
東日本大震災後、日本のエネルギー戦略の転換点に
「安全最優先で原子力発電所の安全・安定運転に全力で取り組むと共に、地域の皆様のご理解を賜りながら原子力発電事業を推進していく」
こう語るのは、関西電力社長の森望氏。
関西電力が美浜原子力発電所(福井県美浜町)の建て替えに向けた現地調査を再開する。
日本で原発が新設されたのは、2009年の北海道電力・泊原発(北海道泊村)3号機が最後。実現すれば2011年の東京電力福島第1原発事故後、原発の新設は初めて。実際に稼働するのは20年以上先の話ではあるが、東日本大震災後の日本のエネルギー戦略は大きな転換点を迎えたと言っていい。
政府は、今年2月に閣議決定したエネルギー基本計画に既設原発の「最大限活用」を明記。2040年度の電源構成で原発の割合を現在の1割弱から2割程度まで増やす方針を掲げた。この水準は30基以上の稼働を前提としているが、再稼働した原発は14基にとどまっている。
日本原子力産業協会理事長の増井秀企氏は「わが国にとって、原子力発電は欠くことのできない重要なエネルギー源。現地調査の再開は、持続的な原子力活用への重要な第一歩と位置づけられる」とコメントした。
日本のエネルギー自給率は約15%(2023年度)で、先進国の中では最低水準。石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を海外からの輸入に頼っているのが現状で、石油は95%以上を中東からの輸入に頼っている。中東ホルムズ海峡の封鎖や台湾有事があれば、化石燃料が入ってこなくなるリスクは常にある。
また、近年は半導体やAI(人工知能)向けデータセンターの設立で電力需要は今後ますます増加することが予想されている。資源のない日本にとっては、再生可能エネルギーや原発など、輸入に依存しないエネルギーのさらなる開発が求められる。
今回の参議院選挙では物価高対策が主な争点となり、エネルギー政策についての議論はほとんどなかった。日本のエネルギー戦略をどう構築していくか。今回の関電の地質調査再開を機に、原発の位置づけについての国民的な議論が改めて必要だ。
