
「成功には近道はありません。困難な道こそが成功への道だと思っています」─アイム・ユニバース代表取締役の藍川眞樹氏はこう話す。首都圏と沖縄で戸建て分譲、注文住宅、マンションのリノベーションなどを手掛けている。「屋上テラス」を設けるなどリゾート感のある住宅に強みを持つ。また2025年には韓国の自動車メーカーと組んで災害に強い「スマートレジリエンス住宅」にも取り組む。同社が進める〝ユニークな住宅〟づくりとは─。
韓国自動車メーカーの電気自動車と災害に強い家づくり
─ 日本銀行が金利を引き上げています。住宅事業を手掛けるアイム・ユニバースですが、どんな影響が出ていますか。
藍川 金利が上がってきているとはいえ、まだ1%を切る水準の商品もあります。ですから、未だに住宅ローンでも0%台の商品が存在するなど、今でもローン金利は低い状態です。
今後、さらに金利が上がっていけば、確かに住宅ローンの金利は上がります。ただ、それ以上に地価も上がってきます。そうすると5年前に物件を買ったとして、いま売るといくらになっているでしょう。ですから私は不動産の買い時はいつですかと聞かれたら「今ですよ」とお答えしているんです。
レバレッジを効かせられるからこそ、住宅ローンという商品を使いながら資産形成をしていくことが、非常に重要だと考えています。
─ アイム・ユニバースの営業エリアはどこになりますか。
藍川 首都圏をメインにしていますが、10年前から沖縄にも進出しています。
─ なぜ、沖縄に注目したのですか。
藍川 日本を含めた東アジア、東南アジアを見た時に、その中心は沖縄だと考えました。東京と沖縄、香港と沖縄でどちらが近いかというと香港です。私は沖縄が、次に海外の方々と一緒にビジネスをする上で、絶対に重要なエリアになると思っています。
特にアジアの方々と手を取り合ってビジネスをする時に、沖縄に拠点を持つことが必要だと考えて進出しています。
─ アイム・ユニバースの現在の年商はどのくらいですか。
藍川 アイム・ユニバース単体で180~200億円、それに建設事業も含めると、グループ全体で250~300億円くらいの規模です。
─ 将来において、どういった規模感の企業を目指したいと考えていますか。
藍川 社内では、私たちが目指すのは1兆円だと言っています。言っている以上は目指さないといけませんが、当然ながらすぐにできる数字ではありません。だからこそ、「常に困難な道を選びなさい」、「逆境こそ、自分の師であり教師だ」という言葉を大事にしています。
成功には近道はありません。困難な道こそが成功への道だと思っています。そして、現実に目標とする数字を目指すためにも、様々なイノベーションを起こしていかなくてはなりません。
例えば2025年9月30日に韓国の世界的なモビリティ企業「現代自動車」の日本法人・Hyundai Mobility Japan(以下「ヒョンデ」)と、電気自動車(EV)と住宅を組み合わせた新たなライフスタイルの提案に向け、MOU(基本合意書)を締結しました。
─ どういった住宅を提供しようと?
藍川 エネルギー循環と災害時にレジリエンス性の高いスマートレジリエンス住宅「ウーディア」です。
今まで太陽光発電、蓄電池を設置して暮らしの電力を賄うZEH(Net Zero Energy House=ネットゼロエネルギー住宅)はありましたが、私たちはそれだけで本当に有事の時に生活できるのか?という問題意識を持ちました。
そこで、太陽光発電システムと蓄電池を標準装備すると同時に、ヒョンデのスモールEV「INSTER」に搭載した49kWhのバッテリーを活用することで、停電時にも約4~5日間、ご家庭の生活を維持できます。
ヒョンデと連携して提供するスマートレジリエンス住宅「ウーディア」
私たちはこの力を、有事にご家族を守る「命を繋ぐ電力」と考えています。数日間、照明や家電などの最低限の生活機能を維持できることは、安心の質を大きく変えますし、いざという時には避難する移動手段としても使えます。
V2H(Vehicle to Home)という、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)のバッテリーに貯めた電力を家庭で利用するシステムがありますが、家で溜めた電気をEVに送って充電できると同時に、EVの電気を家に戻すことも可能になります。
─ EVとの連携で災害に強い住宅を実現できるということですね。
藍川 そうです。そして我々はこれまで、屋上テラス付きの新築・分譲・注文住宅を提供してきました。これによってリゾートのような特別な時間を過ごしていただきたいというコンセプトです。
一方で、自然災害が増加する中で水害なども増えています。私は最後に逃げる場所は屋上だと思っていますから、災害を見据えても屋上テラスは重要な機能だと考えています。
コミュニケーションを大事に
─ ヒョンデと組んだ理由は何でしたか。
藍川 確かに、災害住宅としてEVの蓄電機能を活用するのなら、他社のEVでもいいと思います。ですが、私は自動車やEVの現状を知るために、アメリカのロサンゼルス、サンフランシスコを視察してきました。
街では約800台の完全自動運転のタクシーが走っていました。グーグル(アルファベット)の自動運転部門が分社化したウェイモが提供しています。
その時私は、ウェイモは人間で言う「脳」を担うとして、「体」は誰が提供しているのかに注目しました。実際に多く走っていた車両がジャガーでした。「二番はどこか」と聞いたところ、名前が挙がったのがヒョンデだったのです。
私はアジアの良い製品と組み合わせて、最新の住宅をつくっていくことが自分の使命ではないかと思っています。そうした中で、例えばヒョンデの自動車が完全自動運転になったとします。
そうすれば家から出ても車を第2のリビングとして、移動中も家族でコミュニケーションを取ることができます。
