世界が混沌とする中、国、企業、個人が生き抜く条件とは?

米国内でも緊張感

 

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって約4年─。米国・イスラエルによるイラン攻撃も始まり、中東情勢は混迷が続く。国際秩序が次々と壊され、関係者同士が牙をむき、争いの終止符が打てないままでいる。 

 その中を経済人は戸惑いながらも生き抜こうとしている。大げさに言えば地球崩壊の可能性も高まる中、それを避けるための人類の知恵と思慮が求められている。中東・ホルムズ海峡が世界経済の趨勢を握る。世界で消費される石油の約2割が同海峡経由の中、同海峡の”閉鎖”は石油・天然ガスの国際市況の高騰を招き、原材料高騰、そして資材不足を引き起こしている。 

 当事者の米国・イスラエル、そしてイラン共に、今や面子をかけた戦いになり、引くに引けない状況。今年1月、2期目をスタートさせた米トランプ政権がウクライナ戦争に関し、「私なら短時間で戦争を終わらせることができる」と豪語していたが、同戦争は今も続く。 

 そして同月、ベネズエラに侵攻し、マドゥロ大統領を拘束。米国に身柄を移すという劇的な行動を実行したものの、対イラン攻撃では手を焼いている。米国内では「戦争はもう嫌だ」という声も高まり、トランプ大統領の支持率は低下。米国内が混乱の度を深め、トランプ氏を狙った暗殺未遂事件も起きており、同国内でも緊張感が続く。 

 一方のイラン。1979年のイスラム革命以来、47年間、米国と対峙し続け、去年秋の米軍の攻撃を受けて以来、緊張感が高まっていた。今回の攻撃で最高指導者・ハメネイ師が暗殺されたが、イスラム体制は継続。一分の隙も見せていない。 

「まさにジハード(聖戦)だ。敵との闘いで死んで天国に行くという思想は生きている。宗教が絡んだ戦争は悲惨なものになる」と心象を吐露するのは某大手商社首脳。世界全体が景気減速、原材料高騰という中で、企業経営のカジ取りも、より一層難しいものになる。 

 燃油価格の高騰は世界一の生産国・米国内でさえもガソリン価格の急騰という形で米国民の生活に影響を与えている。皮肉にも、ロシアが自国産石油の海外販売を増やし、ロシア財政が潤うという現状である。 

 米中対立が続く中で中国の現状はどうか。「中国は不動産不況が長引き、若者の失業も増え、工業製品の安値輸出が続く。中国発のデフレが心配だ」と石油化学関係者は話す。中国はロシアの安いナフサを購入し、安い石化製品を海外に売っている。 

 また、日本国内では「向こう1年はナフサの手当てができている」というものの、目詰まり現象があちこちで起きている。医療関係の手術用の資材から食品の包装材の不足なども伝えられ、包装材を紙に変えたり、スーパーなどでは容器を持参すれば値段を割り引くという所も出て、あの手この手の対応が続く。現状のまま動けば、景気が減速し、物価も高騰するスタグフレーションが起きかねない。

 

企業の生き残り策

 

 日本国内も金利がじわりじわりと高騰し、景気との兼ね合いで日本銀行の金利政策の行方が注目される。当分、政策金利(0.75%)は据え置く方針だが、既に10年物国債の金利は年2.5%と高い数字。このことは金利の先高観を示しており、景気の現状と絡んで日銀の金利決定を非常に難しくしている。 

 金利上昇は既に住宅ローンにも跳ね返り、個人の住宅取得にも影響を与え始めている。この中で企業はどう生き抜くか? 

 AI(人工知能)関連や半導体関連企業は極めて業績が好調。ただ、業界全体が好調というよりも、その企業の持つ付加価値が評価されている。例えば、光ファイバー関連のフジクラは業績好調である。同社の同軸ケーブルは伝送効率が良い。つまり、エネルギー消費が少ないという点が買われて大人気だ。 

 同業界は旧財閥系の住友電工や古河電工などが強かったが、フジクラは得意な技術力を持って新製品開発に成功。売上高は約1兆円だが、時価総額は10兆円である。売上高約5兆円の住友電工の時価総額約8兆円をしのぐ人気だ。経済が厳しい環境下にあっても、未来につながる高付加価値を生み出せば、市場は評価するということである。 

 日本は今、高市早苗政権が17の成長分野への重点投資で新しい成長を成し遂げようとしている。経済の主役は民間企業であり、企業の新製品や新サービスの開発が求められている。原材料高騰による製品への価格転嫁が言われるが、高付加価値の伴う新製品・新サービスであれば、ユーザーもそれを素直に引き受ける。フジクラは1つのお手本を示していると言えよう。 

 

市場の声にどう対応? 

 力の支配が横行する時代を迎えている。しかし、国際秩序を壊す動きには根強い反対の声が上がる。米国内でも「No Kings(王はいらない)」のデモが相次ぐ。ニューヨーク市長には30代半ばのイスラム教徒の市長が誕生し、「格差是正」「公平」を声高に叫ぶ。トランプ大統領もガソリン高騰に反発する声や株式・債券などの市場の反応を無視することはできない。専制的な指導者も市場には抗えないということである。 

 日本もこうした世界の現実の中で国の舵取りはもちろん、企業のグローバル化の在り方、そして個人の生き方・働き方を考えなければならない。人口減、少子化・高齢化による市場縮小に直面した日本企業は海外に成長の果実を求めてグローバル化を推進。そのグローバル市場は米中対立、そしてウクライナ戦争、イラン戦争をはじめ、各地の紛争が存在するという現実。その中を日本は『つなぐ』という役割を担っていると思う。 

 基本的に日本は『自由・民主主義・法の支配』を戦後80年追い求めてきた。しかし、同盟国・米国の今の行動に困惑させられている。貿易で見れば、アジアとの取引が年々高まり、大きな比重を持つ。そのアジアから、「日本は頼りになる」と思われるかどうかが大事。 

「中国の存在感が目立つ」と経済首脳は身を引き締める。こうした流れの中、「日本はミドルパワーの代表としてEUやASEAN諸国、豪州やインドなどとの連携を深めていくとき」という経済リーダーの述懐である。 

 日本の自立性、そして、しっかりとした基本軸が問われている。