「パソコンではなくて、コンピューティングをどう皆さんへお届けしていくか」――NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長の檜山太郎氏は、法人向けイベント「NECパーソナルコンピュータ AI×PC DAY 2026」の基調講演でこう語った。

檜山氏は「PCからコンピューティングへ」をテーマに、AI技術の進化スピードが速く、AIに強い需要があるなかでPCの定義そのものが大きく変化していくと市況を紹介。NECパーソナルコンピュータ(NECPC)はデバイスだけでなく、ソフトやサポート体制も組み込んだ「コンピューティング」ソリューションにより、ユーザーの潜在的な課題も解決するとした。

  • NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長の檜山太郎氏

    NECパーソナルコンピュータ 代表取締役 執行役員社長の檜山太郎氏

道具だったPCは過去の話。いまは“コンピューティング”で課題解決

NECは2025年4月に法人向け営業部隊をNECパーソナルコンピュータに統合し、生産からサポートまでの一元体制を構築している。檜山氏は一貫体制のメリットを、営業が聞いた顧客の課題を、いち早く技術や生産が取り込んで対策できる点だとした。

また従来はPCを「道具」とみなし機能の良さを顧客に紹介していたが、現在は顧客がまだ気が付いていない潜在的な課題に踏み込み、デバイスではなく“コンピューティング”というリソースを課題解決のために提供する提案スタイルへ移行する局面を迎えていると話した。

  • NECパーソナルコンピュータは2025年4月にPC生産から販売、サポートまでを一貫して手掛ける体制となった(従来はNECが法人向けPCの販売を担当していた)

    NECパーソナルコンピュータは2025年4月にPC生産から販売、サポートまでを一貫して手掛ける体制となった(従来はNECが法人向けPCの販売を担当していた)

2030年までにはAI関連投資の75%がデータセンターでの「学習」から、エッジデバイスでの「推論」にシフトすると予測されているという。レノボがIDCに委託したグローバルCIO調査では2026年にAIを組織に導入、あるいは試験運用していると答えた企業が全体の7割近くに上ったという。導入した企業に話を聞くと、導入費用の3倍ほどの収益が得られているとし、8割ほどの企業がAI投資によりプラス効果が得られていると回答した。

しかし世界と比べ、日本は多くのデータを保有しながらその活用が遅れていると檜山氏。世界の活用法を学び、効果が出ているものを日本に導入して役立てられるのではと同社メンバーで話をしていると述べた。

  • 国内のPC出荷とAIシステム投資の市場予測

    国内のPC出荷とAIシステム投資の市場予測

  • レノボがIDCに委託したグローバルCIO調査「CIO Playbook」の調査結果

    レノボがIDCに委託したグローバルCIO調査「CIO Playbook」の調査結果

現在、市場におけるAI投資は急増している。エンタープライズAIはアナログの情報をデジタル化するDXが進み、デジタルデータをクラウドへ移しオンプレミスの基盤とハイブリッドで管理し、そこへ機械学習を組み込みAIでデータを活用する形態へと進化している。

しかしデータ量の増大につれて、オンプレミスで実行する推論ワークロードの比率が高まり、現在はクラウドからエッジコンピューティングへの「分散」の波がやってきている。この波に乗れるかが成功の鍵である一方、データセンター等での需要増によりCPUやメモリなどの部品不足と市場における価格高騰が起きており、この部分の対応はPCメーカーの課題だとした。

ハードウェアを提供しているNECPCとしては、AIワークロードに対応したインフラの一つの形態として、AI PCのラインナップを準備することが大事だとした。モバイルAI PCや、高性能GPUを搭載したモデルの投入も検討する。

