統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供するSUPER STUDIOと三井不動産は5月16日、日本のコマースビジネスにおけるオムニチャネルサービスの進化とイノベーションの創出を目指し、戦略的資本業務提携の契約を締結したことを発表した。

この発表に伴い、両社は「SUPER STUDIO事業戦略発表会」を開催。説明会には、SUPER STUDIO 代表取締役社長 CEO 林紘祐氏、SUPER STUDIO 取締役副社長 COO 兼 CPO 花岡宏明氏、三井不動産 執行役員 イノベーション推進本部 ベンチャー共創事業部長 髙波英明氏、三井不動産 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部 商業施設運営一部長 渡辺誠氏が登壇した。

  • 説明会の様子

    説明会の様子

戦略的資本業務提携の背景

これまでSUPER STUDIOと三井不動産は、2022年のグロース事業からの資金調達を機に、両社でリアルとデジタルを掛け合わせ、コマース事業者の成長を支援するための取り組みを継続して行ってきたという。

今回の戦略的資本業務提携を通じ、2社のこれまでの取り組みをより深化させ、日本のコマースビジネスにおけるオムニチャネルサービスの進化を推進すべく、協業体制を深めていきたい考え。

今回発表された戦略的資本業務提携により、三井不動産は、グローバル・ブレインと共同で運営するスタートアップ投資事業「31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI事業」を通じて、SUPER STUDIOが行う第三者割当増資による新株式発行の割当先となる。

さらにSUPER STUDIOは、これまでの出資および約17億円の追加資金調達により三井不動産の持分法適用会社になっている。

SUPER STUDIOとの戦略的資本業務提携の背景について、三井不動産 執行役員 イノベーション推進本部 ベンチャー共創事業部長 髙波英明氏は「オフラインからオンラインへいろんな購買行動が変わる中で、SUPER STUDIOの可能性を感じた。三井不動産とSUPER STUDIOのやりたいことが合致した」と説明した。

  • 三井不動産 執行役員 イノベーション推進本部 ベンチャー共創事業部長 髙波英明氏

    三井不動産 執行役員 イノベーション推進本部 ベンチャー共創事業部長 髙波英明氏

さらに髙波氏は「SUPER STUDIOは、三井不動産のオムニチャネル戦略を実現する上で、顧客体験の向上に必要な機能開発、実装における課題に対してのスピーディーな解決力、デジタル技術を含めた高い開発力、当社戦略への共感・提案力を持つ重要なパートナー」と述べた。今回の戦略的資本業務提携を通じ、両社のこれまでの取り組みをより深化させ、今後さらなる協業推進や事業展開、さまざまなアセットを活用した新サービスの創出などを検討し、ともに成長していきたいという。

一方のSUPER STUDIOは、三井不動産との協業により、オフライン領域、サービス領域への拡大を加速させたい考え。新たな市場を開拓しながら、オンライン・オフライン問わず、クロスチャネル・クロスサービスを統合。あらゆるコマース事業者のDXを支援していくという。

協業の背景について、SUPER STUDIO 代表取締役社長 CEOの林紘祐氏は以下のように述べた。

「今回の戦略的資本業務提携においては、三井不動産とSUPER STUDIOが目指すところが重なった結果だと考えています。三井不動産が掲げるオムニチャネル戦略には、デジタル基盤の強化やDXを実現する体制や人材が必要不可欠です。弊社は、統合コマースプラットフォーム『ecforce』を軸としたプロダクトの開発・提供を行いながら、三井不動産が推進するオムニチャネル戦略のサービスグロースに向けた取り組みを、プロダクト・人材の両面から支援していきます」(林氏)

  • SUPER STUDIO 代表取締役社長 CEOの林紘祐氏

    SUPER STUDIO 代表取締役社長 CEOの林紘祐氏

さらに今後は両社でオムニチャネルサービスのさらなる進化とイノベーションの創出を目指し、三井不動産と共に日本のコマースDXを牽引する存在として、新たなプロダクトやサービス開発なども視野に入れ、成長を続けていきたい考えであることを説明していた。

