているのは、ユーザーに「感動」をお届けするのは大前提として、その先に行こうということです。私が生み出したいのは「オポチュニティ」(機会)です。ゲームは、人が何かを始めるきっかけになれるものだと思います。
エンターテインメントは、人の心を震わせ、人生に色を灯す「火種」となり得る。「志で心を照らし、才で現実を動かす」 感動の向こう側にある機会を生むこと、それがこの言葉の意味するところです。他社との業務・資本提携などの協力も得ながら、より大きな渦を巻き起こしていきたいと考えています。
PROFILE
たかはし・ゆうき 1984年5月生まれ。大阪府出身。不動産会社などを経て、2019年AKS(現Vernalossom)入社、同年ケイブ取締役、23年取締役COO、25年8月代表取締役社長CEO。