日立製作所、日立ハイテク、三菱UFJ銀行の3社は10月8日、日立が推進するリサイクルプラスチックをはじめとした“再生材”の活用促進を支援する「再生材マーケットプレイス」の事業化に向け、金融機能提供に関する検討の開始を目的とした基本合意書を締結したことを発表した。
再生材リサイクラーの資金調達への貢献を目指す
気候変動や生物多様性の損失、資源不足などにより、サーキュラーエコノミーへの注目度が高まっている。そうした中で存在感を増しているのが、再生材の活用や製造工程で生じた廃材の“再資源化”だ。しかし廃材由来の再生材は品質が安定せず物量も変動しやすいため、取り扱いの難易度が高く、再生材の買い手・売り手である供給元(リサイクラー)とのマッチングが難しいという課題があるという。また今後は再生材に対する需要増加が見込まれるため、再生材製造に関与する企業への資金面でのサポートの重要性もより一層高まることが予想されるとする。
そうした中、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)やAIなどの先進デジタル技術を有する日立と、商事機能としてマテリアル・バリューチェーン全体における幅広い知見や再生材の買い手・売り手となる顧客とのタッチポイントを有する日立ハイテクは、グループ一丸となった“One Hitachi”での連携により、リサイクルプラスチックをはじめとする再生材の活用促進を支援する“再生材マーケットプレイス”を開発した。この取り組みでは2024年6月、プロトタイプ版の実証実験が完了。現在は、同マーケットプレイスを活用したサービスの提供に向け準備を進めているとする。
一方で三菱UFJ銀行では、サーキュラーエコノミーの促進に向け、グリーンローンやサステナビリティ・リンク・ローンなどのさまざまなファイナンス手法を通じて、顧客の取り組みを支援してきたとのこと。そして今般、それぞれの専門性・知見・技術を掛け合わせることで日本の再生材利用促進に貢献できると考えた3社は、連携に向けた基本合意書の締結に至ったとした。
今回の3社連携ではまず、三菱UFJ銀行が提供する、買い手の信用力に依拠したサプライチェーンファイナンスの活用を検討するといい、具体的には、再生材マーケットプレイスを通じて再生材の売買が成立し、発生した売掛債権を無審査・ノンリコースで早期資金化することで、このマーケットプレイスへの参加企業(リサイクラーなどの売り手)の資金調達に貢献するという。また将来的にはファイナンス面に限らず、参加企業の業務効率化に資する周辺機能の提供も検討していく予定だとする。
なおこの中では、日立製作所が再生材マーケットプレイスのサービス開発を担い、日立ハイテクは再生材のトレーディング・受託評価サービスを行うとのこと。日立が取り組むマーケットプレイスに三菱UFJ銀行の金融機能を掛け合わせることで、再生材の利用促進につながるサービスの実現を目指すとしている。
3社は今後の見通しとして、2026年度のサービス提供に向け年内にファイナンスニーズ調査検証の開始を予定しているといい、また売り手・買い手複数の顧客に同マーケットプレイスを実際に利用してもらいながら、MIや生成AIなど先進デジタル技術の有用性などについて実証を進めるとする。
日立は、再生材の活用促進に関するドメインナレッジとAIを用いてデータを価値に変換し、顧客や社会の課題解決に取り組むという“Lumada 3.0”への進化を通じて、さらなる価値創出を図るとのこと。その中で、金融機能を含めさまざまなニーズや業界特有の課題を踏まえたうえで、必要なサービスを順次拡充するといい、より多くの顧客に再生材マーケットプレイスを活用されるよう、将来的にはさまざまな事業者と共にオープンなエコシステムの形成を目指すとした。
3社は今回の連携を通じた取り組みにより、循環型社会の実現を支える新しい取引インフラを確立し、再生材市場における持続的な成長機会と長期的な価値創出に貢献するとしている。
