サイボウズは4月14日、kintoneの活用アイデアをユーザー同士で共有するライブイベント「kintone hive 2026」を大阪で開催した。このイベントの中でテキックス 経営企画室 室長の横山瞳氏は、kintoneを活用しUX(ユーザー体験)を重視したスタッフ間のつながりを促進するための業務改革事例を紹介した。

  • テキックス 経営企画室 室長の横山瞳氏

    テキックス 経営企画室 室長の横山瞳氏

テキックスは、大阪・兵庫・三重に拠点を構え、訪問看護事業を展開している。従業員は看護師を中心に63名が在籍。同社の訪問看護事業では、看護師が患者の自宅を訪問し、それぞれが現場で判断しながらケアを行うため、スタッフが一堂に会する機会が少ない。そのため、組織としての一体感をどう醸成するかが課題だったという。

横山氏は「訪問看護は病棟のように同じ場所で働くわけではありません。だからこそ、スタッフ同士のつながりをどう作るかが大きなテーマでした」と説明した。

  • 横山氏のミッションは「バラバラに働くスタッフ同士の心を1つに」

    横山氏のミッションは「バラバラに働くスタッフ同士の心を1つに」

「とりあえずやってみよう」から始まったkintone活用

同社はそれまでにも、チャットで連絡したり、資料を共有したりするなど、ICTを活用していた。しかし、“どこに何があるかわからない”という、情報の海に溺れているような状態だった。さらに、IT人材は社内におらず、外注しようにも情報整理だけで何年かかるかわからない状況だったという。

そこで横山氏が選んだのが、ノーコードツール「kintone」の活用だった。「IT知識がゼロでも使える」「ノーコードで簡単」「価格も始めやすい」といった点に魅力を感じ、「とにかくやってみよう」と考えたという。

最初に取り組んだのが、ポータルサイトの構築だ。ポータルサイトに担わせようとした役割は大きく3つで、1つ目が「事務業務の集約」、2つ目が「スタッフのつながりの醸成」、3つ目が「学びの一本化」だ。

「ポータルサイトを作り、ここに来れば一気にどの情報にもアクセスできる、そんなものを作ろうとしました」(横山氏)

  • ポータルサイトに担わせようとした役割

    ポータルサイトに担わせようとした役割

まず取り組んだ「事務業務の集約」は試行錯誤の連続だったが、kintoneを学びながら社内の情報を収集し、業務として割り切ってアプリを完成させたという。

しかし、完成したポータルサイトはすぐに活用されたわけではなかった。社員からは「使い方がわからないので一度も使っていません」「何がどこにあるのか分かりません」といった声が寄せられた。

「絵本の編集」の経験を生かし“使いたくなる”設計のサイトへ

個別に説明を重ねながら、より高度な設定が必要ではないかと試行錯誤を続ける中で、横山氏は一つの気付きを得る。それは、「大切なのは正しさよりも使いたくなることではないか」ということ。

そこで同氏はUXにこだわり、「直感でわかること」と「少し心が躍ること」を重視。職種別のホーム画面、わかりやすい名称設計、アイコンの統一、グラフィックデザインツール「Canva」を活用したデザイン性の向上などにより、ポータルサイトを再構築した。

その結果、現場からは「わかりやすくなった」「こんなこともできるのか」といった声が挙げられるようになったという。

  • UXにこだわって再構築したポータルサイト

    UXにこだわって再構築したポータルサイト

使いたくなるサイトの構築においては「前職の経験が役立った」と同氏は語る。

「前職で絵本の編集をしていたので、正しさよりも、どうすれば心に届くのか、感覚的に使って楽しかったと思ってもらえるのかを重視していました。その経験が生かされたと思います」(横山氏)

kintoneでスタッフの“つながり”を生む仕掛け作りとは

その後に横山氏は、2つ目のテーマである「つながりの醸成」に踏み込んでいく。具体的には「サンクス報告」や「メンバー自己紹介」といった、スタッフ同士が発信し合えるアプリを構築した。

  • スタッフ同士が発信し合える「サンクス報告」

    スタッフ同士が発信し合える「サンクス報告」

しかし当初は、投稿しても反応がなく、「見られているのだろうか」という不安もあり、切なさを感じていたという。

反応がなかった原因は、コメント投稿の心理的ハードルの高さにあった。そこで導入したのが「いいねプラグイン」だ。このプラグインを用いてSNSのように気軽にリアクションできる仕組みを取り入れたことで、コミュニケーションは一気に活性化したという。

  • 「いいねプラグイン」を導入

    「いいねプラグイン」を導入

「この小さなきっかけがあったことで、発信したコメントに対して気軽に反応する、そんな土壌ができました」(横山氏)

IT初心者ながらちょっとしたプラグインはChatGPTと一緒に作成

こうした横山氏の取り組みは、ChatGPTの活用によってさらに進化する。きっかけは、「みんなのgoodjob」という、拠点や職種を超えて全スタッフが1年の振り返りを発表し合う企画だった。

  • 「みんなのgoodjob」

    「みんなのgoodjob」

この企画に対し「読んだ人が気軽に反応できる仕組みがあった方がよい」という意見が出たため、ChatGPTに「そういうプラグインはありますか」と尋ねたところ、「既存のものもあるが自作も可能」と回答が得られた。

「自作はまったく考えていませんでしたが、ChatGPTができるというならやってみようと思いました」(横山氏)

ChatGPTに具体的な要件を伝えると、JavaScriptのコードが提示された。しかし横山氏はIT初心者で設定方法が分からなかったため、用語の意味から一つ一つ確認しながら導入を進めた。その結果、気軽に感想を共有できるプラグインを実装できたという。

  • ChatGPTに相談しながらJavaScriptを設定

    ChatGPTに相談しながらJavaScriptを設定

「重要なアプリには有料のプラグインを使った方がよいと思いますが、ちょっとした機能であれば、ChatGPTに相談してみるのも一つの手かもしれません」(横山氏)

kintone活用はトライ&エラーで次なる挑戦へ

ポータルサイト構築において最後のテーマは、「学びの一本化」へのチャレンジだった。

横山氏は、「ここでもUI / UXが利用されるための鍵になる」と考え、kintoneよりもデザイン性に優れた「GoogleWebサイト」を活用。学習コンテンツを外部に集約し、そのURLをkintone上に連携することで、eラーニングの窓口のような仕組みを構築した。

  • 「GoogleWebサイト」を活用し、eラーニングの窓口風に

    「GoogleWebサイト」を活用し、eラーニングの窓口風に

このように紆余曲折を経ながらも、トライ&エラーを繰り返し、kintoneによるポータルサイトは完成した。

「これによって、バラバラで働くスタッフの心を一つにすることができました」(横山氏)

  • ポータルサイトでミッションを達成

    ポータルサイトでミッションを達成

さらなる目標の実現に向け「いなかんごプロジェクト」に着手

さらに同氏は、kintoneを活用した「いなかんごプロジェクト」を開始した。これは、病院が近くにない地域に訪問看護ステーションを誘致し、遠方の病院に通わなくても自宅で治療を受けられる環境を整えることで、地域の暮らしを支える取り組みだ。

第一弾として、三重県大山田地域にステーションを開設。このプロジェクトでは、kintoneを活用することで、訪問看護のスキルや経験だけでなく、プロジェクトへの思いや熱量を軸にメンバーを集めることができたという。

  • 「いなかんごプロジェクト」を開始

    「いなかんごプロジェクト」を開始

横山氏は最後に、「人の手の温もりを伝える時間を生み出すというミッションの実現に向け、今後もkintoneとともに歩みを進めていきます」と語り、講演を締めくくった。