これまでのSUPER STUDIOと三井不動産の取り組み

これまでSUPER STUDIOと三井不動産は、リアルとデジタルを融合したコマース領域において、事業者の成長支援に向け取り組んできた。

2022年にはリアル店舗でEC同様の顧客データの取得を図る実証実験を実施。SUPER STUDIOが運営に参画していたD2Cブランド「GO WITH WHITE(現:DOUBLEW)」のポップアップストアをRAYARD MIYASHITA PARKで開催し、オンラインとオフラインの連動による新たな購買体験を実現する取り組みを実施した。

この実証実験の結果を受け、2023年7月には、両社協業で初のリアル店舗として、ECブランドが出店する次世代型ショップ「THE[]STORE(ザ・ストア)」をRAYARD MIYASHITA PARKでスタートさせた。

  • THE [ ] STOREの外観

    THE [ ] STOREの外観

「THE[]STORE」は、SUPER STUDIOが三井不動産と共同で提供する次世代型ショップで、デジタル化した店舗を、東京・渋谷の「RAYARD MIYASHITA PARK」に低コストで出店可能という店舗だ。

この店舗を通じて、EC/D2Cブランドの店舗出店における課題を解決し、ブランド運営のネクストステップ施策を支援するほか、購入データを即時に蓄積、オンラインのデータと統合することで、出店後にCRMをはじめとしたマーケティング施策に生かせる。

また、2024年には両社の「OMO(Online Merges with Offline)ソリューション」を商業と物流の領域へ拡張した。

OMOとは、「オンラインとオフラインの融合」を意味し、顧客にオンラインとオフラインの垣根を意識させず、モノやサービスの購入・体験を提供するマーケティング施策のこと。オンラインとオフラインそれぞれのデータを統合し、情報を一元管理することで顧客体験の向上などを図るもの。

同ソリューションの拡張を通じて、リアル・デジタルの両面からECブランドの成長を支援するプラットフォームの提供を開始。商業領域においては、三井不動産の商業施設においてOMO型ポップアップを提供することで、EC・リアル店舗・物流のすべてのデータ連携し、ECブランドが一連のデータに基づいたサービス利用が可能になったという。

今後の展望

また両社は「LaLaport CLOSET」の体験データを活用した売上拡大策を共創する取り組みや「&mall DESK」における業務効率化・顧客コミュニケーション向上策の共創においても協力を進めてきた。

「LaLaport CLOSET」は、三井不動産が自社サービスとして展開する、骨格診断やコーディネート提案の各種サービスが受けられる体験型ショールーミング店舗。オムニチャネルを前提とした体験設計で、三井不動産の商業施設DXをリードする位置付けとなっているという。

一方の「&mall DESK」は、三井ショッピングパークの公式通販サイトの&mallで買った商品を受け取ることや、その場で試着することができるサービス。オンライン(&mall)とオフライン(各施設)をつなぐ新サービスとして取り組みを進めているという。

今後、SUPER STUDIOは、「ecforce」を軸とした各種プロダクトの開発・提供を行いながら、三井不動産が推進するオムニチャネル戦略のサービスグロースに向けた新たな取り組みをプロダクト・人材の両面から支援し、三井不動産と共にオムニチャネルサービスの進化とイノベーションの創出を目指していく構え。

また現在進行中のプロジェクトとしては、LaLaport CLOSETのほかに、「館内まとめて試着・購入サービス」を企画・開発中とのこと。

顧客が各店舗から商品を自由に持ち出して最後にまとめて比較・購入できる新たなサービスとして検討されているもので、施設来館後においても顧客の商品持ち出し・購入・返却履歴を分析し、よりパーソナライズした形で、施設や&mallの商品・キャンペーン情報を届けていくことを企図しているという。