
もろい休戦
まさにもろい休戦だ。米国・イスラエルとイランの間で停戦が発効(4月8日)したが、停戦を〝合意〟した後も、イスラエルが隣国レバノンを攻撃するなどして、完全な停戦には至っていない(4月10日現在)。
イスラエルは、イスラム過激派のヒズボラの拠点があるレバノン南部を執拗に攻撃し続け、先のイラン戦争停戦合意の交渉時も、「ヒズボラを攻撃し続けると主張した」と言ってはばからない。つまり、停戦合意に条件に、ヒズボラ攻撃の停止は含まれていないというイスラエルの主張だ。
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肝腎のホルムズ海峡も本稿の執筆時点(4月10日)で実質封鎖されている。イラン側は、無許可で航行する船舶は破壊する─としており、大半の海運会社は海峡通過を見合わせ、多くの船舶が依然として足止めされている。
〝停戦〟は4月8日に発効したとされているが、むしろ先行き不透明感が漂う。確かに、〝停戦合意〟が伝えられると、株価は上昇し、原油市況は下げに向かったものの、投資家の間でも、「本当に停戦は実現するのか?」と訝る声が多いのが実態。今後、事態はどう動くのか?
イラン側が〝停戦合意〟の際に主張したとされる『ホルムズ海峡の管理・運営権』と『ウラン濃縮を進める権利』を巡って、米国・イスラエル側との溝は深い。安全保障専門家の間でも、「完全合意は難しい」との声が多数だ。
本稿執筆後の4月11日に再度、協議が持たれるとされているが、双方は互いに相手が呑めない、あるいは呑みにくい条件を出しており、破談する可能性のほうが高いという見方が強い。
「米国は艦隊をペルシャ湾近くに配置したままだし、地上戦も辞さないという構えで、相手の譲歩を引き出そうとしていますしね。しかし、イラン側はそうした度重なる米国の脅迫に屈せずにやってきたという思いがある。そう簡単には、イラン側も妥協しないと思います」という某専門家の分析。
しかし、なぜ、世界経済にここまで深刻な打撃を与えているにもかかわらず戦い続けるのか?
ジハードのイラン相手に
外交・通商に詳しい別の専門家は、「イラン側はジハード、つまり、聖戦意識で戦っていますし、簡単には折れない」と語る。
ジハード。イスラム法が定める信者の義務で、よく『聖戦』と訳される。戦いに参加して、戦死すれば天国に行くことができるという考え。 今回の戦争でも、12歳以上の青少年や女性までもが主要な建物や施設の前で〝人の楯〟をつくり、団結する映像がイラン発で世界に情報発信されている。米国側も地上戦になった場合、こうしたジハード戦で臨まれれば、甚大な被害が出ることが予想される。
今回の〝停戦合意〟には、イランの隣国、パキスタンのシャリフ首相が積極的な仲介役を果たしたとされる。
EU(欧州連合)は米国とは距離を置き、「これはわれわれの戦争ではない」とする。これに対して、米トランプ大統領は不快感を示し、反発を露にする。また、同盟を結ぶ日本に対しては、「われわれは日本を守ってきたのに、こういう時に日本は米国を支援しない」と非難に似た言辞を発している。
中国の台湾進攻問題や北朝鮮のミサイル発射問題がくすぶる中、日本は東アジアの安全保障問題に自力で向き合えるのか。イラン問題はこうした問題と関係してくるだけに、日本の国としての対応も難しくなる。
日本は米国と安全保障面で同盟関係にあり、一方のイランとは石油の取引を含め、歴史的に友好な関係を築いてきている。日本は両国を和解させる〝仲介役〟となり得るのか、はたまた、〝二股膏薬(こうやく)〟と言われ軽蔑の対象になるのか。高市早苗政権も重要な局面を迎えている。