サイボウズが提供するローコード/ノーコード開発プラットフォーム「kintone」は、顧客情報や受発注の管理、勤怠管理、交通費の精算など、定常的に行われる業務だけでなく、特定の時期にだけ発生する業務にも活用できる。

ちょうど今、企業では新入社員を迎える準備をしている。そこで今回は「新入社員の受け入れ」にkintoneを活用する方法を提案しよう。

kintoneで「新入社員の受け入れ準備」を効率よく管理

毎年、3~4月は「新入社員の受け入れ業務」に追われている人事部が多いのではないだろうか? 内定者に入社の意思を確認し、他の部署と連携しながら配属先を決定する。さらには、厚生年金や健康保険といった社会保険の手続き、転居・引越が必要な新入社員のサポート、パソコンなどの備品の準備といった具合に「新入社員の受け入れ」に関わる業務は多岐にわたっている。もちろん、それ以外の定常的な業務も同時進行していかなければならない。

これらの業務を効率よく進めていくには、情報の共有・可視化が欠かせないものとなる。そこで、「kintoneを上手に活用して、新入社員の受け入れ業務を改善していこう」というのが本稿の趣旨だ。

例えば、受け入れ業務に関連する情報を集約するアプリをkintoneで作成しておけば、部署をまたいで情報を共有しながら、データを登録・修正していくことが可能となる。以下は、新入社員ごとにレコードを作成して、配属先や転居・引越し、社会保険の手続き、といった情報を一元管理できるkintoneアプリを作成した例だ。

  • 「新入社員の受け入れ準備状況」を管理するアプリ(1)

転居・引越のように各個人で必要/不要が異なる項目は、「グループ」を使って配置することにより開閉式にし、なるべくコンパクトなフォーム画面になるように工夫してある。

  • 「新入社員の受け入れ準備状況」を管理するアプリ(2)

それでも必要な項目は膨大な数になるだろう。このような場合に備えて、表示内容をカスタマイズした「一覧」を作成しておくと、必要な情報だけをコンパクトに表示できるようになる。以下の図は、配属先の検討に関連する項目だけを一覧表示した例だ。もちろん、一覧表示した状態のまま、各データを修正していくことも可能である。

  • 配属先(候補)の一覧表示

同様に、転居・引越に関連する項目だけを表示する「一覧」なども作成できる。こちらは「転居」の項目が「必要」になっているレコードだけを表示するように、あらかじめ「絞り込み条件」を設定してある。

  • 転居・引越しに関するデータの一覧表示

こうした「一覧」を作成しておけば、各項目の見出しをクリックしてデータを並べ替えるだけでも、現在の進捗状況を即座に確認できるようになる。もちろん、人事部をはじめ、関連する部署とデータを共有しながら運用・管理していくことが可能だ。

  • データを並べ替えた様子

アプリを作ったら、ブラッシュアップしよう

kintoneに慣れているなら、もっと詳細にアプリを設定して「それぞれの業務をワークフロー化していく」といった使い方もできるだろう。このあたりは各自のスキルに応じてアプリを改善していけばよい。上図のように「一覧」の表示方法をカスタマイズするだけでも、十分に情報を整理できるツールになると思われる。

なお、ここで紹介したアプリは、極めて簡略化した例と言わざるを得ない。実際に受け入れ業務を進めていくと、「もっと項目を追加しないと……」となるケースが多々あるだろう。でも、それは重大な問題ではない。必要に応じて、そのつど入力項目を追加してあげれば済む話である。

kintoneの最大の魅力は、個人でも手軽に業務アプリを作成できること。システム開発業者に依頼しなくても、その場で、自力で、アプリを改善していくことが可能だ。専用ツールのように、カスタマイズできる範囲が制限されている訳でもない。

むしろ、とりあえずアプリを作成してみて、運用しながらブラッシュアップしてくのが「kintoneの正しい使い方」といえるかもしれない。「新入社員の受け入れ」に関わる業務は、会社ごとに進め方が異なるはず。会計業務や名刺管理のように普遍化されている業務ではないため、汎用アプリ(汎用システム)で対応していくのは難しいかもしれない。

一方、入力項目を自由に設定できるkintoneなら、自社のニーズに合わせたアプリを作成することが可能となる。別の言い方をすれば、汎用化しづらい分野ほど「kintoneが得意とする分野」とも考えられるだろう。

情報量が多すぎる場合は、作業内容に応じて複数のアプリに分割してもよい。新入社員の基本情報をまとめたアプリ(マスタ)を作成し、ルックアップ機能で必要な情報をピックアップしながら、それぞれの作業に特化したアプリを作成していく、といった使い方もある。具体的な運用方法は各社で自由に決められる。

もちろん、作成したアプリは「来年の新入社員の受け入れ準備」にもそのまま応用できる。その手順は、「ほかのアプリを再利用」により新しいアプリを作成するだけ。このとき、今年の受け入れ業務で苦労した部分を解消できるようにアプリを改善していけば、年を追うごとに使い勝手のよいアプリに仕上がっていくはずだ。その第一歩として、「まず始めてみること」が重要である。始めなければ、いつまで経っても業務が改善されることはない。