仕事に関連する資格を取る理由は、就職・転職時の強力な武器になるから、専門スキルや知識の証明によってキャリアアップが狙えるから、自分自身の成長や信頼性向上につながるから、などが挙げられる。

せっかく頑張ったのだから認められたい――。そんな小さな承認欲求を満たしてくれるのも、資格取得のメリットだろう。言ってしまえば、「公式のお墨付き」をいただいたことになるのだから。

しかしその一方で、現場の目線はもう少しシビアだ。「......で、その資格で何ができるの?」という問いに、実力で答え続けなければならない。

そんな中で、ツールに関する知識量だけでなく、現場の実務に即した実践力を可視化してくれる資格の一つとして「kintone認定資格」が挙げられる。いわば「現場の実務に直結する資格」の一例だ。

そこで、サイボウズでkintone認定資格を運営する2人の担当者に、kintone認定資格を実施する理由や、認定資格取得者が組織や社内にもたらす価値について取材した。知識量ではAIに勝てない時代において、認定資格を取得する意義や業務での活用方法について深掘りしてみたい。

kintone認定資格の全体像、3段階・5種でわかるスキルのレベルとは

一言で「kintone認定資格」と言っても、その中身は3つのレベル階層の5種類の資格で構成される。

まずはkintoneの基本的な知識とkintoneを活用した業務改善スキルを評価する「アソシエイト」。kintoneを使ったアプリ作成方法やレコードの操作方法などが問われる、最も基礎的な認定資格だ。

ただし、アソシエイトではユーザー管理やシステム管理など、普段kintoneのアプリを使っているだけではあまり触れる機会のない操作方法も問われるため、「基礎レベルだから」とたかをくくっていると、意外と痛い目にあってしまう。

アソシエイトの一つ上のレベルに相当するのが、ビジネスサイド人材向けの「アプリデザインスペシャリスト」と、開発サイド人材向けの「カスタマイズスペシャリスト」。前者はkintoneの特徴を活用した業務改善プロジェクトの企画や、業務に合わせたアプリを現場に定着させる手法などが問われる。後者はkintone REST APIやkintone JavaScript APIなど、高度なカスタマイズ開発のスキルが問われる。

最難関のレベルに相当するのが、ビジネスサイドの「カイゼンマネジメントエキスパート」と、開発サイドの「システムデザインエキスパート」である。これまで紹介した3つの認定資格が選択式の出題であるのに対し、これら2つの認定資格は「小論文」とこれまでの「実績登録試験」が合格基準に達しなければ、選択式の「確認試験」には進めない。

kintoneに関する十分な知識を備えているのは前提として、それだけでなくkintoneを活用して業務改善を率いた実績や、kintoneを使った業務改善プロジェクトを推進するための自身の考え方を持っている必要がある。

  • kintone認定資格のレベル

    kintone認定資格のレベル

2018年に開始したkintone認定資格制度だが、最初からこれら5種類の認定資格が設定されていたわけではなく、名称やレベル、出題内容は時代に合わせて変化してきた。当然、今後も変化していく可能性があるという。

「kintoneできます」では伝わらない、実務に合わせたスキルを証明

kintone認定資格が設立された背景について、サイボウズで認定資格の運営に携わる小島順子氏は、「kintoneを活用して業務改善に取り組む方が増えてくる中で、以前はそのスキルを客観的に証明する手段がなかった。『kintoneを使えます』と言っても、人によってそのレベルの解釈が異なっていたので、相違が起きる場合があった」と話していた。

  • サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 kintone カスタマーマーケチーム 小島順子氏

    サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 kintone カスタマーマーケチーム 小島順子氏

kintone認定資格として知識やスキルを明確化することで、kintoneユーザーは「私は最低限ここまでのスキルを身に付けています」と示せるようになった。反対に、上司やリーダーは「認定資格で求められるスキルは身に付けておいてほしい」と具体的に説明できるようになったのだという。

小島氏は「kintone認定資格を運営することで、kintoneを使って業務改善をする人が組織の中で正しく評価され、活躍できる仕組みを作っていきたい。認定資格を取得した人が組織の中に増えれば、業務改善が加速しビジネスが上向きになる、という良い連鎖につなげたい」とも話していた。

認定資格の設立当初は取得者が少なく、「kintoneが大好き」「kintoneに詳しい」というユーザーの割合が多かったため、ある意味で"箔が付く"ような存在だった。しかし最近では取得者が増えてきたことで、ユーザーは自身のスキルを証明する手段として、組織はkintoneユーザーを安心して活用するための物差しとして、認定資格の役割や機能が変化しているとのことだ。

なぜkintone認定資格を取得するのか、受験で得られる学びの価値とは?

kintoneに限った話ではないが、認定資格に合格することはもちろん重要だが、それと同じくらい、体系的な学習の過程で自分自身の得意・不得意を見つけ、理解の浅い部分を補強しながら知識とスキルを積み上げていくことには大きな価値がある。

特にkintone認定資格のアソシエイトは、基礎レベルでありながら出題範囲が広範にわたる。日々の業務では触らない設定なども出題範囲となるため、受験者から「いじわるな問題が出た」「そこまで調べていなかった」との声が挙げられる場合もあるという。

