2026年4月1日付でパナソニック コネクトグループのグループCEOに、ケネス・ウィリアム・セイン(ケン・セイン)氏が就任した。同日午前9時から、東京・浜離宮のベルサール汐留で開催した同社の入社式「New CONNECTersのWelcome Ceremony 2026」では、161人の新入社員に向けて、ビデオレターでメッセージを送った。

初の外国籍グループCEOが新入社員に語る、「信頼」と「One team」

パナソニックグループの事業会社としては、初めての外国籍プレジデントの就任であり、今回の入社式のビデオメッセージが、グループCEOとしての初仕事となった。同社では、パニソック コネクトの社員を「CONNECTers(コネクターズ)」と呼称しており、セイン氏は「New CONNECTersを迎えることを嬉しく思う」と切り出し「数ある企業のなかから、パナソニック コネクトを選び、入社してくれたことに感謝する」と述べた。

  • パナソニック コネクトグループのグループCEOに就任したケネス・ウィリアム・セイン(ケン・セイン)氏が新入社員へメッセージを贈った

    パナソニック コネクトグループのグループCEOに就任したケネス・ウィリアム・セイン(ケン・セイン)氏が新入社員へメッセージを贈った

そのうえで、同氏は「私はこれまで米国、アジア、欧州などで、グローバルなビジネスに、リーダーとして携わってきた。それらの経験から、人と信頼が最も大切だと考えている。健全なビジネスには、人の成長に加え、継続的な改善、そして信頼とオープンなコミュニケーションが必要不可欠であり、最高の成果はチームやお客さまとの信頼関係から生まると考えている。そのために、日々の仕事や交流を通じて、自然に信頼が生まれるよう、コミュニケーションや意思決定において、一貫性、公平性、透明性を保つことを目指している」と、これまでの経験をもとに経営において重視しているポイントを挙げた。

セイン氏は、1997年に米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得。1999年に、A.T. カーニー経営コンサルタント プリンシパル/マネージャーとなり、輸送および物流企業の戦略コンサルティングに携わった。

2008年にボーイングコマーシャルアビエーションサービスでディレクターに就き、2011年には、ボーイングプロフェッショナルサービス マネージングディレクター、2016年にはボーイングデジタルアビエーション COOに就任。

2017年には、ボーイング傘下だったジェプセンのCEOに就任するとともに、兼務でボーインググローバルサービス デジタルソリューション・アナリティクスの副社長に就任した。2019年に、パナソニック アビオニクスのCEOに就任し、パナソニックコネクトのグループCEOに就任した現在でもその職を兼務している。

2022年には、パナソニック コネクト エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント、2025年には、パナソニック コネクトのシニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントに就いていた。

セイン氏は「私たちの強さは、One teamであること。パナソニックコネクトは、自分の強みを活かし、プロフェッショナルとして成長し活躍できる環境を作り、より多くの可能性を広げていくことをサポートする。単にスキルを磨くだけでなく、考え方や働き方、価値提供の仕方を、グローバル基準でアップデートし、高いマインドを持ったプロフェッショナルとして、グローバルで活躍して欲しい」とエールを贈った。

さらに、同氏は「私はパナソニックコネクトを未来に向けて、進化するカンパニーにしたいと考えている。将来に向けて基盤を強化し、お客さま、会社、そして私たち自身にとって誇れるものを一緒に作り上げ、皆さん一人ひとりが、パナソニック コネクトという舞台で、望む未来やキャリアを実現していくことを期待している。今日からはプロフェッショナルとして、仕事で成果を出し続けなければならない。そうした厳しさのなかで、楽しさを見出し、学び続けることで成長し、生き生きと活躍して欲しいと思う。それが、会社を強くする原動力になる。New CONNECTersの活躍を期待する」と述べた。

樋口泰行氏が9年間で進めたパナソニック コネクトの構造改革

パナソニック コネクトのプレジデント・CEOを務め、4月1日付でシニア・エグゼクティブ ・アドバイザーに就任した樋口泰行氏は、パナソニックコネクトとして初めての外国籍プレジデントが就任したことについて「正しいことを正しく実行する組織を継続するためには不可欠だった」と語る。

