【金融国際派の独り言】長門正貢・元日本郵政社長【 課題解決のヒントになった本たち】

人並みに本を読んで来た。記憶に残る本としては、人生哲学に大きく影響した古典名作や美文の名著もあるが、人生の様々な局面での諸課題にヒントをくれた本もある。個人個人でそれらは異なるでしょうが、私の場合は……(著者尊称略)。

 清水幾太郎『論文の書き方』:中学時代後半から書く機会が増えた。How toモノと思って読んだのだが、全く違った。プロ文筆家が文章を書く際の裂帛の気迫と規律、思考を深める工夫、適格表現のための知恵、文体への考え方。目から鱗だった。

 池田潔『自由と規律』:高校時代に読んだ英国パブリックスクール体験記。主に骨太の教育姿勢が紹介されるが、個人的には英語学習法に感銘を受けた。「1カ月でマスターする英会話」とかは嘘っぱち、語学習得はそんな甘いもんじゃない、鍛えて鍛えて鍛えてやっとモノになるんだ、と正論を真正面から主張。

 英語に関しては、当時・同時通訳第一人者・村松増美『私も英語が話せなかった』や、船橋洋一『あえて英語公用語論』、三木谷浩史『たかが英語!』も記憶に残る。

 三島由紀夫『葉隠入門』:大組織での立ち位置をしっかり掴みきれていない社会人10年生頃に遭遇。

「武士道とは死ぬ事と見つけたり」で有名だが、同時に葉隠は主君に藩士がいかに立派に仕えるか、パワー溢れる行動哲学も説いている。三島の深い思索と分析の文章がいちいち心に刺さり、以後、ビジネス生活が格段に安定して行った。

 盛田昭夫・石原慎太郎共著『「NO」と言える日本』:日米貿易摩擦問題やプラザ合意等で米国から押しまくられていた中、『日本は唯々諾々と従うだけ。情けない!』と日本に活を入れた。同感だった。

 ソニー物語『Made in Japan』を日米同時出版したり、ソニーの盛田昭夫氏は発信力が高かった。特急・海外出張直後の早朝テニスで倒れ、内定していた財界トップ職をふいにしたのは本当に残念だった。

 大前研一『世界が見える 日本が見える』:経済活動において国境はもはや意味がないボーダーレス化時代だ。このグローバル化の時代に企業や個人はどう対応すべきか、どう新しい国創りをして行くべきか、との主張に、思わず膝を叩いていた。

 野口悠紀雄『「超」整理法』:情報洪水を治める新手法を紹介。この本の登場までは梅棹忠夫の『知的生産の技術』が知的活動のバイブルだった。「分類整理」という従来の考えを覆し「時間軸検索」という全く新しい方法論を提案。革命的発想に驚嘆した。 

 相応に売れた本たちでした。多くの他読者のヒントにもなったのでしょう。