生成AIの登場により各企業は、AIを活用した新たな事業戦略が求められており、そのAIを運用するのに必要不可欠な企業保有のデータ資産とその運用に注目が集まっている。米Denodo Technologies Inc.は、それらデータ資産を効果的に統合しアプリケーションとして活用可能とするデータ基盤の構築を行うソリューションを提供しているが、2018年に日本法人Denodo Technologies(以下略、Denodo)を設立し国内でサービスを展開、2024年11月には「Denodo Platform 9.1」を発表するなどAIサービスに力を入れている。同社は本年1月22日、記者説明会を開催し2025年の国内事業戦略の発表を行った。どのような内容かレポートする。
データ仮想化ソリューション「Denodo Platform」とは
Denodoは、1999年スペインでの創業より一貫してデータ関連プラットフォームサービスを提供しており、2006年に米国シリコンバレーへ移転してからはデータサービス企業として世界23カ国に30のオフィス、1200に及ぶ顧客と300のパートナー企業を持つ世界的な企業へと成長している。その主力製品がデータ仮想化ソリューション「Denodo Platform」だ。
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Denodo Platform(公式Webサイトより)
同ソリューションはオンプレミスやクラウド環境他、企業が活用するアプリケーションやサービスにより分散したデータを物理的なリポジトリにデータのコピーを行わず、データ仮想化によりソースシステムから切り離して抽象化することでアクセスと管理、配信を容易化。BIツール、データサイエンスツール、生成AIでの運用に最適な環境を提供する。昨年11月には、新しいAI搭載アシスタント、AIアプリケーション開発をサポートする「Denodo AI SDK」などの機能を実装した最新版の「Denodo Platform 9.1」をリリースしている。
Denodo AI SDK(公式Webサイト)
中でも「Denodo AI SDK」は、生成AIの精度を高めるRAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)の開発を支援するSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)で、構築済みのAPIと再利用可能なコンポーネントがパッケージされており、RAGベースのAIエージェント開発専用に設計されたAPI「RESTful データAPI」やサンプルのRAGアプリケーション、クイックスタートチュートリアルなどが一式で同梱される。データセキュリティについてもセッションレベルで対応し、プライバシーとセキュリティ要件に準拠したアプリケーションを開発可能だ。「Denodo AI SDK」は、オープンソースとしても提供されている。
Denodo Technologiesの日本国内での2025年事業戦略
Denodoの2025年国内事業戦略についてリージョナル·バイスプレジデント&ジャパン·ゼネラルマネージャーの中山 尚美氏が説明を行った。同社のサービスは、国内においても製造、通信、半導体から金融まで大手企業55社で既に採用されており、中でも建設業界のトップ企業である鹿島建設、大成建設、大林組で導入されるなど大手企業を中心に順調に実績を積み上げている。同氏は2025年の事業戦略について、主に顧客企業に対する重要施策への対応強化、既存顧客サポートの強化、パートナー企業との連携強化の3点を強調した。
重要施策への対応については、同社の顧客の要望であるCIO(Chief Information Officer)領域におけるITインフラのモダナイゼーション、CDO(Chief Data Officer)領域におけるデータ民主化やセルフサービス。CMO(Chief Marketing Officer)領域においては、カスタマーエクスペリエンス向上のためのデータ基盤構築。COO(Chief Operating Officer)においては、運用の効率化、迅速性、継続性の向上などを図るサービスの充実ほか、ガバナンス、リスク、コンプライアンスの一元化など企業経営全般におけるデータサービスの提供に力を入れる。
顧客企業へのサポートの強化も従来サービスの同一線上にあり継続して行われる施策だが、中でも同社が強調するのが、パートナー企業との連携強化と生成AI関連サービスだ。
同社バートナービジネス戦略部長 赤羽 善浩氏は海外に比べて日本国内ではITベンダーへの技術依存度が高いため伴走型、顧客提案型サービスが求められていること、加えて企業における生成AI利用率の低さからAI関連サービスの今後の需要増加が期待できることを述べる。これら状況を踏まえた上で効率的なエコシステムとして、パートナー企業の顧客満足度向上がそのまま同社の利益となることを説明し、パートナー企業との連携の重要性を強調する。
SIer、コンサル系及び販売パートナー企業向けへの具体的な戦略として、サービスの認知度アップや営業での連携、同一マーケティングの推進、カスタマーサクセスの協業強化などを行う他、AIでのSIビジネス連携などに力を入れる。テクノロジーパートナーについては、共同での販促やセミナーの開催、営業での連携などを行い、クラウドベンダーとはプライベートオファーによる販路の拡大や顧客への提案、「Amazon Bedrock」や「Azure OpenAI」等のAIサービス有効活用の提案などを行うことで連携をより強化していく考えだ。同氏はモデルケースとして、テクノロジーパートナー企業であるSnowflakeと共同でホワイトペーパーを作成した事例も紹介した。
RAGを活用したAIへの取り組みを加速する「Denodo AI SDK」
次いで、特に注目度が高いAI関連サービスとして同社の「Denodo AI SDK」の説明が行われた。同社の「Denodo AI SDK」とはどのようなものか、テクニカルセールスディレクター 三浦 大洋氏より説明と実際に同社のWebサイトを活用したデモを行った。
同社では、「Denodo Platform」でデータの仮想的統合による効率的なデータ管理を実現しRAGを運用する環境を提供する一方で、その環境に最適化された生成AIアプリの開発を支援する「Denodo AI SDK」を提供する。デモでは、同社のWebサイトでのSDKに同梱されているサンプルチャットボットのデモが行われた。チャットボットに「顧客の総数は?」と入力すると、構築されたデータ基盤より検索しAIが「データベースに80人の顧客が登録されています」と回答。同時に回答に対応した新しい質問を3つ新規に提案し表示する。加えて利用したデータセットも表示される。