寺島実郎・日本総合研究所会長が語る【日本の針路】

なぜイランの核開発はダメでイスラエルは許されるのか?

 ─ イラン情勢が緊迫化する中、日本の立ち位置をどう考えますか。

 寺島 昨年10月、高市早苗首相はトランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦すると言いました。あの時、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦した人がもう一人いた。それがネタニヤフ氏です。つまり、ネタニヤフ氏と高市氏の2人が力を合わせてトランプ氏をノーベル平和賞に推したという皮肉なことになっています。

 トランプ第2期政権の登場により世界秩序が大きく揺らぐ中、米国への過剰依存・過剰同調を見直すべき局面に日本の外交はあるはずなのですが、今回のイラン攻撃に関しても、日本は「法的判断を控える」ということで沈黙し続けています。

【トヨタ・豊田章男氏も登壇】WEB300カンファレンス開催!

 ─ 要するに、日本独自の外交スタンスが見えてこない。

 寺島 そういうことです。ただ、日本において中東外交だけは米国への同調ではなく、個性がありました。

 日本は1953年にイランとの国交を樹立して以来、79年のイラン革命以降も、今日に至るまで、テヘランに大使館を持ち続けてきています。イランとのパイプの太さでは、G7(主要7カ国)の中でも一番太いとも言われているわけです。

 しかも、今回選ばれた改革派のペゼシュキアン大統領の下で外務大臣を担うアラグチ氏は元駐日大使です。その後、彼はイランの交渉団を率いて、オバマ政権時に核合意を実現しました。要するに、日本が今後、国際社会の中でイランがどうしていくべきかを議論する上でも絶好の人が外相をつとめているわけです。

 ─ なるほど。日本は米国とイランの仲介役になれる可能性があると。

 寺島 そういうことです。日本に問われているのは、外交の基軸をどう構築していくのかということです。

 高市首相は先日、イランの核兵器開発は許されないと言いました。ここで考えなければならないのは、なぜイランの核開発はダメで、イスラエルの核開発は許されるのか。

 ─ それでは、ダブルスタンダードになってしまうと。

 寺島 はい。かつて、オバマ大統領は「核なき世界」を掲げて、「中東の非核化」を打ち出しました。イランだけでなく、イスラエルをも含めた、中東地域全体の非核化の実現を望んでいたわけです。

 ところが、結果的にこれがユダヤ系やイスラエルの反発を買い、後のトランプ第1期政権登場につながっていきました。いずれにせよ、イスラエルという国はNPT(核兵器不拡散条約)にも加盟せず、それでいて、核を持っていることを隠していません。ある意味、核に対して無責任な体制になっているとも言えます。

 そういう時に、日本のスタンスとして、イランの核開発はダメで、イスラエルの核開発は許されるなどということでは筋が通りません。イランも、イスラエルも、そして北朝鮮の核開発も、全て拒絶するという姿勢を日本が非核平和主義に立って、一貫して示さなければならないのです。

 ─ それは日本が唯一の被爆国だからですか。

 寺島 そうです。日本外交の背骨には広島と長崎の体験があります。その意味で、日本は絶対に非核化を支持する立場であるべきだし、日本は世界の非核化に向けて努力するべきです。

 もう一つ重要なことは……。

続きは本誌で