三菱重工業は、環境に配慮した次世代新交通システムの新ブランド「Prismo」を開発し、市場投入すると5月19日に発表。新開発のエネルギーマネジメントシステムで省エネ運行を追求し、インフラ建設費も大幅に抑え、製造・建設時のCO2排出量も従来比で約4割以上削減できるとアピールしている。
Prismo(プリズモ)は、同社が2000年代から全世界へ納入してきた全自動無人運転車両システム(AGT:Automated Guideway Transit)「Crystal Moverファミリー」の新ブランド。新開発のエネルギーマネジメントシステムを初めて採用し、駅での急速充電と走行中の回生蓄電を融合させることで、エネルギー効率を高めた。これにより、駅間の架線をなくす架線レス化でシンプルなシステムを追求。「全自動無人運転の世界を次のステージへ導く」としている。
同システムには、武蔵エナジーソリューションズと三菱電機が共同開発している次世代蓄電モジュール「MHPB」(Mitsubishi High Power Battery)を、AGT用にカスタマイズし搭載。運行中の車両の減速時に発生する回生電力を車両に無駄なく蓄電・活用することで、従来のAGTシステムと比べて約10%の省エネ運行(※)と、約10%のCO2排出量削減を実現する。また、駅間の架線による給電が必要ないため、万一の停電時も次の駅まで支障なく乗客を送り届けられるとのこと。
Prismoでは、ガイドレールを車両の左右両側ではなく、車両の中央下部に配置する「センターガイド方式」を採用したことで、新設時はガイドレールそのものが半減し、軌道幅もスリムに設計可能。土木構造物を含めたインフラ建設費を大きく削減でき、景観向上にも寄与するほか、架線やガイドの削減によって電気・軌道設備を点検・交換する作業も大幅に減るため、保守コストを低減できるとしている。
車両製造については、広島・三原市の「カーボンニュートラルトランジションハブ三原」(三原製作所)が担当。必要な電力のすべてを、同社の和田沖太陽光発電所の電力でまかなうなどして、工場のCO2排出量を97.5%削減した点が特徴だという。このほかインフラの物量削減により、新交通システムの製造・建設時のCO2排出量も従来比で40%以上削減(※)。前述の製造・建設と省エネ運行、メンテナンス・廃棄まで含めたライフサイクル全体で排出するCO2は、従来製品と比較して約6,400tの削減(※)となる。
※いずれも納入済みの空港AGTシステムの規模想定で、同社の既存AGTシステムと比較した値。
AGTは電力駆動によって完全自動走行する新交通システムで、ゴムタイヤ方式のため走行時の振動と騒音を抑えられるのが特長。都市内交通や空港内・周辺の移動用として世界各地で採用されており、三菱重工は国内外で多数のAGT納入実績を有する。同社では、環境配慮と運行コストの低減・景観向上に寄与するPrismoにより、都市交通を通じたカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを進めていく。