
柳井正さんの『世界は1つ』
こうした混乱・混沌期における経済人の役割とは何か─―。
「無駄な戦争は止めてもらいたい」と切実な思いを述べるのは、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さん(1949年=昭和24年生まれ)。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
終わりの見えない戦争が続く状況に、柳井さんは、「もっと政治家はしっかりしてもらいたい」と語ると同時に、「企業や個人がもっと自立して、社会にいい影響を与えていくようにしていかないといけない」と訴える。
同社の2026年8月期の連結純利益は前期比で11%増の4800億円を見込む。今年1月に発表した予想より300億円の上方修正。世界が混乱し、原材料費が上昇する中で史上最高益をあげる見通しだ。
ファーストリテイリングの強さは、経営の基本軸がしっかりしていること。今年77歳の柳井さんは、35歳で家業の衣料品店を受け継ぎ、一代で今日の『ユニクロ』を築いた。
『LifeWear(究極の普段着)』─―。同社の根幹にある経営理念である。
ユニーク・クロージングで、文字通り一味違ったアパレル製品を製造・販売しようとSPA(製造小売業)という業態を構築。国際分業態勢によるネットワークをつくり上げ、成長してきた。米中対立といわれる時代にあって、米国でも売り、中国でも売る。国に捉われるのではなく、国と国をつなぎ、人と人をつなぐのが柳井さんの信条だ。
「世界のマーケットは1つです」という柳井さんの言葉は心強い。
岡野原大輔さんの『死ぬ気で』
AI(人工知能)関連事業を展開するPreferred Networksは日本では数少ないユニコーン企業の1つ。ユニコーンは、評価額10億ドル(日本円で1500億円以上)の株式未上場のスタートアップ企業のこと。
会長の西川徹さんと共に東京大学在学中から、自然言語処理や検索エンジンなどの開発をしてきた社長の岡野原大輔さん(43歳)。
2014年に創業。AIで社会課題を解決する〝天才の集まり〟とされるプリファードネットワークス。創業期からトヨタ自動車やファナックが出資するなど、その技術開発力に大きな期待が寄せられ、その後もENEOSやSBIグループが続々と出資するなど、同社とつながる大企業は多い。
大学時代から行動を共にしてきた西川さん、岡野原さんのお二方だが、岡野原さんは「西川は判断力がすごくて、一気に物事を決めていくタイプ。僕は慎重に決めていくタイプ」と語る。2人は『Learn or Die 死ぬ気で学べ プリファードネットワークスの挑戦』という著作を刊行。これまでの軌跡とこれからの未来を記している。日本を代表するスタートアップの成長・発展を期待したい。