当然ながら出題に悪意はなく、小島氏は「トリッキーな問題や意図的に間違えさせる問題を出すつもりはない。『これを知っていたら業務に役立つよ』『このポイントを押さえておくと業務で生かせるよ』というメッセージを出題に込めている」と話す。

さらには、「アソシエイトの問題は検索すれば答えが出るものが多い。だからといって勉強する意味がないのではなく、自分の中に『これはkintoneでできる / できない』『カスタマイズすれば実現できそう』という判断軸を持てるようになるので、業務をスムーズに改善できるようになる」とも、話していた。

操船から航路設計、チーム主導まで、レベル別に見る実践スキルの違い

kintoneを活用した業務改善を航海に例えると、アソシエイトの取得は操船の方法を覚えたような段階だ。その先に、道しるべを見つけながら大海原を進む必要がある。

小島氏と共にkintone認定資格の運営に携わる菅野晴香氏は「kintoneの操作や設定にとどまらず、どのようなアプリを組み合わせたら効率的に業務を改善できるのか、というスキルを測定するのがスペシャリストレベル。『アクセス権を付けない方が後から管理が楽』や『ユーザーを追加できるようにした方がいいよ』など、自分のアイデアとkintoneをつなげて具体化するスキルが評価される」と説明していた。

  • サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 kintone カスタマーマーケチーム 菅野晴香氏

    サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 kintone カスタマーマーケチーム 菅野晴香氏

特にビジネスサイドのアプリデザインスペシャリストでは、目標設定の方法やプロジェクトの企画、ガバナンス設計、データの管理、アプリリリース後の定着と改善の方法など、「私kintone使えます」にとどまらない発展的なスキルが求められる。

さらに高度なレベルのエキスパートでは、自分たちの航路を設計してチームを導くスキルが必要だ。さまざまな業務改善シナリオに対して、社内外の関係者と連携しながら、kintoneを使った業務改善プロジェクトを企画して推進する実力が問われる。

kintone認定資格の取得に向けたおすすめの学習ステップ

せっかくの機会なので、資格を取得するためにおすすめの勉強法を聞いてみよう。

菅野氏はサイボウズが販売する『kintone認定 アソシエイト試験 対策テキスト[第5版]』の活用をすすめていた。対策テキストはkintoneを初めて使うユーザーから管理者まで、各レベルに応じた6つの章立てで構成されている。そのため、認定資格の受験にかかわらず社内のkintoneマニュアルとして活用している企業もあるという。

その他にも、「kintone認定 アソシエイト試験 対策動画(全48回)」や「kintoneヘルプページ」を見てみるのがおすすめとのことだ。

  • サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 kintone カスタマーマーケチーム 菅野晴香氏、小島順子氏

さらに同社は、kintoneのを一定期間無償で使用できるデモ環境を提供している。社内で実際に使っているkintoneは機能や設定が制限されている場合もあるため、受験時には自分だけのデモ環境でさまざまな機能を試してみることで、具体的な理解を深められる。

また、実際の出題形式を模した「kintone認定アソシエイト試験 練習問題 復習用アプリ」も公開されているため、習熟度の確認に活用できる。

より上級のアプリデザインスペシャリストレベルの受験には、「kintone SIGNPOST(キントーンサインポスト)」が有効だという。これは、kintoneを使って継続的な業務改善をするための考え方やコツをまとめたコンテンツ集だ。

読み物として最初から読み進めるもよし、事例集としてワークショップやケーススタディに活用するもよし、の構成となっている。

「業務データは部署ごと・役職ごとに閲覧権限設定しようと考えているが、閲覧権限を組織や役職ごとに細かく設定すると、組織変更や人事異動によるアクセス権のメンテナンスが煩雑になってしまう」といったように、実際の業務で起こり得る事例とその解決策を学べる。

カスタマイズスペシャリスト向けには、開発者向けコミュニティ「cybozu developer network」の記事や、その記事を基にした「kintone認定資格 カスタマイズスペシャリスト学習ガイド」を活用できる。

AI時代でも取得の価値はあるのか、kintone認定資格のこれからを考える

社内の人材開発やスキルアップ支援のため、ITパスポートや情報処理技術者試験、あるいは他のベンダー資格のように、kintone認定資格に対し資格手当や受験補助金を設ける企業も増えているそうだ。さらには、会社や自治体の人材募集要項に「kintone認定資格」を記載する例もあるという。

「社内にkintone認定資格の取得者が増えることで、前提知識が担保された共通の認識で話ができるので、業務改善のスピードが速くなっている場合も多い。資格を取ることは個人のスキルの証明でもあるが、それ以上に、組織としてはコミュニケーションの高度化につながっている」(菅野氏)

しかし昨今では、検索すればkintoneの操作方法が調べられるだけでなく、AIがアプリの設計・設定やレビューまで行ってくれる時代だ。kintone認定資格を取得する意味はあるのだろうか。

認定資格の将来像について小島氏は「AIの高度化によって、人が知識を覚えることの価値が変わりつつある。今後は、kintoneを業務の中でどう活用し、どのような成果を出せるのかを示すような内容にしていきたい。具体的な方向性はチームでも議論している段階ではあるが、時代に合わせて認定資格を取得する価値を生み出していきたい」と話していた。

  • サイボウズ カスタマー本部 カスタマーマーケティング部 kintone カスタマーマーケチーム 菅野晴香氏、小島順子氏