お台場、未来館で生き物を探す
ここは東京 お台場、生き物や自然といったイメージはないかもしれません。
私自身もそう思っていました。
こんにちは。科学コミュニケーターの大谷です。
私は水族館で勤務経験があり、その頃は毎日何かしらの生き物に関わる生活でした。その後、科学コミュニケーションに挑戦したいと思い、そのすべを求めて未来館に来ました。
覚悟はしていたとはいえ、日本科学未来館の立地は都心の埋め立て地であるお台場。入職当初は「生き物がいないなあ」と思うことが多かったです。
しばらくの間、生き物とは無縁の生活をしていました。
ところが、だんだんと気づいてきます。生き物はいる。身近なところに。
ただ、それを見落としていただけだったのかもしれないし、そもそも見ようとしていなかったのかもしれません。
そう思うきっかけになったのが、たまに未来館に迷い込んでくる虫たちでした。
館内や敷地内で、ふとしたときに見かける虫たち。最初はあまり気にしていなかったのですが、注意して周りを見てみると、いる、いる。
今まで虫はあまり気に留めていなかったのですが、いざ見てみるとこれが面白い。季節によって出てくる種類も違います。理科の教科書にも書いてあったことだとは思いますが、四半世紀以上生きていてようやくそれを実感しました。
こうなってくると、生き物をいろいろ見つけたくなってきます。今度は鳥です。
気にして観察してみると、スズメなどのおなじみの鳥をはじめ、十数種くらいの鳥を未来館周辺で見つけることができました。
「こんなにいるんだ」 と思うと同時に、今まで見ていなかっただけなんだな、という感じもしました。
かくして私は、身近な生き物に目を向けることの面白さに、少しずつ気づいていきました。
名前がわからない! こんな時は……
生き物を観察するのは楽しいですが、今度は、その生き物の名前を知りたくなってきます。
ただ、虫などは種類も多く、私は詳しくありません。手元の図鑑を見てもよくわからない……。「これ何?」となることが増えてきます。
そんなときに便利なのが、iNaturalistというアプリです。
こちらは、観察した生き物の写真や場所を投稿すると、AIが候補を出してくれたり、他のユーザーや研究者が種を同定してくれたりします。
自分が知らない生き物の名前がわかっていくのは、それだけでちょっと楽しいです。
さらに、市民によって投稿されたこれらの生き物のデータは、研究者が使うことができます。つまりiNaturalistは、市民が調査に参加できる市民科学のツールというわけです。自分にとってはただの観察の記録だったものが、どこかで役に立つかもしれない、というのも面白いところです。
iNaturalistに関しては、他にも紹介したいことや、考えたいことがあるのですが、今回は割愛させていただきます。
市民科学ツールについては、先輩の科学コミュニケーターが、この分野に詳しい研究者である小堀洋美氏に取材し、ブログを書いていますので、そちらも合わせてご覧ください。
関連リンク
- 市民科学で生き物からのシグナルを捉えよう! https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20200102post-129.html
衝撃の発見
そんな日が続いたある日、未来館の池でカルガモを見つけました。
未来館の池は、石造りで浅く、水が張られているだけのシンプルなものです。
正直、生き物がいるような環境ではありません。
カルガモは、そんな池にもやってきていました。休憩所にでもしているのかな、くらいの感じで、私はそれをなんとなく眺めていました。
しかし、ここで私は衝撃的な発見をすることになります。
カルガモを見ながら、ふと池をのぞいてみると、何か動いています。
しかもよく見ると、いろいろいる……。
「これは観察しない手はない」。
翌日、入れ物と小さい網を持って再び池を訪れました。
一応、怪しい人物だと思われないように守衛さんに挨拶もしてから、レッツ採取アンド観察です。
結果、なんと未来館の池には、
ゲンゴロウの仲間、トンボの仲間、水に住むカメムシの仲間、ミジンコの仲間など、合計15種類ほどの生き物が暮らしていました。
なんと未来館の池が水生昆虫の住処になっていた
これは私の想像ですが、夏に向けて温度が上がったことで、まず池の中に藻が増殖し、次にそれを食べるミジンコなどが増殖し (ミジンコはカモなどの体に付着したものが運ばれてきた可能性や、植え込みの土に卵が含まれていた可能性があります) 、さらにそれを食べる小さい虫や、より大きな虫などが集まってきたのではないでしょうか。
また、池の水は枯れることがなく、流れもないので、そのような環境を好む種類の水生昆虫が暮らせるのだと思います。
これらの生き物は都市部でも比較的見られる種類です。
ただ、この池は生き物を呼び込むことを想定してつくられているわけではありません。それでも彼らはやってきて、普通に暮らしています。中には繁殖しているものまでいました。
ヤゴは抜け殻もあったので、成虫まで育っているようだ
なんだか、たくましいなと思いました。もちろん、見つけた生き物はiNaturalistにも記録します。
まさか、未来館の池が水生昆虫の住処になっていたとは……。やはり生き物観察は面白いですね。
お台場生き物探しはまだ始まったばかり
今回、思っていた以上にいろいろな生き物を見つけることができました。生き物はいないのではなく、見ていないだけだったようです。私にとってお台場での生き物探しは、まだ始まったばかりです。これからも続けていけば、また違った発見があるかもしれません。
一方、最近は、今まで普通に見られていた生き物が気づけば減っていたり、絶滅危惧種になっていたりすることもあります。私が未来館周辺で見つけた水生昆虫や鳥の中にも、絶滅危惧種として登録されている種がいました。
そう考えると、まずは 「いることに気づく」 ことは大事なことだと思います。本当にいなくなる前に、まずは気づいて、そしてこれからも意識を向け続けていきたいと思いました。
私は今日も、通勤のときや昼休みに、何か生き物がいないかと周りを見ています。見つけたら写真を撮って、iNaturalistに投稿する。そんなことを続けています。
都心でも、ちょっと見てみると意外といろいろいます。その成果は、また次のブログで紹介したいと思います。
みなさんも、もし時間があれば、休憩のついでにでも少しだけ周りを見てみると面白いかもしれません。

執筆: 大谷 朋己(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
アクティビティ企画全般に携わり、展示解説や対話活動を行う。生成AIをテーマにした企画展 (Mirai can NOW第9弾「AIとえがく?わたしスタイル in 20XX」) の体験開発などを行った。
【プロフィル】
魚を中心に生き物が好きで、大学卒業後に水族館の飼育員として4年間勤務しました。生き物についての解説や教育活動に関心があり、その経験を活かして科学コミュニケーションに挑戦したいと思い、未来館へ。現在は、「生き物を通じた対話の場をつくる」ことを目指して勉強中です。
【分野・キーワード】
魚類、水生生物、海洋、環境教育