  • NECPCのAI PCに関する取り組み

    NECPCのAI PCに関する取り組み

具体的にはAI処理に必要な消費電力に対応するため、世界最長クラスのバッテリー性能を誇る「軽量・長時間駆動」のAI PC「VersaPro UltraLite タイプVY」をラインナップ済みだ。また自社PCの不具合を対話形式で解決するサポートAIエージェント「AI Plus Biz」といったソフトウェアや、ユーザーの使い方を基にAIがPCを制御しバッテリー駆動時間を最適化する「ロングバッテリーモード」を提供。

今後はタスク特化型言語モデルの開発、ユーザーの意図を先読みする「Intent Recognition」、デバイスの「故障診断・予知診断」などのAI機能の開発・実装も目指していく。

AIインフラの活用に関しては「アプリケーションやSLM(小規模言語モデル)の管理運用など自社だけでは追いつかないところがある」と説明。「業界のプラットフォーマーと一緒に連携しながら進めていきたい」と話した。

  • NECPCのローカルAIに関する取り組み

    NECPCのローカルAIに関する取り組み

  • イヤホンとカメラを組み合わせたデバイスのコンセプトモデルが会場に展示されていた。カメラで捉えた周囲の環境をAIが認識し、ユーザーが必要な情報を返すという(製品化は未定)。JVCケンウッドがCEATEC 2025で発表した参考品と近い位置付のものと思われる

    イヤホンとカメラを組み合わせたデバイスのコンセプトモデルが会場に展示されていた。カメラで捉えた周囲の環境をAIが認識し、ユーザーが必要な情報を返すという(製品化は未定)。JVCケンウッドがCEATEC 2025で発表した参考品と近い位置付のものと思われる

ローカルAIへの取り組みは? 競合との共創も視野にエコシステム構築

NECパーソナルコンピュータ 執行役員 コマーシャル営業推進本部長の飯田陽一郎氏は、クラウドAIと対比して、PC上で処理する「ローカルAI」がコスト、セキュリティ、応答速度の面で優位性を持つと強調した。

  • NECパーソナルコンピュータ 執行役員 コマーシャル営業推進本部長の飯田陽一郎氏

    NECパーソナルコンピュータ 執行役員 コマーシャル営業推進本部長の飯田陽一郎氏

例えばコストでは、クラウドではAI処理を頻繁に実行したり常時稼働させたりした場合費用が多額になるが、ローカルであれば費用を気にせず利用できるため、クラウドでは考えられなかった新たな使い方が可能と説明。またセキュリティについては機密情報や個人情報を外部ネットワークに出す必要がない点で、企業の需要が増しているとした。

飯田氏はPCメーカーであるNECPCの戦略として、AI PCのラインナップを拡充しコンピューティング基盤を広げる「AIインフラの拡大」、自社での技術開発に加えソリューションベンダーと協力しローカルAIの活用事例を創出する「AIインフラの活用」の2つを挙げた。特にAIインフラの活用では、競合他社との協力も想定しているとし、業界を横断したエコシステムの構築を進めるとした。

  • “AI PC活用の未来に向けて”と題したパネルディスカッションの参加者。左から順にNECパーソナルコンピュータ 執行役員 コマーシャル営業推進本部長の飯田陽一郎氏、ヘッドウォータース 戦略推進室 推進室長の藤江梓氏、Preferred Networks AIプロダクツ&ソリューションズ事業本部 ビジネス開発部 部長の関亨太氏、GxP Incubation室 AIエンジニアの梅本拓登氏、K-Kaleido 代表取締役社長 工学博士の安生健一朗氏

    “AI PC活用の未来に向けて”と題したパネルディスカッションの参加者。左から順にNECパーソナルコンピュータ 執行役員 コマーシャル営業推進本部長の飯田陽一郎氏、ヘッドウォータース 戦略推進室 推進室長の藤江梓氏、Preferred Networks AIプロダクツ&ソリューションズ事業本部 ビジネス開発部 部長の関亨太氏、GxP Incubation室 AIエンジニアの梅本拓登氏、K-Kaleido 代表取締役社長 工学博士の安生健一朗氏