福井県立恐竜博物館と天草市立御所浦恐竜の島博物館の両者は9月26日、恐竜が生きていた中生代(約2億5200万年前~約6600万年前)の昆虫化石として、熊本県上天草市から後期白亜紀(約1億4500万年前~約6600万年前)の約8500万年前の昆虫類の腹部の化石が、そして長崎市から同じく後期白亜紀の約8000万年前の甲虫目の翅(はね)の化石が、それぞれ九州で初めて発見されたことを共同で発表した。
同成果は、九州大学の大山望大学院生(研究当時)、福井県立大学、福井県立恐竜博物館、天草市立御所浦恐竜の島博物館、長崎市恐竜博物館、ロシア科学アカデミーの国際共同研究チームによるもの。詳細は、日本古生物学会の英文学術誌「Paleontological Research」に掲載された。
今回発表された2点の化石のうち、昆虫類の腹部の化石は、2007年10月に、熊本県氷川町在住の山田良二氏が、同県上天草市龍ヶ岳町椚島(くぐしま)の姫浦層群樋の島層から発見したものだ。化石は、当時の天草市立御所浦白亜紀資料館(現・天草市立御所浦恐竜の島博物館)に寄贈され、保管されていた。
その後、同資料館と福井県立恐竜博物館による姫浦層群の共同調査研究を実施した際、九大の大山大学院生に鑑定を依頼したところ、貴重な昆虫化石と判明。これを受け、化石の発見場所の検分や周辺地域の地質と年代などについての調査が実施された。
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(左)上天草市の昆虫類の腹部化石の画像。(右)その線画。腹部には5つの体節が確認される。上部の赤い湾曲部が、胸部と腹部の境界部である後脚の基節を指し、矢印は腹部の末端部を指す。画像提供:福井県立大 恐竜学部/福井県立恐竜博物館/天草市立御所浦恐竜の島博物館(出所:福井県立恐竜博物館Webサイト)
腹部の化石は、約8500万年前の後期白亜紀(約1億50万年前~約6600万年前)のもので、サイズは長さ約6.18mm×幅約6.18mm。昆虫の体は主に頭部・胸部・腹部の3部構成だが、この化石は腹面が主体の腹部の化石である。化石には5つの体節が確認でき、胸部と腹部の境界部である後脚の基節から、腹部の末端部までが見て取れる。その形状はややずんぐりとしており、この特徴から昆虫の腹部と考えられ、特に甲虫目やカメムシ目の腹部に類似しているという。また、胸部と腹部の境界部の構造から甲虫目に属する可能性が示唆されたものの、より詳細な分類には追加標本の発見を待つ必要があるとの結論に至った。
一方で甲虫目の翅の化石は、2017年5月、長崎市と福井県立恐竜博物館の共同調査により、長崎半島西岸の三ツ瀬層から発見された。この鑑定も大山氏(この時期にはパリ国立自然史博物館に所属)によって行われた。鑑定に際しては、より詳細な特徴を観察するため、パリ国立自然史博物館の最新のRTI(反射変換イメージング)装置が利用された。その詳細な観察の結果、甲虫目の翅の化石と判明したとする。
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(左)長崎県長崎市の甲虫目の翅化石の画像。(中央)その線画。(右)そのRTI画像。ほぼ完全な鞘翅(外側の翅:背面側)の化石で、その表面に微細な模様が確認できる(中央四角内の模様はその例)。翅の縁にはカリナ(中央の赤線の部分)がある。画像提供:福井県立大 恐竜学部/福井県立恐竜博物館/長崎市恐竜博物館(出所:福井県立恐竜博物館Webサイト)
甲虫目の翅の化石は、約8000万年前のもので、サイズは長さ約10.92mm×幅約6.63mm。胸部外側にある左の翅で、ほぼ完全であり、特徴として後方へ向かうに従って狭くなり、翅の先端では弱く尖っている点が挙げられる。表面には顕著な翅脈がなく、2本の条線と彫刻が見られ、硬化している。さらに、翅の前縁には「カリナ」と呼ばれるシャープなエッジが確認された。これらの特徴から、昆虫類の中でも甲虫目の前翅である「鞘翅(さやばね)」と考えられるとしている。
これまで、国内の中生代の昆虫化石は、本州と北海道に産出地が限られており、今回発見された2点が初の九州からの産出化石となる。九州には恐竜化石を産出する陸の地層が広く知られていることから、昆虫化石の発見も長らく期待されていた。今回の研究成果は、日本の昆虫類における古生物地理的分布の空白を埋める画期的な成果だ。さらに、これらの化石は日本では化石記録の少ない後期白亜紀のものであり、かつ詳しい年代値のわかる地層から発見された。そのため、東アジア縁辺部の陸上生態系の復元や古環境解析に役立つ基礎的データにもなるとした。
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発見された化石の部位の図説。(左)長崎市の翅化石は淡いグレーに相当。(右)上天草市の腹部の化石は右の濃いグレーに相当。なお、図のモデルは一般的な甲虫類であり、化石の復元図ではないことに注意。画像提供:福井県立大 恐竜学部/福井県立恐竜博物館(出所:福井県立恐竜博物館Webサイト)
なお今回の化石は、天草市立御所浦恐竜の島博物館(昆虫類の腹部の化石)と長崎市恐竜博物館(甲虫目の翅の化石)でそれぞれ展示中で、どちらも期間は12月7日(日)までが予定されている。またその後は福井県立恐竜博物館において、2025年12月13日(土)~2026年3月上旬で公開される予定だとしている。