私は両親が離婚して母親に育ててもらいました。だからこそ、家族のコミュニケーションを非常に大切にしています。当社が手掛ける屋上テラスを始めとする住宅のコンセプトもコミュニケーションの意味合いが強いんです。
─ 人と人との繋がりが弱くなっているのが現代ですね。最新の技術で人と人をつなぎたいということですね。
藍川 ええ。ヒョンデと連携して、最新テクノロジーを生かして車を第2のリビングにしたいという考え方です。
─ 近年は全産業的にAI(人工知能)の活用が叫ばれていますが、どう捉えていますか。
藍川 私は近い将来、家にロボットがあるのが当たり前の時代になると思っていますし、それより前に「AIハウス」ができると考えています。
今は、例えば過去のメールを探すにしても、自分で検索するのではなく、AIに言えば出てくる時代になっています。ですから家も、これからはAIが動かしていくと。
今の家庭で使われているスマートホーム端末は赤外線を読み取って家電を操作しています。それが今後は、AIが物を動かすようになっていくのではないかと思うんです。
─ AIがフィジカルの領域に入ってくると。
藍川 韓国の方と話していると、韓国では鍵を持っていることはあり得ないといいます。鍵があることでヒューマンエラーが起きるというんです。
企業でも、鍵が多いと誰が開けたか、いつ、なぜなくしたかといったヒューマンエラーが起きます。これがデジタルで管理されたスマートキーであれば、指紋認証など生体認証で誰が入ったかが判断され、ヒューマンエラーが起きなくなります。
自動運転もそうです。簡単に言うと、自動車事故はヒューマンエラーで起きます。それが自動運転になればヒューマンエラーがなくなるので、理論上は事故がなくなります。そうした時代が来ていると認識して、5年後、10年後から逆算して住宅をつくっていくことが大事になると考えています。
「地道にコツコツ 誠実に」をモットーに
─ 将来を見据えて、今から手を打っていくと。
藍川 同時に、会社というのは「地道にコツコツ誠実に」が大事です。私はやはり「地道に」がテーマです。事業は決してワープすることができません。会社の売り上げも300億円、500億円、1000億円と積み上げていく。
それに加えて、M&A(企業の合併・買収)など、よい会社さんとのコラボレーションによって、この数字が早く積み上がる可能性もあるでしょう。
また、韓国を見ていて感じるのは「財閥」があることの強みです。今、日本でこういうことを言っていいのかわかりませんが、日本でもう1回、財閥をつくるべきではないかというくらいの思いを持っています。
新しい財閥をつくることによって、日本ももう一度強くなるのではないかと。それによって韓国を含む他の海外の財閥と組むことも可能になります。
例えば我々がヒョンデと組んで、全く新しい住宅をつくるとします。ヒョンデは車はつくれても家はつくれない。でも、当社には家をつくるノウハウがあります。その組み合わせで、世の中で最初のものを生み出すことも可能だと思うんです。
マイクロソフトがエクセル、ワード、パワーポイントといったソフトを提供し、世界共通で使われているように、作ったものを最初にお金にした人が強いと思っています。
─ 最初に形にした人は強いと。
藍川 このマイクロソフトのような事例は世の中に何万とあると思います。私はビジネスマンですから、やはりお金にすることができなかったら失格だという意識で仕事に徹しています。
ただ、お金が全てでもありません。提携するならば我々が相手でなければ駄目だというくらいの技術や知識が必要です。お互いの持ち味を生かしながら、人対人の関わりを持っていく。
─ 藍川さんが経営する上で心がけていることは?
藍川 当社の理念が「世のため人のためになるものを世の中に創造する」です。それに基づいて事業を拡大していきます。それが結果として利益につながるという考え方です。
例えば、沖縄は激しい台風が来て、時に電柱が飛んでくることすらあります。現地で「対策をどう考えられますか」と聞かれた時、当時は答えを持っていませんでした。後から調べたところ「安全合わせガラス」というものと出会いました。
ガラスとガラスの間の樹脂を挟むことで、割れても樹脂で止まるというものです。これを沖縄はもちろん、当社の新築物件には全棟採用しています。バールやハンマーでも割れませんから、強盗対策にもなります。
こうした防災対策で我々の利益を一部削ったとしても、それは後から返ってきます。実際、当社の住宅は価格が高いのですが、確実に売れています。
─ ユーザーが付加価値を認めてくれている?
藍川 そう思います。今は「安かろう悪かろう」ではなく、より良いものをお客様の視点で見て、判断される時代になってきています。業界全体がそうしたモノづくりに特化していかないと、ビジネスにならないと思います。
まずはお客様が困っている課題を解決すること。それがその後、自分たちの利益につながると考えて経営をしています。
─ 他社に真似をされることもあるのではないですか。
藍川 真似されるくらいがいいと思っています。真似をしても、後からつくった方が我々よりもコストがかかってしまいますし、完璧に真似をすることはできません。
実際に、我々の住宅がいいと思っている企業もありますが、案の定、完璧に真似できてはいません。それが我々のブランドになります。
同時に、世のため人のためになるものを創造できるのであれば、名前を売らなくてもいいんです。私たちはモノを売っているのですから。モノづくりに特化して、世のため人のために貢献できるような会社にしていけば、自ずと売り上げ、利益は付いてくると考えています。
─ そうした考え方はどこから生まれたと思いますか。
藍川 自分自身が経験してきたことと、諸先輩方、お客様など、これまで出会った様々な方からお知恵をいただいたからです。たくさんの人と会うことは非常に大事だと思っています。 (以下次号)
