米スタンフォード大学 Human-Centered Artificial Intelligence(HAI、人間中心AI研究所)の最新のAIレポート「AI Index 2026」によると、AIの能力が加速しているという。米国はAIデータセンターの数で世界最多だが、米国と中国のAIモデルの性能の差は縮小に向かっているともレポートしている。
能力は「加速」フェーズへ
技術面では、AI能力の向上がいよいよ「停滞」から「加速」へと移行していることが明らかになった。
2025年のフロンティアモデルの90%以上が企業主導で開発され、いくつかのモデルは博士レベルの科学問題や競技数学において人間の水準に達する、あるいは上回るモデルも登場した。コーディングベンチマーク「SWE-bench Verified」では、1年間でスコアが60%から約100%へと急上昇した。
一方、AIの能力は依然として特にLLM(大規模言語モデル)の能力が高度なタスクをこなせるが、ごく単純なタスクを苦手とする「ギザギザのフロンティア」を持つ。
国際数学オリンピック(IMO)で金メダルを獲得したモデルがある一方で、別のトップモデルはアナログ時計の読み取り正答率が50.1%にとどまる。こうした非一貫性は、現在のAIが持つ本質的な限界を示している。
米中格差の縮小と供給網の脆弱性
2025年2月にはDeepSeek-R1が一時的に米国トップモデルに並び、2026年3月時点でもAnthropicの最上位モデルのリードはわずか2.7%にとどまるなど、米中のモデル性能差は大幅に縮小している。
ただし、トップクラスのモデル数や高インパクト特許では依然として米国が優位を保つ。中国は論文数・引用数・特許出願数・産業用ロボット設置数でリードしており、両国は異なる強みを持つ構図となっている。なお、韓国は1人当たりAI特許数で世界トップを誇るなど、イノベーション密度の高さで存在感を示している。
その中心となる主要AIチップのほぼすべてを台湾のTSMCが製造しており、グローバルなAIハードウェアのサプライチェーンは台湾の一社に依存している。ただし、TSMCは2025年に米国での生産拠点の稼働を開始している。
投資と人材流入の二極化
経済面では、米国の民間AI投資が2025年に2859億ドルへと拡大し、中国の23倍以上に達した。
しかし、AI研究者・開発者の米国への流入数は2017年比で89%減少しており、特に直近1年で80%減という急激な落ち込みを見せている。投資規模と人材獲得力の乖離は、中長期的な競争力の観点から重要な課題となっている。
教育と倫理の遅れ
社会的な課題も浮き彫りになった。生成AIは3年で人口の53%が利用する技術となり、PCやインターネットを上回るスピードで普及した。
だが、AI倫理・安全性に関するベンチマークへの対応は能力評価と比べて大幅に遅れており、記録されたAIインシデント件数は2024年の233件から2025年には362件へと増加した。
教育分野でも、80%以上の高・大学生がAIを学習に活用する一方、明確なAI利用ポリシーを持つ中高校は半数にとどまる。


