日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は3月15日、東京にて「パワー サプライ デザイン セミナー(PSDS)2024」を開催。併せて、メディアブリーフィングにて顧客の電源設計の支援に向けた取り組みについての説明を行った。
Texas Instruments(TI)は現在、電力供給を取り巻く「低EMI」「電力密度」「低IQ」「低ノイズと高精度」「絶縁」という5つの領域で強みを発揮するべく、製品開発を推進してきており、そうしたさまざまな電力供給に関連する製品を通じて、顧客の電源設計の支援も行ってきた。同セミナーもそうした取り組みの一環で、1977年に開始して以降、先進的な電源のコンセプト、基本的な設計原理、そしてリアルなアプリケーション例を組み合わせた、技術的かつ実用的なトレーニングを提供する形で、累計で5万人以上のユーザーに対し、100を超える技術的トピックを提供してきたという。
顧客の電源設計を支援する3つのアプローチ
TIの顧客の電源設計支援は主に3つの手段でアプローチする方向性にあるという。1つ目は「プロダクトライン」で、革新的な製品そのものを開発することで、顧客の要求する電源性能の実現を目指すというもの。2つ目は「セールス」で、顧客ニーズを把握し、最新ソリューションの提供を目指すというもの。そして3つ目が同セミナーのメインでもある「システムエンジニアリング」で、システムレベルでどういった設計の課題があるのかを理解して、その課題に対応できるソリューションを提供するものとなる。
そのシステムエンジニアリングの枠内において、「パワーデザインサービスチーム」が何をしているのかというと、自動車や産業機器分野の顧客の電源に関する設計課題の解決に向けた支援を進めており、それは決して、同社が売りたい製品を押し付けるのではなく、同社の製品全体の理解を通して、最適な解を導くための取り組みだという。
その最たる例がリファレンスデザインの提供となる。同社のパワーデザインサービス産業機器担当ゼネラルマネージャのRobert Taylor氏は「リファレンスデザインは不特定多数の顧客に向けたものだが、特定の顧客との間では、システムの電力ソリューションを構築する際の最適な部品の推奨や、元々の設計を踏まえた形での課題解決に向けたアドバイスなども行っている。その際、求められるシステム構成に似た既存のリファレンスデザインなどを再構成することで、実現の速度を早めたり、場合によってはプロトタイプの製作支援や高度なEMI試験に対するサポートなども行っている」と、その取り組みの姿勢を説明する。
同社がこうした取り組みを強化する背景には、自動車や産業機器で利用する電力が増加する一方、電源スペースは限界があり、基板面積の小型化や熱特性の改善、電源効率のさらなる向上といったニーズが高まりを見せているためである。例えば「ローエンド/ミッドエンドADAS ECUの開発支援をはじめとする自動車業界で問題となるのが、その設計でEMIの要件を満たせるのかどうかという点。TIが自社のパワーソリューションを活用する形でハードウェアのプロトタイプ作製を支援することで、IECが策定した自動車向けのEMC規格であるCISPR25 Class5要求を満たすことに成功。この取り組みを通じて、TIのパワーソリューションを顧客が簡単に使えるということを実感してもらい、最終的に開発リスクの低減と開発速度の向上を実現した」と、同社のパワーデザインサービス車載担当ゼネラルマネージャのPradeep Shenoy氏は、取り組みの一例を説明する。
各地の顧客を各地のサポートチームが支援
同社が顧客の開発サポートを行う基本的な流れとしては、各国・地域の現地法人のシステムエンジニアたちがまずは対応を図ることとなる。その場合、同時に現地法人のFAE(フィールド・アプリケーション・エンジニア)とも連携して課題解決に挑むほか、同時にグローバルのシステムエンジニアリングチームとしても情報共有を図ることで、速やかな課題解決を目指しているとする。「多くの製品に対してTI.comに用意したツールで、最適な製品を探索するといったこともあるが、TIのシステムエンジニアたちに伝えていることは、誰がその分野の専門家であるのかを把握しておくことの必要性。これを踏まえることで、課題の解決にグッと近づく可能性が高まる」(Taylor氏)という。
また、近年は顧客の中には、世界中にデザインセンターを構えている場合などもあり、「地域的な取り組みもあるが、こうしたグローバルでの開発の場合、TIとしてもさまざまな国・地域のシステムエンジニアリングチームと連携して課題の解決を図っている」(Shenoy氏)とのことで、顧客のスケールや所在地などにこだわらず、目の前の課題の解決に向けた支援ができる体制が整っていることを強調。今後も高まるであろう電力密度の向上要求を中心に、その要求に応えられるソリューションの構築を着実に進めて提供できるようにしていくことで、さらなる電源に対する顧客からの要求にも応えていけるようになっていきたいとしていた。