Windows Latestは6月2日(現地時間)、「Microsoft is rebuilding Windows 11's task scheduler for RTX Spark, and it might benefit all PCs」において、MicrosoftがNVIDIAの新型SoC「RTX Spark」に対応するため、Windows 11の基盤部分を大規模に改良していると伝えた。対象はタスクスケジューラー、メモリー管理、電力制御、Arm向け互換機能など広範囲に及ぶ。

  • NVIDIAの新型SoC「RTX Spark」に対応するため、Windows 11の基盤機能を最適化(出典:Microsoft)

    NVIDIAの新型SoC「RTX Spark」に対応するため、Windows 11の基盤機能を最適化(出典:Microsoft)

これらの最適化がAIを使わない一般PCユーザーにも恩恵をもたらす可能性がある。

NVIDIAの新SoC「RTX Spark」とは

RTX Sparkは、NVIDIAのGrace系20コアArm CPUとBlackwell世代GPU、AI処理機能、統合メモリを組み合わせた構成の最新SoCだ(関連記事:NVIDIA、新型Armチップ「RTX Spark」発表 AIエージェント時代のWindows PCへ | TECH+(テックプラス))。

従来のノートPC向けプロセッサに比べて異種混在性が高く、CPUとGPU、AI推論処理が緊密に連携する設計を採用するため、Windows 11側でもスケジューラーや関連機能の改修が必要になったという。

Windows 11に新スケジューリング機構「WPS」

Microsoftが新たに導入したのが「Workload Profile Scheduling(WPS)」だ。WPSはRTX Sparkの20コアCPU全体に対してワークロードを動的かつインテリジェントに振り分けることで、性能と消費電力の両立を図る仕組みを持つ。通常、ローカルAIエージェントは、CPUタスク、GPU推論、メモリー操作、バックグラウンド処理を同時並行で行うため、WPSのこの高度なスケジューリングが高い効果を発揮する。

大規模AIモデルに向けてメモリ管理機能を強化

メモリ管理面でも大きな変更が加えられる。RTX Sparkは最大128GBのユニファイドメモリをCPUとGPUが共有する構成になっている。そのため、Windows 11側ではGPUがアクセスできるシステムメモリ量を拡大するとともに、大規模な共有メモリワークロードに向けたページ管理の実装を改善した。

NVIDIAは、RTX Spark搭載システムでは1,200億パラメータ規模の大規模言語モデル(LLM)を、コンテキスト100万トークンでローカル実行できると主張している。このきわめて高いメモリー負荷に対応するため、Windowsはユニファイドメモリ向けの大容量ページ処理を動的に調整する仕組みを採用したという。

新しい電力・熱管理機能「MPTF」を導入

MicrosoftはRTX Spark向けに電力・熱管理機能も強化した。同社がNVIDIAと共同で開発したのが、RTX Spark搭載システム全体で熱・電力動作を標準化した「Microsoft Power and Thermal Framework(MPTF)」だ。Microsoftは、MPTFによって重負荷時でも高い持続性能を維持しつつ、冷却性能と電力効率を両立できると説明している。ただし現時点では実際のバッテリー駆動時間や熱挙動に関するデータは公開されていない。

Prism最適化でArm版Windowsの互換性を強化

互換性の面では、Windows on Arm向けx86エミュレーション機能「Prism」がRTX Spark向けに調整されている。Microsoftは、新チップのマイクロアーキテクチャに向けた最適化を行うことで、開発、クリエイティブ制作、ゲーム用途で高い性能を引き出せると説明している。

この点については、NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏も、既存のすべてのWindows 11アプリケーションがネイティブArmサポートまたはPrismエミュレーションを通じてRTX Spark上で動作すると明言している。

AI向け最適化は一般PCにも波及するか

セキュリティ面では、NVIDIAがローカルAIエージェント向けの実行環境「OpenShell」をWindowsデスクトップに統合する。OSに組み込まれた新たなIDおよびコンテナー化プリミティブと連携することで、ローカルAIエージェントがポリシー境界内のサンドボックスで動作できるようになるという。ユーザーはエージェントのアクセス範囲を制御できるので、個人ファイルを保護しつつクロスアプリのワークフローをクラウドを使わずローカルで実行できる。

Windows Latestでは、今回の一連の改良は、RTX Spark搭載マシンに限らないWindows全体へその成果が広がる可能性があると指摘している。Microsoftは近年、Windows 11の性能や安定性への批判を受け、ユーザー体験を改善するためのさまざまな新機能の導入を進めている。RTX Spark向けの最適化も、その流れの中で進むプラットフォーム改良の一環とみなすことができる。