DNPは8月28日、個人のアイデンティティ(ID)に関する情報を管理する「分散型ID」に基づくデジタル証明書を発行・検証する「DNP分散型ID管理プラットフォーム」の提供を同日から開始したことを発表した。

生活者は、同プラットフォームを通じて自身のアイデンティティ情報を主体的に管理し、プライバシーを保護しながら企業・団体などに自身の本人情報を開示できる。企業・団体なども偽造情報による被害の防止や提示された情報の検証負荷の低減など、安全・安心なデータ流通が可能になるという。

DNPは同プラットフォームで、デジタル証明書に関わる事業を推進する企業・団体などに、デジタル証明書の発行・検証システムや、生活者がデジタル証明書を利用・管理するデジタルアイデンティティウォレット(スマートフォンなどで自分の身元を示す仕組み)など、用途や構築する環境に応じて必要な機能を提供する構え。

  • DNPが考えるデジタル証明書(VC)の活用イメージ

    DNPが考えるデジタル証明書(VC)の活用イメージ

開発の背景

近年、生成AIなどの技術の急激な進展や国際交流の活性化をきっかけの1つとして、データの改ざんや漏洩、なりすましなどのプライバシーリスクが社会的な課題となる中、より安全・安心なデータ流通が求められている。

そのため世界各国でデジタル証明書を活用した実証実験が行われており、日本政府もインターネット上の新たな信頼の枠組みとして、内閣官房(デジタル市場競争本部)の「Trusted Web推進協議会」で提唱された「特定のプラットフォームやサービスに依存せずに、Verifiableなデータを通じてWebで流通するデータの信頼性を保証する仕組み」に関する概念である「Trusted Web」に取り組んでいる。

こうした動きに対してDNPは今回、より安全・安心なデータ流通の構築支援に向けて、DNP分散型ID管理プラットフォームを開発し、サービスの提供を開始する。

「DNP分散型ID管理プラットフォーム」の特徴

同プラットフォームは、より信頼性の高いグローバルなデータ流通の実現に向けて、世界的に検討されている技術仕様に準拠しているため、国内外でデジタル証明書を利用できる。

DNPは、同プラットフォームの開発にあたり、デジタルアイデンティティウォレットやデジタル証明書の発行・検証システムの開発実績・知見・ネットワークを持つオーストラリアのMeecoとの提携により技術提供を受けている。オーストラリアを始めとした国際間の実証実験やネットワーク構築にもMeecoと取り組んでいるという。

またDNPは、デジタル庁の「Trusted Webの実現に向けたユースケース実証事業」に2022年から2年連続で採択されたほか、国内企業とデジタル証明書関連の用途開発などの実証実験に取り組んでおり、これらの取り組みでは、デジタル証明書の発行・検証の要件定義や組織運用体制などのルール策定をサポートしており、分散型IDの社会実装に向けて技術・ノウハウを蓄積しているという特徴も兼ね備えている。

加えて、DNPは同プラットフォームを利用する企業・団体等に、分散型IDに関する教育プログラムも提供する。分散型IDの知見を有するアメリカのIndicioと協業し、分散型IDに関する基礎知識の提供や、経営者層・新規事業開発担当者・システム開発者向けの教育プログラム「Indicioアカデミー」を提供していくという。

今後DNPは、分散型IDの活用を見込む金融・通信・旅行・自動車・教育などの業界を中心に、DNP分散型ID管理プラットフォームを提供し、関連する製品・サービスを含めて2029年度までに累計35億円の売上を目指す構え。