楽天グループ最大級のビジネスイベント「Rakuten AI Optimism」が8月5日、パシフィコ横浜で開幕。オープニングキーノートに登壇した代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、AIを軸とした今後の同社成長戦略を説明した。
同社は「世界で最もAIを活用するプラットフォーム」を目指すとし、自社の「Rakuten AI」を軸に、ECサイト「楽天市場」をはじめとした各種サービスを横断したAI活用を進めている。
キーノートでは、楽天市場で“人間味のあるAIアバター”がユーザーの製品選びを手伝う「AI店長」も披露された。イベントは2026年8月7日まで開催される。
AIを楽天エコシステムで横断活用する「スーパーエージェント」
三木谷氏はキーノートで、現在のAI活用が急速な勢いで進化していることに言及。半導体の世界で知られる「ムーアの法則」(ゴードン・ムーアによる、集積回路上のトランジスタ数が約18カ月~24カ月で2倍になるという経験則)よりも速い、7カ月ごとにAIエージェントの性能が倍増しているとした。
加えて、難易度の高いタスクでも「人間の75%~78%ぐらい」までできるようになっており、実務の遂行能力においても人間に近づきつつあると説明。「複雑な作業はもうAIができるようになってきたということをベースに我々も、皆さんも考えなくてはいけない。楽天グループは総力をAIの活用、開発に注いでいる」と話した。
また、同社がAI活用で優位に立てる理由として、三木谷氏は「圧倒的なデータ量」「独自の日本語言語モデル」「楽天エコシステムという実装環境」を挙げた。
楽天グループでは毎月5,000万人規模のユーザーがショッピングや取引などの経済活動を行っており、3兆を超える購買・行動ログなどのデータを保有している。ショッピング、検索、トラベル、金融など70を超えるサービスをAIが横断して動き、ユーザーの興味関心に応じた提案や商品の比較検討、購入までを一気通貫で支援できる点が他社との違いだとした。2025年度のAIによる利益創出額はグループ全体で255億円に達したと話した。
楽天は事業ごとに分散していたAI機能を統合プラットフォーム上で連携させ、より高度な文脈理解と提案能力を持つ「スーパーエージェント」を展開していくとする。
独自AIモデル開発で運用コスト減と品質の向上目指す
このほか、楽天が独自のAIモデル開発に取り組んでいる点も強みとした。楽天が開発するモデルは現在4系統。「Rakuten AI 7B」、約470億パラメータの「Rakuten AI 2.0」、その軽量版「Rakuten AI 2.0 mini」、そして最上位となる約7,000億パラメータの「Rakuten AI 3.0」だ。
3.0は経済産業省とNEDOが推進する「GENIAC」プロジェクトの一環として開発され、2026年3月にオープンウェイトモデルとして公開されている。三木谷氏はAIの自社開発により、外部に処理を委託するより運用コストを抑えられる点、高い日本語能力を得られている点を利点として挙げた。
ただしすべてを自社AIモデルで賄うのではなく、基本戦略はOpenAIやGoogle、Anthropic、Microsoftなどによる外部モデルと独自AIを必要に応じて組み合わせるハイブリッドとなる。「コストを下げるだけでなく、よりサービスの品質を上げていく」ことを狙うという。
店長をアバター化。24時間365日接客する「AI店長」を開発中
キーノートで三木谷氏は、AIアバターがユーザーの商品選びを手伝う「AI店長」のデモンストレーションを披露した。これは楽天市場の出店店舗向けに開発中のもので、同社が7月7日に開催した楽天市場におけるAI活用説明会でも存在が言及されていた。
楽天市場に出店している店長の知識や接客、プロファイルなどを反映したAI店長は、ユーザーからの問い合わせ対応、商品の比較提案、購入支援などを行う予定。
「最終的には本当のリアルな人がやるのがベストだが、現実的には24時間365日、何万という処理はできない。その人のプロファイルを読み込んだうえで、AI店長を各店舗が持つということをやっていきたい」(三木谷氏)。
AI店長のデモンストレーションでは、三木谷氏が命名したAI店長「イチコ」が、ユーザーからの肌の悩みに自然言語で回答し、おすすめの化粧水を複数提案、購入までを完了させる様子が披露された。なお「イチコ」の名前は“楽天市場”のイチから取られたという。







