arcserve Japanは1月29日、米国本社CEO クリス・バベル氏による戦略説明会を開催した。昨年5月にCEOとして同社に入社したバベル氏は「世界各地で対話を重ねた中で2つのことがわかった」と述べ、企業において、ランサムウェアの脅威が加速し、AIを導入して差別化するための能力を発揮することが求められていると紹介した。

  • 米Arcserve CEO クリス・バベル氏

ランサムウェアの脅威はこれまで大企業が対象とされていたが、今やすべての企業が対象となっているという。その背景には、誰もがダークウェブにアクセスしてハッキングツールを入手し、ランサムウェア攻撃を実行可能になったことがある。

AIに関しては、その台頭に伴い変化が起きており、AIを組み込んだ形のビジネスへのシフトが進んでいると、バベル氏は指摘した。企業がAIを活用するようにハッカーもAIを活用しており、プルーフポイントの調査で、日本においてAIを悪用したビジネスメール詐欺攻撃が増加したことがわかっている。

こうした状況に対応するため、企業はサイバーレジリエンスの構築に取り組んでいるが、自社のみでの構築は難しく、外部のサポートは不可欠だという。そこで、同社としてあらゆるリスクや今日に対応することを目指している。

「われわれは重複排除によってコスト削減に努めており、顧客のニーズに対応した柔軟な形でバックアップやリカバリを提供している。コンプライアンスの管理にも対応してきた」(バベル氏)

2024年は安定の年:ポートフォリオを合理化

続いて、バベル氏は2024年・2026年の事業戦略について説明を行った。2024年は「安定の年」として、ポートフォリオの合理化とEOLに取り組んだ。

具体的には、昨年8月にイミュータブル ストレージ「Arcserve OneXafe 4500シリーズ」の販売終了を発表したことを指す。その理由は、同製品の主要なハードウェアコンポーネントを提供しているメーカーから製造中止が発表されたことにある。バベル氏は「痛みを伴いながらも販売終了を決断した」と語った。なお、新たな次期イミュータブル ソリューションの開発は進められている。

同社は、主力製品であるデータ保護プラットフォーム「Arcserve Unified Data Protection(UDP)」を中心に、企業のデータレジリエンスを実現するソリューションを提供している。昨年11月には、Arcserve UDPの最新版「Arcserve UDP 10」がリリースされた。同製品はサイバーレジリエンスを強化する機能やクラウド環境の保護を強化する機能が追加された。

  • Arcserveの製品ラインアップ

2025年は加速の年:AIを活用した機能をリリース

2025年は「加速の年」として、新製品の提供で成長を目指す。バベル氏は、「ランサムウェア」「クラウド」「マネジメント」を主要分野として注力すると述べた。

「ランサムウェアの保護に対するリクエストをたくさんもらっていた」(バベル氏)として、ランサムウェアの防御に関するソリューションの開発を進めているという。クラウドベースとアプライアンスの2つのソリューションのリリースが予定されているとのことだ。

クラウドについては「AIRギャップに取り組む」(バベル氏)として、これまでデータから切り離して行われてきたバックアップをクラウドでスピーディーに行えるようにする。「追加でコピーを持つことで、差別化を図る」と同氏は述べた。

マネジメントについては、オンプレミスとクラウドの運用を可能にするなど、弾力を持たせた運用を可能する。バベル氏は「われわれは顧客を中心に考えており、企業規模にかかわらず柔軟に使ってもらえるようにする」と語っていた。

AIは2つの分野で活用

バベル氏はAIを活用した機能開発についても触れた。現在、2つの分野においてAIを活用した機能が進められており、「Arcserve UDP」に搭載される予定だ。

1つは、バックアップデータに対し、AIでアノマリー検知を行うことで、不正なデータがリカバリされることを防ぐ。「バックアップを行っている最中にアンチウイルスを行っているソリューションもあるだろうが われわれはアノマリー検知によりさらにセキュリティをかける」とバベル氏。

もう1つは、AIによるワークフローの自動化の実現だ。AIによってバックアップ、リカバリのワークフローを自動化することで、ユーザーの手間を低減する。

バベル氏は「イノベーションと新しい機能を搭載した形で届けたいと考えている」と語っていた。

  • Arcserveの製品開発のロードマップ