
商用光学衛星で国内最多機数
宇宙を普通の場所に─。これが当社のビジョンです。宇宙は夢やロマンとして語られることが多く、まだまだ暮らしから遠い存在です。我々は事業を通して、そうした認識を変えたい。宇宙がもたらす新たな価値は、世界が直面する様々な社会課題の解決に寄与すると考えています。
私が大学院で手のひらサイズの超小型衛星「キューブサット」の開発に参画したことが起業のきっかけとなり、実用に適した小型衛星の機能や性能に磨きをかけてきました。現在も東京・日本橋で100キログラム級小型衛星の開発・製造を行っています。国内に宇宙ベンチャーは100社以上ありますが、その中でも2008年創業の当社はパイオニアのような存在です。これまで10機の衛星を手掛けました。
当社の事業の柱は2つ。1つ目は小型衛星の設計や製造、運用などをワンストップでお客様に提供する「アクセルライナー」です。お客様の専用衛星を提供する創業時の事業から発展させ、宇宙空間でお客様の製造品などを実証実験する「軌道上実証サービス」や、小型衛星を活用したビジネス設計から開発・運用までを請け負うサービスの構築に取り組んでいます。
2つ目は衛星が撮影した地表の画像などのデータを提供する「アクセルグローブ」です。商用光学衛星として国内最多機数の5機を連携・一体運用し、農作物の生育や森林伐採、水害による浸水範囲の把握など、お客様のニーズに合わせた情報を提供します。
アクセルグローブのお客様は政府だけではありません。売り上げの7割近くは民間企業です。今後増加するニーズに応えるため、26年に新たに7機を同時に打ち上げ、地球観測の体制を10機以上に増強します。
2026年に次世代地球観測衛星「GRUS-3(グルーススリー)」7機を打ち上げる。それに先駆けて今夏、GRUS-3に使用する汎用バスシステム(衛星の基盤となる構造や機能を標準化し、異なるミッションで共通して使用できるシステム)や望遠鏡の性能を検証するため、小型衛星「GRUS-3α(グルーススリーアルファ)」を打ち上げる。同衛星は東京・日本橋の本社で製造。「世界で最も都心に近い所で製造している」と中村さんは笑う
環境・不動産・金融への展開も
26年以降、当社の1日の撮影能力は日本の面積の約6倍で、同一時点をほぼ同時刻に毎日撮影できるようになります。水中にある藻場や沿岸地形などのモニタリングも可能になり、金融や環境、不動産といった分野への展開も考えています。
今後は機数の増加はもちろん、さらに多様な用途への対応や業界の垣根を超えた協業による新しいソリューションの提供に力を入れていきます。宇宙は遠い存在ではありません。宇宙を活用して何ができるか。宇宙の持つ価値を皆さんに提供していきたいと思っています。