「地政学リスクに強いエネルギー需給構造を」 JERA・奥田久栄が目指す『レジリエンス経営』

当面の現実的な対応を 

「LNG(液化天然ガス)のスポット調達量をできるだけ減らすことが国民負担、お客様の負担軽減のカギになる。石炭火力は地政学リスクに強く、平時と有事で使い分けながら活用していく。緊急時には石炭火力をフル稼働して、余分なLNGを使うのを止めようと考えている」 

 こう語るのは、JERA社長の奥田久栄氏。 

【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅

 中東情勢の混乱が続く中、JERAは今後の電気料金上昇の抑制に向けて、石炭火力発電を有事に積極活用していく方針を示した。早ければ、今夏から電力小売事業者向けに長期PPA(電力購入契約)の販売を検討している。 

 石炭はLNGに比べて、燃焼時のCO2(二酸化炭素)排出量が多い。環境省の資料によると、石炭を10とすると、原油が7.5、LNGは5.5。つまり、石炭はLNGの倍近いCO2を排出することになり、昨今の脱炭素化の動きを受け、エネルギー各社は石炭火力からLNG火力に切り替えてきた。 

 一方、石炭火力はLNG火力よりも安価だ。今春以降の中東情勢の緊迫化を受けても、石炭燃料の価格は原油やLNGほど上昇していない。このため、JERAは安価な石炭火力を積極活用することで、電力価格を抑えようとしているのだ。 

 トランプ米政権の誕生やウクライナや中東での戦争を受け、現在は世界中で脱炭素に向けた動きに急ブレーキがかかっている。とはいえ、中長期的な脱炭素や低炭素化への移行は必要であるが、奥田氏は「前提として、石炭からアンモニアへの燃料転換やCCS(CO2の回収・貯留)活用による低炭素化は着実に進めていく」と強調する。 

 中長期的な脱炭素への移行と足元の安定供給の両立をどのように実現していくか―─。 

 全てのエネルギー企業に課された問いであるが、今回、JERAは当面の現実的な対応として、石炭火力発電の柔軟な活用を決めた。 

 具体的には電力需要の少ない春や秋などの平時は石炭火力の出力を抑制して、CO2排出量を軽減。夏や冬などを含めた有事には石炭火力を活用して、LNGのスポット調達量を削減。企業や一般家庭の電気料金の負担を軽減させる考え。 

 JERAの試算によると、仮に石炭火力を使用せず、LNG火力のみで有事に対応する場合、LNG火力による日本全体での総発電コストは年間約16兆円。LNG火力と石炭火力を併用すれば13兆円で、3兆円ほどコストが削減できるという。 

 奥田氏は「低炭素化を進めながら、地政学リスクに強い石炭火力という選択肢を残すことで、今後もお客様の負担軽減につなげる」とした上で、「資源小国・日本としては石炭火力発電を柔軟に活用していくべき」と語る。 

 

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