三菱重工業は5月28日、2024年度の事業計画の推進状況に関する説明会を開催した。

2024年度は受注、売上収益、事業利益、キャッシュフローともに過去最高を達成。受注は、エネルギー・防衛の伸長事業を中心に計画を大きく上回り、受注残が10兆円を超えた。

社長 CEOの伊藤栄作氏は、再生エネルギー、水素、アンモニア等の普及に停滞傾向が見られる中、天然ガスの役割が増加して事業機会が生まれているとして、事業環境に変化があることを紹介した。

  • 三菱重工業 社長 CEO 伊藤栄作氏

こうした事業環境を踏まえ、成長のポテンシャルを解き放ち、新たな価値を創造することで高利益体質と成長投資の好循環を実現するという経営目標を実現するため、以下3点を経営方針に据えている。

  • 基盤技術と最先端の知見を組み合わせ、変化する社会・顧客ニーズに応える
  • 成長のポテンシャルを解き放ち、新たな価値を創造する
  • Innovative Total Optimizationにより全体最適と領域拡大に取り組み、シナジー効果を創出する

Innovative Total Optimizationとは

経営方針として、Innovative Total Optimizationという新たな考え方を実践し、全体最適と領域拡大に取り組む。

組織の連携を強化し、全体最適を実現することで生産性向上と収益力強化を図る。また、桁違いに多くの地域や顧客にスピード感をもって新しい価値を提供し領域を拡大する。

これらのシナジーによって、高利益体質と成長投資の好循環の実現を目指す。

  • Innovative Total Optimizationの下、全体最適と領域拡大に取り組む

全体最適:二つの最適化で収益力を強化

全体最適においては、「縦」と「横」の最適化を実施する。

「縦」の最適化は、バリューチェーン全体を極力縮小した、スリムな事業運営を指す。伊藤氏は、「当社は研究、IT、知財を共通基盤として有しているので、専業メーカーに対しバリューチェーンをシンプルにできる」と説明した。

平時の運営は虚力スリムな体制で行うが、新製品開発や急激な増産などの中長期戦略に関わる重要局面ではリソース(社内エキスパート)を集中投入するという。

また、変化が速く大きい市場環境において、ニーズを先読みし、開発をスピードアップする。そのために、共通基盤技術を投入し、オープンイノベーションを活用するとともに、技術課題の細分化を図る。

リードタイムを半減させるために、DFX(つくりやすい設計)や生産の自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組み、組織間のベストプラクティスを共有する。

「横」の最適化としては、ベストプラクティスの共有、失敗からの学びなどを行う。経験知・技術・ITをグループ内で横通し・連携することで、機会を確実に捕捉し、早期にリスク対処するという。

  • 「縦」と「横」の最適化で、収益力を強化する

領域拡大:新たな価値を創造し、桁違いのスケール化を実現

領域拡大に向けては、既存事業を異分野とかしこくつなぐことで、新たな価値創造を目指す。具体的には、コア技術のライセンス・パートナリング・IT化&デジタル化で、新しい顧客・地域へアプローチするという。

東南/南/中央アジア・中東・東欧・アフリカなど成長する市場のインフラ需要に対し、ライセンスビジネスを展開する。対象の製品としては、エネルギー事業はGTCC、交通事業はAGTやLRT、産業インフラは製鉄機械、環境設備、CCUS、冷却設備、物流ソリューションがある。

「60年代は欧米からの技術を導入しライセンシーとして開発してきたが、80年代90年代は自社で開発を行った。そのため、技術をたくさん有しているので、成長する市場のライセンスを通じて多くの地域や顧客の課題を解決していく」(伊藤氏)

伊藤氏は、既存事業と異分野をつないで新たな価値を創造した例として、全自動無人運転車両システムに電化技術をかけあわせた将来型の交通システムを紹介した。

  • 既存事業と異分野をかしこくつないで将来型交通システムを構築

2024年度の事業計画達成に向けた施策

2024年度の事業計画の達成に向けては、「伸長事業の着実な遂行」「成長領域の事業化推進」「事業競争力の強化」に取り組む。「伸長事業の着実な遂行」「成長領域の事業化推進」は重点領域に据えられており、リソースを集中的に投入しているという。

また引き続き、収益力強化とベストオーナーシップの観点で事業構成の最適化に取り組み、パートナリングやインオーガニック投資で成長機会を追求する。 伸長事業であるGTCC、原子力、防衛は事業遂行能力を上げ、製品・サービスを着実に顧客に届ける。あわせて、将来を見据えた研究開発などを積極的に行う。伊藤氏は、研究開発について、「従来の既成概念を外し、延長で考えるのではなく、どんな新しいことができるかを基準に行う」と説明した。

成長領域では、拡大するデータセンター市場に対し機電設備の供給事業を開始した。水素・アンモニア・CCUSは社会実装への課題解決に向けた開発を加速するという。

さらに、事業競争力の強化に向けてデジタル技術を活用し、プロセスの標準化とサービスの高度化を進めたほか、事業構成の最適化にも取り組んでいる。構造改革として海外も含む生産・販売拠点の統合・最適化を図っているほか、クロスボーダーでの統廃合・最適化(製鉄機械)に取り組んでいる。