国立天文台と茨城大学は、日本の電波望遠鏡ネットワーク「日本VLBI観測網」(JVN)を用いて超新星「SN 2024iss」を約1年間観測し、爆発10日後と23日後に検出した電波放射を分析。その結果、爆発に伴う衝撃波の伝播速度が標準的な理論予想よりも速く、親星近傍に濃いガスが存在していた可能性が示され、親星からのガス放出が爆発直前に複雑に変化していたことを8月18日に共同発表した。

  • JVNによって測定された超新星「SN 2024iss」の電波光度変化(青丸が検出、下三角は非検出の上限値)と、過去に詳細に観測された他のIIb型超新星との比較。SN 2024issは最大電波光度こそ同等であるものの、より早い段階で電波が明るくなっていることが示されている (C) 2026- Iwata et al. (出所:国立天文台Webサイト)

    JVNによって測定された超新星「SN 2024iss」の電波光度変化(青丸が検出、下三角は非検出の上限値)と、過去に詳細に観測された他のIIb型超新星との比較。SN 2024issは最大電波光度こそ同等であるものの、より早い段階で電波が明るくなっていることが示されている (C) 2026- Iwata et al. (出所:国立天文台Webサイト)

同成果は、国立天文台 水沢VLBI観測所の岩田悠平助教、山口大学大学院 創成科学研究科/時間学研究所の藤澤健太教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する英文論文誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。

超新星爆発は、宇宙で最も劇的な天体現象の1つだ。その発生メカニズムによる分類とは別に、爆発時の光のスペクトル分析において水素の輝線が観測されない「I型」と、観測される「II型」に大別される。II型の一種である「IIb型」は、I型とII型の中間的な性質を持つのが特徴だ。爆発初期にはわずかながら水素輝線が確認されるものの、時間の経過に伴って消失し、代わりにヘリウムの輝線が顕著となって、最終的にはIb型のようなスペクトルに変化する。

IIb型は、親星が爆発前に外層の水素を大量に放出して失っていたと考えられている。その放出されたガスは星の周囲に広がり、「星周物質」を形成する。爆発によって高速で放出された物質がこの星周物質に衝突すると、電波が放射される。この電波の明るさの時間変化を調べることで、爆発前における親星のガス放出履歴を推測することが可能だ。

そこで研究チームはJVNでの観測として、茨城大の「日立32m電波望遠鏡」と山口大学の「山口32m電波望遠鏡」を組み合わせ、2024年5月12日に地球から約4,600万光年離れた銀河で発見されたIIb型超新星「SN 2024iss」に対し、爆発3日後から366日後にかけて計9回の電波観測を実施した。

観測データの解析により、爆発10日後と23日後に電波放射が検出され、それ以降は検出されなかったことが判明した。この結果から、SN 2024issは他のIIb型超新星と比較して、爆発後の比較的早い段階でピークに達して明るくなったことが確認された。

さらに、電波の明るさとそのピーク時間から衝撃波の伝播速度が算出された。その結果、衝撃波速度は、親星から一定の割合でガスが放出されたとする理論モデルの予測値より約2倍速いことが明らかとなった。この乖離は、親星のすぐ近傍に高密度のガスが存在し、衝撃波がそこを通過する際に伝播の挙動が影響を受けたと考えれば説明可能とされる。

また、別途行われたX線観測でも親星近傍の高密度ガスの存在が支持されており、これらの知見を総合すると、SN 2024issの親星では爆発直前からのガス放出が一時的に急増していた可能性が示された。

なお、研究チームによる今回と同じ手法によるII型超新星の電波検出は、今回が2例目の報告となる。研究チームは今後も、さまざまなタイプの超新星を追観測すると同時に、VLBIならではの高い空間分解能を活かし、爆発による星の膨張を直接捉えたいとしている。