調理が簡単で長期保存が可能な冷凍食品は、需要が増加し市場が拡大傾向にある。単身世帯の増加や女性の社会進出といった生活スタイルの変化が背景にあると考えられる。昨今は1食分の食事がワンプレートで冷凍された便利なキットも登場している。筆者も晩酌と共に食する予定のから揚げや餃子を冷凍庫に詰め込んでいる。

冷凍食品の需要が増加する一方で、常温のドライ倉庫と比較して冷凍・冷蔵倉庫は開発が進まず、関東圏や関西圏で特に庫腹占有率(収容可能なスペースに対する貨物の占める量を示す指標)がひっ迫している。その割合は90%を超え、場合によっては100%を超えているそうだ(日本冷蔵倉庫協会 統計情報12都市データより)。

これに追い打ちをかけるように、冷凍・冷蔵倉庫は多くの施設で老朽化が進んでいる。また、代替フロンや自然冷媒など環境負荷の少ない冷媒へ転換が求められており、今後ますます建替え需要が高まると予想される。

こうした課題に対し、不動産コンサルティング事業を手掛ける霞ヶ関キャピタルは、ITを活用しながら冷凍・冷蔵・常温の3温度帯に対応可能なマルチテナント型物流施設など、さまざまな物流施設を提供している。同社はこのほど、2024年9月に竣工した冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH 所沢I」を報道陣に公開した。

冷凍倉庫を自動化し多様なニーズに対応

「LOGI FLAG」は霞ヶ関キャピタルが展開する倉庫ブランド。事業課題や社会課題の解決に向け、新たな価値を提供できる物流施設の提供を目指す。「LOGI FLAG TECH 所沢I」はマイナス25度の冷蔵倉庫の無人化を実現。これにより省人化を可能としたほか、スムーズな荷物の出し入れにつなげている。

施設担当者によると、従来の冷凍倉庫は有人で管理している施設も多いという。庫内での有人作業は凍傷などの労働災害を防ぐため作業時間に制限が設けられるなど、厳しい労働環境もあるという。荷物の位置をアナログで人的に把握している場合には、時間のロスや入出庫ミスも発生し得る。

対して「LOGI FLAG TECH 所沢I」では冷凍自動倉庫を構築したことで、荷物情報のシステム一元管理と自動搬入出が可能。庫内での長時間の作業や高所の荷物を出し入れする作業が不要となり、労働災害の防止や効率的な倉庫運営が期待できる。

また、同社は冷凍保管に対応するWebサービス「COLD X NETWORK(コールド クロス ネットワーク)」も構築し、「LOGI FLAG TECH 所沢I」から提供を開始した。入出荷の依頼や在庫照会がWebで完結する。メールやFAX、電話での確認作業を不要としている。

従来の倉庫は短期契約や小ロット保管が困難だったが、「COLD X NETWORK」により煩雑な手続きを簡略化したため、「LOGI FLAG TECH 所沢I」は1日単位、1ケース単位での取り扱いにも対応可能だ。イベントや繁忙期のみの利用、テスト用商品の小ロット保管、飲食店の建て替えに伴う一時保管など、多様なニーズに対応する。

  • 「COLD X NETWORK」画面例

    「COLD X NETWORK」画面例

「LOGI FLAG TECH 所沢I」でマイナス25度を体験

「LOGI FLAG TECH 所沢I」は1階が入出荷エリアで、5度に保たれている。トラックからの荷降ろしや検品がここで進められる。

  • 入荷バース

    入荷バース

入荷し検品が完了した荷物は、専用のパレットに移される。このパレットは側面にユニークな番号とバーコードが振られており、この番号を作業員がハンディ端末で読み取ることで、パレット上の荷物および個数が「COLD X NETWORK」のシステム上に反映される。

  • パレット

    パレット

その後、荷物は入庫ステーションから2階の冷凍保管エリアへと運ばれる。入庫ステーションではセンサーでパレット側面のバーコードを読み取り、システム上のデータと突合する。

  • 入庫ステーション

    入庫ステーション

  • パレット側面のバーコードを読み取るセンサー

    パレット側面のバーコードを読み取るセンサー

マイナス25度の冷凍保管エリアへ運ばれた荷物は、システムにより最適なロケーションへと配置される。なお、入庫後の荷物は出庫まで同じ位置に保存されるのではなく、出庫時期が近付くと手前に移動されるなど、常に最適な位置へと配置されるという。

「LOGI FLAG TECH 所沢I」冷凍自動倉庫

出庫の際は倉庫からステーションへと荷物が移動し、1階まで移動し出庫ステーションから搬出され、トラックの到着を待つ。

  • 出庫ステーション

    出庫ステーション

  • 出荷を待つ荷物の保管庫

    出荷を待つ荷物の保管庫

今回は取材のためにマイナス25度の冷凍保管エリアへ入ったが、エラーなどが発生しない限り、通常時は冷凍保管エリア内は人の立ち入りが不要だ。筆者が写真撮影のために足を踏み入れたわずか5分だけでも、指先がかじかみうまくシャッターが切れなかった。このような環境での荷探しといった作業は非常に過酷と言える。無人での管理が可能な冷凍自動倉庫の展開に期待したい。