  • 4月1日付でシニア・エグゼクティブ ・アドバイザーに就任した樋口泰行氏

    4月1日付でシニア・エグゼクティブ ・アドバイザーに就任した樋口泰行氏

樋口氏は、2017年4月に新卒で入社したパナソニックに25年ぶりに復帰し、パナソニックコネクティッドソリューションズ(現パナソニックコネクト)の社長に就任。9年間にわたり、組織のカルチャーやマインドを変える「風土変革」、ソリューションシフトやケイパビリティの向上を図る「ビジネス改革」、選択と集中による「事業立地改革」に取り組み、重くて、遅いパナソニックの体質を変えてきた。

これまで、3つの事業を売却して9つの事業を終息し、5つの工場閉鎖を行い、25%の人員を削減する一方で、ソリューション人材比率を29%から52%にまで拡大させた。また、売上高は2017年度の1兆1193億円から、2024年度実績で1兆3332億円と19%増加し、EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:利払い前・税引き前・減価償却前利益)は1342億円から1750億円へと30%の改善を実現。さらに、ソリューション売上比率は63%(2017年度実績は49%)に拡大し、リカーリング比率は34%(同16%)に達している。

  • 入社式の様子

    入社式の様子

最大の変革は、2021年9月に完全子会社化したBlue Yonderである。買収金額は約8600億円に達し、2025年度までの3年間で戦略投資として約3億ドル(約470億円)を計上してネイティブSaaS(Software as a Service)型ソリューションとして再開発。必要なピースを埋めるためのボルトオン買収も推進している。今後は「Blue YonderをSCM(サプライチェーンマネジメント)ソフトウェア業界でトッププレーヤーにする」(樋口氏)と宣言する。

樋口氏は、こうした9年間にわたる変革の成果を「稼ぐ力、売上の質、組織能力が向上した」と自己評価する。

そのうえで、同氏は「パナソニックコネクトの今後の経営において大切になるのは、正しいことを軸におき、それによって見極め、意思決定していくことである。そのためには世界の景色が見えていること、戦略的思考を持っていること、グローバルマインドを持っていることが求められる。セイン氏の経歴からもわかるように、プロの経営者として経験を積んできた。これを生かしてほしいと考えた」と語る。

また「避けなくてはならないのは、カルチャーがもとに戻ること、戦略がもとに戻ること。そのためには、日本人以外のCEOが必要だと考えた」と樋口氏がセイン氏にバトンを渡した理由はここにあるという。

海外拠点と兼務体制の先に見据えるセイン氏の経営手腕

気になるのは、セイン氏がパナソニックアビオニクスのCEOを兼務しており、当面は米ロサンゼルスを拠点に活動することだ。今回の入社式への参加がビデオメッセージになった理由も、それが背景にある。

  • 入社式では幹部とのラウンドテーブルも開催された

    入社式では幹部とのラウンドテーブルも開催された

樋口氏は「航空業界では圧倒的な人脈と信頼を持つ人物である。だが、いつまでもパナソニックアビオニクスのCEOを兼務するというわけにはいかないだろう。一方で、英語でのコミュニケーションとなるため、日本のお客さまに対しては距離感が生まれるという指摘もあるが、そこは現場のソリューションカンパニーがしっかりとカバーする。セイン氏は、自分を前に出して仕事をするタイプではなく、周りを見ながら仕事ができ、誠実であり、長期的に正しい経営をすることができる」と評価している。

2017年4月に、パナソニックグループのBtoBソリューション事業を集約して発足したパナソニックコネクティッドソリューションズは、2022年4月にパナソニック(現パナソニックホールディングス)の持株会社制への移行に伴い、事業会社として設立。独立性を高めながら事業変革をさらに加速してきた。

パナソニック コネクトにとっては、第3章ともいえるセイングループCEOによる新たな成長戦略が幕を開けたといえる。今回の入社式は、新入社員を迎えたというだけでなく、新たなパナソニックコネクトの第一歩ともいえる。「未来へ向け進化するカンパニーにしたい」と宣言するセイン氏の経営手腕に注目が集まる。