
「政党政治はチーム戦。党内をまとめ、野党との幅広い合意形成が必要」
高市早苗首相が日本維新の会と閣外協力で合意し、首相指名選挙で支持を得たことで安定政権に近づいたことは評価できる。石破茂前政権のときは政策ごとに、その都度、野党から協力を取り付ける「部分(パーシャル)連合」だった。
そのため、どうしても中長期的な視点が犠牲になった。自民・維新の与党で衆参両院の過半数の議席に近づき、安定政権への第一歩を踏み出したと言える。
ただし、不安も多い。「連立」と称しているが、維新から閣僚が出ておらず、「閣外協力」にとどまる。政治学的には「連立」とはいえない。また、「連立合意書」に盛り込まれた政策以外については、維新の協力を得られるかは定かでない。
維新のガバナンス力の弱さも考えると、野党の協力を得なければ、安定した政権運営は困難だ。
高市首相は所信表明演説の中で、人口減少・少子高齢化を乗り切るためには、社会保障制度における給付と負担の在り方について国民的な議論が必要だという認識を示し、超党派かつ有識者も交えた「国民会議」を設置すると表明した。
65歳以上の高齢者が全人口の34・8%を占め、団塊ジュニアの世代(1971年―74年生まれ)も65歳以上を迎える「2040年問題」への対応は、待ったなしだ。
給付付き税額控除の制度設計を含む「社会保障と税の一体改革」については与野党の垣根を超えた超党派で議論を進め、抜本的な対策を打ち出さなければならない。
一方で課題は大きく2つある。1つ目は「責任ある積極財政」を貫けるかどうかだ。膨張を続ける社会保険料などに加えて、25年度中に防衛費を対国内総生産(GDP)比で2%水準に前倒しして引き上げることを表明した。ガソリンの暫定税率の廃止についても、代替財源が決まっていない。
歳出拡大や減税のメニューがひしめく中、財政規律をどのように確保していくかは課題である。
2つ目は、高市首相が軍事費の増大、インテリジェンスの強化、スパイ防止法といった右寄りの政策を維新と一緒に推進することで、立憲民主党などの野党との対決色が強まることだ。その結果、社会保障などでの合意形成が妨げられかねない。
まずは臨時国会を乗り切れるかどうかが高市政権の最初のヤマ場となる。
政党政治とはチーム戦だ。決して首相1人で全てに目配りすることはできない。長期政権となった安倍晋三元首相もそれを知っていたからこそ、第1次政権の反省に基づき、第2次政権では菅義偉・官房長官をはじめとする強力な官邸チームを作って役割分担した。
野党と幅広く合意形成するためにも、まずは首相官邸、次いで自民党内、そして与党が結束しなければならない。